会話
パチュリーに治療されたあと、僕は魔理沙によって家まで引きずられていった。
勿論何度も抵抗を試みてはみたが、どうやらパチュリーの魔法はかなり長い時間効力を発揮するようで、家についても指一本動かせなかった。
ただ、目と、口と、心臓、それから肺が動いているだけである。
だから僕は一通り呪いの言葉を吐いた後、黙って考えることしかできなかった。
僕は今までのことを考えてみた。
フランと出会い、遊び、殺されそうになり、そして連れていかれるまで。
そう考えていた時ちょっとした違和感を覚えた。
が、すぐに忘れてしまった。
そろそろ身体のあちらこちらが痛くなってきた。
「そのうち魔法の効果も切れる。それまでは辛抱してろ。」
僕をソファにおろしながら魔理沙が話す。
「それじゃあ私は帰るよ。」
「待ってくれ。」
ドアに向かいかけた魔理沙を制止した。
「聞きたいことがある。」
「なんだ?」
「レミリアのことだ。」
そう言った途端、魔理沙の動きにぎこちなさが現れた。
「あのときのレミリアは動揺を通り越して錯乱していた。少なくともまともじゃなかった。何か知らないか?」
「妹が人を殺しかけたんだ。誰だってそうなるだろう。」
「だがレミリアは怯えていたぞ。一体何に怯えるんだ。」
「さぁ。単に自分の妹が人殺しになるのが嫌なんじゃないか?」
沈黙。
「レミリアは、フランに何時もあんなことをしているのか?」
「昔はしていたそうだが、最近はどうだか。」
そこで突然身体がガクンと揺れた。
魔法の効果が切れたらしい。
「ようやく切れたのか。」
「そうみたいだな。」
少し間をおいて、
「続けよう。レミリアは、フランのことが嫌いなのか?」
「いや、当人は大好きだって言ってたぜ。」
「なら何故あんなにもいたぶるんだ。」
「いたぶってるわけじゃないだろう。愛のムチ、ってやつなんじゃないか?」
「そうか。」
僕は黙って立ち上がった。
「どうした。」
「もう一度紅魔館へ行く。」
「やめとけよ。門前払い食らうだけだぜ。」
「でも!」
耐えきれず大声を出してしまう。
「いくら何でも酷すぎるだろう!」
「落ち着け。そもそもお前はフランに殺されかけたんだろう。フランは手加減を知らないんだ。」
諭すように魔理沙が応じる。
「そうだが……。」
その時、さっきの違和感がふと舞い戻ってきた。
そして、その正体に気づいた。
「魔理沙、もう一つ聞いていいか?」
「ああ。」
「フランと美鈴ってどっちの方が強い。」
「そりゃぁ勿論フランの方だな。」
「圧倒的に?」
「圧倒的に。」
やっぱりだ。
だとしたら、フランは――。
「フランは手加減を知っている。」
「は?」
「知っているんだよ。少なくとも無意識的にやれるくらいには。」
「なんでだ。」
「もしもフランが手加減を全く知らず、本気で僕と戦っていたなら僕は今頃肉片になっているはずだ。何しろ今の僕が避けられるのはせいぜい美鈴レベルの弾幕くらいなんだからな。」
「まぁ、確かにな。」
魔理沙が真剣な顔をで頷く。
「これならレミリアを説得できるんじゃないか。」
「あぁ、それは無理だろう。」
「どうして。」
そこでまた、魔理沙は諭すような態度に戻った。
「重信、お前自分で言っていただろう。」
「何をだ。」
「『レミリアは錯乱している』ってことをだ。そんな状態でまともに応対できると思うか?」
「……。」
「それにレミリアが落ち着くころには重信の記憶の信頼度も落ちてしまう。そうなれば説得は無理だろうな。」
「じゃあ、どうすればいいんだ。」
「忍び込んで連れ出すっていう手もあるだろうが、ばれずに侵入なんてできないし、弾幕ごっこになったら今のお前に勝ち目はない。」
ふぅ、と一息おく。
「強くなりたいんだったらそうすればいいだけの話だがな。」
そう言うと魔理沙はゆっくりと歩いて言った。
そしてドアの前で一度立ち止まり、別れの挨拶だけ残してそのまま去っていった。
ポケモンのサイトウと妖夢って何となく似てません?




