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何かといって、基本が大事

図書館における壮絶な戦いからはや一日。

僕の、身体への負担を顧みない劇的な働きにより昼食、夕食抜きというA級戦犯にさえも科せられそうにない極刑は避けることができた。

しかし、その代償はやはりこの身に降ってきたのである。

筋肉痛。

あらゆる痛みの中でも極めて生活に支障をきたしやすいといわれる(当社調べ)この筋肉痛が、身体のいたる部位、特に二の腕に襲い掛かってきたのだ。

その猛威たるや想像を絶するもので、腕を少し上げただけでも直ぐに激痛が走るのである。

代償はそれだけではない。

筋肉痛だけでなく、あらゆる痛みが関節や腰を強襲したため、被害は甚大である。

だが、食料以外に得るものがなかったわけではない。

これだけひどい筋肉痛があるということは、少なからず筋力が付いたということである。

そうなら蔵書整理の目的のうち、僕に利益のある方が達成されたわけであるし、素直に喜ぶべきことであろう。

それに、これのおかげで一つ大事なことが分かった。

能力の過信は危険だということだ。

正直、この幻想郷に来たときは「能力さえあればだいじょーぶ」などという呑気な考えをしていた。

しかし、実際は能力はいわば特殊兵装。

あれば便利だが必ず役に立つとは限らないのである。

昔から言われていることだが、基礎、基本こそが最も重要なのだ。


とは言っても、体の痛みがひどいことに何ら変わりは無いのだが。

今日はいっその事ずっとベッドの上で……。

そんなことを考えるや否や、部屋のドアが勢いよく開いた。


「重信さん、特訓の時間過ぎてますよ!もう九時半じゃないですか!」


逃亡は不可能のようだ。

僕は何とか力を振り絞って体を起こした。

痛みは相変わらず身体のお至る所を刺してくる。

一分ほどかけて、ようやく立つことができた。


「さ、行きますよ!」


美鈴はくるりと後ろを向くと、さっさと出て行った。

僕は慌てて追いかけようとしたが、痛みに耐えきれず歩いていく羽目になった。

おかげさまで本来なら数分で行けるところをたっぷり十分かけてしまった。


「やっときましたね。さぁ、始めますよ。」


着いた途端に始まる特訓。

いつも通り霧の湖を走るところから始まったのだが、やはりうまく走れない。

一周もしたころには痛みのためにまともに走れなかった。

さすがの美鈴も僕の様子に気が付いたようで、声をかけてきた。


「どうしました?今のあなたならランニングくらい平気でしょう?」


美鈴が立ち止まった。


「それが、かくかくしかじか……。」


「成る程、筋肉痛でしたか。今日は新しい特訓に入りたかったのですが……。」


美鈴は目を瞑り考えるそぶりを見せたかと思と、何かいい案でも思い浮かんだのかポンと手を叩いた。


「そうだ、それなら私がマッサージしてあげますよ。」


「?マッサージで筋肉痛が治るんですか?」


「普通のマッサージでは無理です。しかし、私ならできます。取り敢えず、そこの草むらの上で横になってください。」


僕は言われるままに近くの草むら(暑かったので日陰を選んだ)の上寝転がった。


「あ、仰向けじゃなくてうつ伏せです。そうそう。じゃあ、いきますよ。」


美鈴は僕の背後に立つと、しゃがんで僕の足を持った。

「成る程、先ずは足からほぐしていくのか」、と思っていると突然足の裏に激痛が走った。

思わず呻き声が漏れる。


「あ、痛いですか?」


声を出す余裕がなかったので思い切り頭を上下させると、


「ま、我慢してくださいね。」


と、何とも理不尽な答えが返ってきた。

美鈴のマッサージは三十分ほど続き、その間痛みは絶え間なく続いた。

足の裏、ふくらはぎ、手の平、背中……。

その痛みは筋肉痛より過激で、数回ほど意識が飛びかけた。


「はい、これで終わりました。立ってみてください。」


マッサージの痛みの余韻を感じつつ、ゆっくりと立ち上がった。

すると、不思議なことに筋肉痛がすっかり治っているのである。

さっきまでの苦痛が嘘のようだ。


「一体、どうやったんですか?」


「ツボですよ、ツボ。聞いたことないですか?」


「あ、ツボですか。成る程、成る程。」


「兎も角、もう動けるようになったでしょう。さ、続きをしますよ。」


身体が完全に回復したので、僕らは残りの十四週(最近は十五週走るようになった)を走り、次に特訓に移った。


「さて、重信さんの基礎体力も十分上がったでしょうし、弾幕の特訓に入りましょうか。」


この言葉を聞くと同時に、自然と身が引き締まるのが感じられた。

いよいよ、である。

はっきり言って今までの特訓は余興に過ぎなかったのだろう。

ここからが本番だ。

数週間前、魔理沙に弾幕を見せてもらったが、美しいだけでなくとても密度の高い代物だった。

それを、僕はこれから避けることになる。

僕は深呼吸をし、それから返事をした。

MATRIX見てきました。

ほんと、凄かったです。

ストーリーとかも勿論いいんですけど、何といってもアクションシーンが、ほんと、もう、最高でした。

特にクライマックスの格闘シーンとかね、圧巻でしたよ。


次回は美鈴の弾幕避けます。

まぁ、多分当たりまくるでしょう。

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