箱入り娘の家出-2-
【男と姪っ子は食事を終え、ソファーに座っていた】
男「はい、腕を出して」
姪っ子「やだ、死んでもやだ」
男「はいはい、いいから出して」
姪っ子「……何もしないって言ったのに……」
男「大人は偶に嘘を吐きます」
【男は救急箱から湿布を取り出すと、姪っ子の腕に張り付けた】
男「えいっ」
姪っ子「きゃ、いた……つめたい!」
男「我慢してね……すぐ終わるから、さ」
姪っ子「もう、嫌い。貴方のことなんか顔も見たくない」
【姪っ子は目に涙を浮かべている】
男「はい、これでお終い。終わったよ。大した事なかったでしょ?」
姪っ子「……」
男「……テレビでも付けようか?」
姪っ子「……」
男「寒くない?エアコンの温度上げようか?」
【姪っ子は黙り込んでいる】
【そして、また段ボールの中に隠れてしまった】
男「あちゃー、機嫌を損ねちゃったか……さてさて、洗い物でもしようかな」
姪っ子「……」
【男は洗い物を始める。姪っ子は段ボールの取っ手に空いた穴からテレビを見ていた】
男「♪♪♪(←最近好きになったCMソング)」
姪っ子「うるさい」
男「ごめん」
【男は洗い物を終える】
男「お風呂沸かすけど、入るよね?」
姪っ子「うん」
男「一緒に入るかい?」
姪っ子「絶対に嫌」
男「それは、残念」
【男は風呂場に向かった】
男「さて、掃除するか」
ズルズル……ズルズル……←何かを引きずってる音
ゴシゴシ……ゴシゴシ……←お風呂を掃除する音
姪っ子「……」
男「わ、びっくりした。どうしたの?」
姪っ子「別に……」
男「そっか……一緒に掃除する?」
姪っ子「うん」
男「じゃあ、床の掃除をお願いしようかな。このブラシ使って」
姪っ子「わかったわ」
【姪っ子は段ボールに入ったまま、器用にジャンプして風呂場に入ってきた】
男「いやいやいや!段ボールは脱ごうよ」
姪っ子「大丈夫。この子がやられても、替わりはいるから」
男「そういうことを言ってるわけじゃないんだけど……」
【姪っ子の表情は変わらないが、幾らか、先より雰囲気が柔らかくなったようだ】
箱入り娘の家出-2- -終-