建築魔法は便利だな
魔理沙さんの家を出た後、僕たちは家を建てるのにちょうど良い場所を探した。
どうやら魔理沙さんは最初から当てがあったらしく、家を出てから真っ直ぐにそこへ向かった。
「よし、着いたぞ。」
そこは、普通の家一つが丁度入るくらいの大きさの空き地だった。
日当たりもとてもよく、家を建てるにはちょうどいい立地だった。
あらかじめ僕が来ることが分かっていて、そのために用意されたような場所だ。
「ここで良いな?」
「はい。というか、これ以上は望めないってくらいです。」
「そうか。そりゃ良かったぜ。それじゃあ、ここに家を建てるか。少し手伝ってもらうぜ。」
「はい。」
魔理沙さんは持っていたナップサックから大きな木材を幾つも取り出した。
どう考えてもそのナップサックには入らない大きさだったが、多分ナップサックの中は四次元ポケットみたいになっているのだろう。
そして、それらを僕は魔理沙さんの指示に従って並べた。
並べ終わると、家の間取図の線をそのまま立体化したようなものが出来上がった。
ここからどうやって建てるのかと考えていると、魔理沙さんが口を開いた。
「よし、これで準備は完了だ。もう休んでもいいぞ。と言ってもあと数分くらいでできるけどな。」
「こっれで終わりなんですか?」
「ああ。」
その言葉を聞いた瞬間、僕の目は文字通り丸くなってしまった。
まだ資材を置いただけでまだまだ完成には程遠いというのにもうすぐ完成というのだから、驚くのは当たり前であろう。
ここからいったいどうすれば数分で家ができるというのだろうか。
そんな僕のことは気にも留めず、魔理沙さんは置いた木材の方に向き直り、手をかざした。
と、その手が光始め、同時に木材の方も輝きだした。
あまりにもそれが眩しかったので、僕はしばらく目を瞑っていてしまった。
そして次に目を開けた時には、一軒の小さな家(というより少し大きめの小屋)が建っていた。
「これで完成だな。」
「いったいどうやって建てたんですか?」
「私は魔法使いだからな。さっき言ったろ?」
「でも、詠唱をしてませんでしたよね。」
「あぁ、実は私位になると簡単な魔法なら無言詠唱が出来るんだ。」
「成る程。それは凄いですね。」
詠唱がいらないとは驚きである。
昔から僕の中では"魔法=詠唱が必要"というイメージだったので、即ち僕の中の常識が一つ覆されたことになる。
これならばたとえ口を封じられていたりサイレスをかけられていたとしても大丈夫だ。
便利。
魔理沙さんが再び話し出した。
「家具もちゃんと用意してあるから、これを置けば全部終わ…あれ、待てよ。何か忘れているような…。」
その言葉で僕は首をかしげた。
引っ越しに必要なことは全て終了したのではないかと思っていた。
「あ、そうだ、あれを忘れてた!」
突然魔理沙さんが大きな声を出したので、思わず飛び上がってしまう。
「何ですか?」
「弾幕のことさ。」
昨日、保育園児の列に乗用車が突っ込み、二人が死亡するという痛ましい事故が起こりましたが、最近そう言った事故をよく聞くような気がします。
令和の時代が事故で溢れなければ良いのですが。