二十八日後、雑談
正月休みと作者自身の怠慢のため、二週間遅れてしまいました。すみません。
次回からは一週間後になるはずです。
さて、気が付けばここ命蓮寺に来てから幾週間か過ぎていたのだが、未だにまともな「修行」をしていないことに、今日の朝気づいた。
いや、全くしていないというわけではないのだが、例えるならゲームで第一ステージのチュートリアルゾーンしかプレイしていないような状況なのだ。
というのも、僕が命蓮寺で修行することが決定した直後にクリスマス、年越しとビッグイベントが連なってやってきたからである。
クリスマス、というのは確かキリスト教のお祭りだった気がするのだが、どういうわけか命蓮寺の住人たちも赤飯で祝い、一日中休暇となった。
住人たちはそれぞれの目的に応じて行動したが、こちらはこれといって予定が無かったので、人里を適当にまわった後は、寺で昼寝していた。
その後は年末行事に向けての準備で忙しくなり、新入りの僕は力仕事などの雑用を任された。
正月は命蓮寺が大勢の人でにぎわい、イベントは大成功と言った感じだった。
また、今年はネズミ年なので、ネズミの妖怪であるナズーリンが大勢の前でちょっとしたスピーチをしていたのだが、こういうことに離れていないのかスピーチを始めるまでは始終震えていた。
それでもスピーチを始めたら落ち着きを取り戻し、丁寧に話せていたのには感心した。
そしてその翌日の片づけを終えて、今日があるわけである。
で、この落差にちょっとばかり面食らっている。
昨日までは比較的のほほんとした様子で生活していたはずなのだが、今日の朝起こされると、若干空気がパリッとしているのである。
ナズーリン達も疲れてはいるのだがそれを必死に封じ込めて無理やり動いている、と言った様子なのだ。
「さぁさぁ、もうお正月は終わったんですから、皆さんしゃきっとしてくださいよ。」
そう起こしに来た聖が言うと、部屋にいた全員がはぁいという返事をし、真面目そうな仮面の下に隠れた気の抜けた本当の自分をちらつかせていた。
それからキビキビ、のそのそと身支度をし、朝食を食べた。
「そういや、藤乃はもうここでの生活に慣れたのか?」
朝食の席で住人たちが軽い雑談をしていると、急に話題がこちらに振られた。
言葉の主は一輪だった。
「まぁ、幾らかは。年越しの催しものだとかもありましたから、その間に皆さんのことも分かってきました。」
「それは良かったね。」
とナズーリン。
と、これに賛同して聖さんも
「えぇ、人との親睦を深めるのは良いことです。」
「ま、その代わり修行の方は全くだったがな。」
「あら、そうとも限りませんよ、ぬえ。人々のために何かをすると言うのも立派な修行です。」
へぇ、と聖さんの言葉を頭の片隅にメモしながら味噌汁をすすった。
それにしても本当に美味い味噌汁である。
初めてこれを口にした時の感動はさるものだった。
いったいどうすればこの様な美味い味噌汁が作れるのだろうか。
そう思い、僕は箸を持ったままその揺れる茶色い水面を見つめた。
「お味噌汁に何か入っていましたか?」
聖さんの声で我に返る。
「あ、いえ。ただ、味噌汁があまりにも美味しかったものですから。」
「あぁ、成る程。良かったですね、響子。」
そう言われるとピクリと肩を動かしてから照れくさそうに笑い、はいとだけ答えていた。
「響子さんが作ったんですか?」
僕は先ほどからの流れで最早義務と化していた言葉を発した。
「えぇ。ここのごはんはみんな響子が作っています。」
「そうなんですか。それにしても、こんなに美味しい味噌汁を作れるなんて、羨ましいですね。」
「そうですか?」
ここでようやく響子がまともに口を開いた。
「はい。ここ数年ずっと一人暮らしだったのでご飯は基本的に自炊だったんですが、何しろ料理が下手なもので……。よく朝食に味噌汁を作ったりするんですが、いつも水っぽくなったりしょっぱくなったりしてしまって。」
自嘲的に苦笑いしながら話した。
と、響子が親切にも素晴らしい提案をしてくれた。
「それならまた今度作り方を教えてあげましょうか?」
「本当ですか?なら、是非ともお願いします。いい加減料理の一つや二つはまともに作れるようになりたいですし。」
「でも、教えるのはちゃんと休みの日にしてくださいよ。」
と聖さん。
「修行の方に支障をきたしてはいけませんからね。」
「はぁい。」
「分かりました。」
そうやって話しているうちに、お椀の中のご飯はどんどん減っていき、そして空っぽになった。
「皆さん食べ終わりましたね。それじゃあ、手を合わしてください。」
そこにいた全員が一斉に手を合わせ、それを確認すると、聖さんが
「ご馳走様でした。」
続いて他の人も
「「ご馳走様でした。」」
「さ、今日も一日頑張りますよ!」
三週間ぶりに投稿したやつがこのクオリティだよ。
ひどい、ひどくない?




