チュートリアル
「弾幕とは」
魔理沙さんが話し出す。
「自身の精神状態や思考が強く反映されるものだ。だから、相手の弾幕から様々な情報を引き出すこともできる。そして、この内最も大切なのが"精神"だ。弾幕は集中しないと撃てない。逆に言えば、集中力が高ければ、いくらでも弾が撃てるということだ。」
僕は魔理沙さんのレクチャーを聞き、そして心の片隅に「精神が弾幕を作る」とメモしておいたが、唐突に別の言葉が浮かんできた。僕はそれを口に出した。
「つまり、『弾幕は精神で撃つ』ということですね。」
「その通りだ。上手いこと言うな。」
魔理沙さんが感心したような声を出した。
まぁ、某アニメのセリフをそのまま使っただけなのだが……。
その辺りは説明すると面倒くさいことになるだろうし、今はやめておこう。
「じゃあ、取り敢えず的を出すから、それを撃ってみてくれ。」
魔理沙さんは腕を少し上げ、手を軽く回すと、"的"を出した。
見た目はぼんやりしており、恐らく成分的には弾幕と同じ物なのだろうと思われた。
兎も角、僕は腕を真っすぐ前に伸ばし、手の平を的に向けた。
「弾幕は精神で撃つ」のだから、心の中で幾らかの弾が飛んでいく様を思い浮かべ、手に少しだけ力を込めた。
と、手の平のすぐ前にぼんやりした弾幕(直径三センチほどのもの)が数発発生し、真っすぐ飛んで行った。
そして、そのうち二発が的に命中した。
「おお、初めてにしては上出来だな。」
「そうなんですか。」
「ああ。常人なら一発でも弾が出れば上等、例え複数出てもそれぞれが明後日の方向に飛んでいくだけだ。センスあるぜ、重信。」
「有難うございます!」
僕は素直に礼を言った。
褒めてもらったこともその理由の大きな原因の一つだが、何よりちゃんと名前で呼んでもらえたことが嬉しかったのだ。
人によっては些細なことだと思うかもしれないが、僕はその言葉を聞き、魔理沙さんに一人の人間として正式に認められた様な気がしたのだ。
それがとても嬉しかった。
とは言ってもこのような気恥ずかしいことなど言えるはずもないので、直ぐに練習を再開することにした。
数十分ほど練習していると幾分か慣れてきて、連射もきくようになった。
そして、さらに練習しているうちに、弾の速さや連射速度も上がった(3発/sから8発/sくらいまで)。
「よし、もう十分だろう。」
「本当ですか?」
「多分これでそこらの妖怪に襲われても切り抜けることはできるだろう。お疲れさん。」
終わったとき、僕はある種の達成感を感じていた。
僕は弾幕―それもただの通常弾―を撃てる様になっただけである。
しかし、その小さな一歩こそがとても重要なものなのではと思えてならなかった。
まあ、ここには戦うことを目的に来たわけでもないし、これからそうなることも無いだろう。
これで僕はある種の"力"を手に入れたことになるが、この類のものを持つにはそれなりの責任が伴うものだ。
この"力"はあくまで護身用であり、決して他人を傷つけることを目的として使ってはいけないのだということを、しっかり胸に刻んでおかなければならないだろう。
普通に暮らしていればそのようになることは無いと思うが……。
「じゃあ、今日はもう帰るか。家まで送ってってやるよ。」
「良いんですか?」
「勿論だ。それに、食料も運ばないといけないしな。でないと、重信は餓死してしまうだろ?」
「ああ、確かにそうですね。お気遣い有難うございます、魔理沙さん。」
「当たり前のことさ。それとだな。」
「はい。」
返事をした後、少し間が開いた。
どうしたものかと思っていると、ようやく口を開いた。
「あー、その、もう完全に知り合いなんだから、「魔理沙」と呼んでくれないか?こう、なんていうか、妙に歯がゆいんだ。そういう風に呼ばれたことはないもんでな。あと、同じ理由で、溜口を使ってくれないか?」
「ああ、そういうことだったら。」
そこで僕は軽く咳払いし、話した。
「じゃあ、改めてこれからよろしく、魔理沙。」
少し違和感を感じたが、これで良いのだろう。
「こっちもよろしくな、重信。」
魔理沙は微笑んで言葉を返した。
最近やけに暑くなってきたように感じます。
もう夏は始まっているのでしょうか。
いずれにしろ、暑いのは嫌いなので、出来るだけ部屋に籠っているようにしようかな。
皆さんも体調には気を付けてください。