明日も今日の風が吹く
部屋にはベッドと椅子と机だけがあった。
ひどく簡素な部屋である。
魔理沙は仕事の用意もここにあると言っていたが、あるのは原稿用紙と万年筆、インクだけであり、本当に必要なものくらいしか無かった。
せめてショルダーバッグの中身くらい持ってきたかったのだが。
僕はそう思うとともに、ベッドに身を投げ出し、目をつむった。
さっき案内してくれたメイドは三十分後に紅魔館の門に来てくれればいいと言っていたので、少しくらいは休めるだろう。
しかし、僕はここの間取りを全くもって知らないので、二十分前くらいには部屋を出た方がいいだろう。
結局、ほとんど休めない。
十分ほど寝転がったあと、僕は思い腰を持ち上げて門に向かった。
この部屋に来るのに通った道をなんとか思いだし、半ば手探り状態で進んでいく。
それにしても、この館は広すぎである。
外から見たときは「まぁまぁ広いけど迷うほどではないだろう」と思っていたのだが、外見と中身のサイズが一致しない。
ここには空間をいじるのが好きな人でもいるのだろうか。
そして、この館、突き当りが異様に多いのである。
この数分で六個ほどは確認できた。
これでは間に合わないかもしれない。
そう思って足の動きを速くした。
そんなこんなで大量の突き当りと格闘した後、なんとか時間内に門までたどり着くことができた。
「あ、来ましたね。」
門では美鈴が待っていた。
「はぁ、はぁ、どうも。」
こちらも挨拶するが、さっき急いだせいで息が上がってしまっていた。
「あはは、若しかして、ここに来るのに結構手間取ったんじゃないですか?」
「はぁ、はい、とても、広かったので。」
「まぁ、これからしばらくはここで暮らすんですから、じきに覚えますよ。というより、覚えないとやってけないですね。」
「ははは……。」
この広さの間取を頭に入れないといけないとは、考えるだけでも嫌になる。
「じゃあ、始めましょうか。」
そういえば、特訓しに来たんだった。
何故忘れてしまうのか。
相変わらず記憶力が悪い。
「先ずは、あなたの今の実力を見させていただきます。」
「どうやってですか?」
「そうですね、取り敢えず私に通常弾を撃ってください。」
「はい……え?大丈夫なんですか?」
「勿論です。弾幕をよけるのは慣れてますし、当たっても死にはしません。そもそも、弾幕ごっこはそういうものですからね。」
「そうですね。じゃあ、いきます。」
「一応、幾らかくらい離れたところから撃ってください。」
「はい。」
僕は十数歩くらい下がって距離を取り、そして両掌を美鈴に向けた。
まず弾幕をイメージし、そして手に力を入れた。
途端に幾つもの弾幕が掌から飛び出した。
それらはあっという間に美鈴との距離を縮めた。
しかし、あと少しというところで避けられてしまった。
急いで弾幕を撃つ方向を修正し、発射続ける。
今回も弾幕は一気に距離を詰めた。
今度は行ける……!
僕がそんな淡い期待を抱いたのもつかの間、またぎりぎりで避けられてしまった。
二、三分ほど弾幕を撃ち続けていたが、美鈴にはかすりもしない。
そして五分ほどたったところで体力が切れてしまった。
「はぁ、はぁ、はぁ。も、もう、無理、です……。」
「おや、もう終わりですか。」
「た、体力が、持たないんですよ。」
「成る程。」
その後、僕は座ってしばらく休憩した。
「それにしても、やっぱり凄いですね。あんなに、あっさり避けられるなんて。」
「いえ、これでも幻想郷内では弱い方ですよ。」
「……はい?」
「私より強い人はいくらでもいます。だからほら、もっと頑張らないといけませんよ。」
早速心がおれそうである。
ここまでのお豆腐メンタルもなかなか珍しいだろう。
しかし、僕はそういう人間なのだ。
「……さいですか。」
「それにしても、重信さんは体力があまりないんですか?」
「えぇ、まぁ。自分は体力がないと、胸を張って言えますよ。」
「張らないでください。でも、体力がないんだったら対処しなくてはなりませんね。異変等での弾幕ごっこは基本的に長期戦です。体力が重要なんです。」
「つまり……。」
「体力を付けましょう。なので、とりあえず霧の湖の周りを走りましょうか。」
「今からですか。」
「勿論です。」
「まだ少し疲れてるんですが。」
「だからこそ意味があるんですよ。」
「因みに、何周ほどするんですか?」
「そうですね、取り敢えずは軽めにしておいて……。」
嫌な予感しかしない。
こういう人の”軽く”は大抵――。
「十週くらいにしておきましょう。さ、早く始めましょう。」
美鈴は僕の手をつかむと(この人握力が強すぎる)グイッと引っ張り(腕の力も!肩が抜けてしまう!)そのまま走り出した。
「ちょ、待ってくださいよ!」
「いうことを聞かない人にはきつ~いお仕置きですよ!」
そんなにこやかな顔で言われても……。
しかし、さっきまでの行動を見ているとこの人のお仕置きは相当なものなのだろう。
ここは、おとなしく従った方が身のためだ。
そう考え、僕はゆっくり走り出した。
この先に待っているのは、天国か、地獄か。
まぁ、どう考えても地獄だろう。
The homework is so much
Each step is only the beginning
No breaks just homework
Oh man,is there anybody waiting
つまり、宿題が多いのです。
元ネタはIt's a long road、ランボーの主題歌です。
何やってんだろ、僕。




