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繋がりを持てない少女

フランドールは狂ったように――いや、実際に狂っているようなものだったが――笑うと、再び弾幕を展開した。

さっきの弾幕よりも幾らか強力になったものだ。

話し合いによって平和的にこの勝負を終了させるのが無理だと知った僕は、ただただ避け続けるしかなかった。

体力はさっき話していた間に少しは回復した。

しかし、それはないに等しい、微々たるものであり、あてにすることなどはできなかった。

なので、五分もするともう体力切れになり、気力だけで凌いでいるという感じだ。

そんなとき、腕についたデバイスのことを思い出した。

これがあれば何処にいても連絡がとれるとレミリアが言っていた。

ならば、これで救援を呼べば良いのである。

勿論、デバイスを起動させて自らの口で助けを求めていたのではその間に被弾する可能性もある。

というか高い。

だから、デバイスを起動だけさせておいて、今の状況を音声だけで聞いてもらう。

そうすれば僕が今交戦(?)中であることが分かるだろうし、紅魔館のなかで弾幕ごっこができるところも限定されているのだから救援も早めに来ることができるだろう。

早速、慎重かつ素早くデバイスに手を伸ばし、起動させた。

さわった途端に赤色で「wait」という文字が表示された。


「早く繋がってくれよ……」


そう呟きながら(ついでに弾幕を避けながら)待っていると、ピピッと言う音がして青色で「conected」と映された。

それを見て思わずほっと一息ついてしまった。

これで助けが来る、そう思った。

が、ここで少し気を抜いてしまったがために、か前方ら接近してきていた弾幕に気づけなかった。

もう間に合わない。

そう体が判断したのか、反射的に顔の前で腕を十字に組んで防御の姿勢をとった。

と、腕のデバイスが青く光だし、弾幕がぶつかる直前に小さな魔方陣(のようなもの)を形成した。

その一瞬あと、腕から衝撃が一気に伝わり、後ろに数メートルほど飛ばされた。

なんとか壁にぶつかる前に体勢を立て直したのだが、腕の方は幾つかアザができており、しかもデバイスはバラバラになっていた。

これで、助けを望むことも出来なくなってしまったと言うわけだ。

しかし、僕にはゆっくり悲しむことさえも許されなかった。

フランドールの弾幕は止まることを知らず、また直ぐに避けなければならなかった。

助けが呼べなくなった今、僕にはひとつの方法しか残されていなかった。

フランドールに対して弾幕を撃ち込み、フランドールが怯んだ隙にドアへ全速力で向かう。

もう、それしかないだろう。

僕は両手の平をフランドールに向けた。


「ごめんよ、フランドール!」


僕はそう叫ぶと出来るだけ精神を集中させ、手の平に力を込めた。

すると、直ぐに無数の光の弾が四方に発射された。

それを見たフランドールは驚いたような顔をしていたが、それも直ぐに弾幕に隠れて見えなくなってしまった。

直後、部屋の中に爆発音が響いた。

力加減などは全く考えずに(そもそも考える余裕はなかった)発射したため、その爆発は凄まじいものだった。

そして、狙い通りフランドールの弾幕はやんだ。

それを確認した僕は急いでドアに向かった。

ほとんどぶつかるような勢いでドアに飛び付き、ドアノブを回してドアを動かそうとした。

が。


「あれ?」


ドアは軋みながら若干前後するだけで開く気配など微塵も見せない。

鍵穴は見当たらないから鍵がかかっていると言うわけでもないだろう。

ならなぜ……。


「そのドア、内側からじゃ開かないのよ。」


背後からフランドールの声が聞こえた。

急いで振り替えったが、フランドールは一人になっていた。


「お姉様がね、フランが勝手に外に出るといけないからって、外からじゃないと開かないようにしちゃったのよ。ほんと、ひどい話よね。」


「ど、どうして外に出してもらえないんだ。」


そう尋ねると、フランドールは突然目に涙を浮かべ、そして流した。


「フランはね……フランは何でもかんでも壊しちゃうからダメなんだって……。でもね、フランだって壊したくて壊しているわけじゃないわ。でも、私の能力のせいで……この「何でも破壊する程度の能力」のせいで……みんな壊れちゃうのよ!」


「……。」


僕は黙ったままだったが、フランドールは話を続けた。


「だから、重信に遊んであげる、って言ってもらえてとても嬉しくて、制動がきかなくなってしまったのよ。えぇ、私が悪いんだわ、みんな私が。」


フランドールは床に座り込み、うつむいた。


「私がこんなだからみんな傷つくし、私は独りになる。そう、みんな私がこんなだから……。」


僕はなんとも言えない気持ちになってしまい、こちらもうつむいてしまった。


「ねぇ、重信。」


「……なんだ。」


「私を……ぶって。殴って。」


突然の願いに目を見開く。


「私は重信に酷いことをしちゃった。もしかしたら重信は死んでいたかもしれない。だから、私を思いっきり殴って。」


「……。」


僕は黙ったままゆっくりとフランドールに近づいた。

そして、手をあげて、フランドールを殴る準備をした。

あとは拳をフランドールの頬に落とせば良い。

落とせば、良いんだ。

しかし、そんな簡単なことを、僕はためらっていた。


何をためらっている、この女はお前を殺そうとしていたんだぞ。

こんなところで情けなんぞ不要だ。

ほら、やってしまえよ!


そう自分に怒鳴り付けてみるが、それでも殴ることはできない。

そしてとうとう、僕は拳を下ろしてしまった。

そして、フランドールにそっと抱きつき、頭を撫でた。

あれぇ、今回でフランとの話は終わるはずだったのになぁ。

またまた予定通りにいってないのかぁ。

もうちょっとちゃんとしてくれよ。

次回で多分終わります。

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