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もう一度

魔理沙が出ていったあと、僕はそのままソファーに転がった。

手を頭の後ろでくみ、考える。

魔理沙は強くなれば良いだとか言っていたがそんなに簡単なことではない。

確かに紅魔館での特訓では目覚ましい成長は見せた。

しかしだ。

それもその時の僕があまりにも弱かったから基礎を押さえただけで成長したように見えたのであって、RPGで序盤のレベル上げが簡単なのと同じである。

結局、今は取り敢えず毎日トレーニングする事くらいしかできないという結論に至り、グダグダと腕立てを始めた。


気がつけば二週間が過ぎていた。

あまりにも慢性的に過ごしていたせいか、一週間前のことが昨日のようにも思えた。

トレーニングは一週間弱でやめてしまった。

最初のうちはきっといつかはという希望だけでやっていたのだが、しばらくしてこのトレーニングが非常に無意味なものに思えてきた。

僕は今弾幕ごっこで強くなるためにトレーニングをしている。

しかし、森の中を走り回っても空回りしているような気しかしないし、筋トレに至ってはその必要性すらも疑わしくなってきた。

そもそも一人でトレーニングしようというのが間違いだったのではないだろうか。

僕はまだ弾幕の事をあまり知らないし、どう鍛えれば良いのかも分からない。

もしかしたら、今の僕は頭がよくなりたいと考えて暗記ばかりしているような状態なのかもしれない。

先達が必要だということだ。

だから、僕はどこかでまた修業できないかと考えるという口実のもとに、一日中家のなかで怠惰な生活を送っていた。

そして今日、流石にこのまま何もせずにいるのでは不味いと思い、ようやく真面目に考え始めた。


先ず僕は身近なところから考え始めた。

すでに僕と交遊関係(?)を結んでいる人たちである。

真っ先に魔理沙の名前が飛び出してきたが、すぐに却下された。

この前のことがあってからでは気まずいし、二度も同じことで世話になるのは気が引ける。

次に霊夢。

彼女なら大丈夫だろうと思ったが、よくよく考えれば彼女は今来るべき異変に備えて何らかの準備や対策を施している真っ最中であろうから、これも無しだろう。

早苗ら守矢の人たちも同様にしてバツ。

今度は僕と少しでも面識のある人にまで範囲を広げてみた。

紅魔館は論外として考えていると、いろいろと候補が出てきた。

永遠亭、地霊殿、白玉楼など。

しかし、どれも様々な理由――道が分からなかったり所在地がおっかなかったり――のためにことごとく切り捨てられていった。

そして、あとには命蓮寺だけが残った。

恐らくここが一番だと思われる。

住職の聖さんは優しそうな人だったし、特訓の申し出も快く引き受けてくれそうだ。

なので、僕はそこに行くことにした。

というより、もうそこくらいしか行けそうな所がないから。


善は急げということで今すぐにも出掛けたいところなのだが、今回は自分で準備をしなければならない。

先ず着替え。

これがないと修業の間に薄汚い青年に成り果ててしまう。

そして仕事用の原稿用紙と万年筆――と思ったが直ぐにやめることにした。

向こうは寺なのだから、場合によってはそっちの修行もする事になるかもしれない。

そしたら、自由時間はほとんど無くなるだろう。

つまり、向こう数ヵ月は仕事が全くできないことになる。

小鈴には断りを入れなければならない。

それから、土産物も少しは持っていった方が良いかもしれない。

僕は貯蔵庫をひっくり返してたくあん等の漬け物を陶器に入れた。

そして準備を始めてから一時間ほどして準備は完了した。

僕は大量の漬け物と衣類の入った麻の袋を肩にかけると、出発した。

人里までそう時間はかからなかった。

門の近くまで来たところで地上に降り、歩いた。

昼が近づいているためか人里にはまぁまぁの人混みができていた。

それを上手く掻い潜りながら僕は鈴奈庵を目指した。

暖簾をくぐると、小鈴はカウンターで眼鏡をかけて本を読んでいた。

僕が近づくと足音に反応し、顔をあげた。


「いらっしゃ――あぁ、重信さんですか。」


僕は軽く会釈してから


「今日はちょっと話があってですね。」


「どうしましたか?」


「予定が入ってしまいまして、しばらく仕事が出来ないんです。」


「へえ、どんなですか?」


「まぁそこはプラ……個人の領域ということで。」


「分かりました。ちなみに、どれくらいの間出来ないんですか?」


「だいたい二ヶ月、三ヶ月位でしょうか。」


ものすごく適当に答えてしまった。


「了解しました。あ、今頼んでいる原稿はどんな感じです。」


「あぁ、それならここに。」


そう言って僕は袋をあさり、原稿用紙を一束取り出した。


「どうぞ。」


「ありがとうございます。では、もう大丈夫ですので、用事、頑張ってくださいね。」


「はい、有り難うございます。」


僕は別れの挨拶を言うともと来た道を引き返し、命蓮寺に向かった。

キューブリックは良いぞ、ジョージィ。

構図や色の使い方が素晴らしいし、なんと言っても音楽の使い方がとても上手い。

どうだ、博士の異常な愛情辺り見てみないか?


P.S. 小説の書き方とかで駄目なところとか改善の余地があるところとかあったら教えてくれよ、ジョージィ。待ってるぜ。

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