2-16 空飛ぶ宿屋
【学園時計塔 ロック・シュバルエ】
――今、どうやって斬られた?
俺は壁に持たれながら自分の体を確認する。
黒髪イケメンと話していた際に襲った突然の斬撃。……のはずが、不思議なことに裂傷はない。
だが壁にもたれながら立ち上がると、まるで斬られたかの様に、上から下へと走った場所が痛んだ。
これを仕掛けた人物は間違いない。今ゆっくりと階段を降りて来る教国軍元総長と名乗った初老の剣士。
「おかしいですね……確かに宿屋君は斬ったはずなのですが、何故、真っ二つになっていないのでしょうか?」
例の勇者をも凌駕するという男から受けた攻撃は、やはり斬撃なのだろう。
しかも本来ならば俺は真っ二つになっていた程の切れ味らしい。
「……素直に教えるとお思いですか?」
とりあえずハッタリである。当然、なんで斬られなかったかは知らない。宿屋のクレーマー相手にもたまに使う時間稼ぎ。
「ほぉ。私がどうやって君を斬ったのかも分からないのに? 幸薄そうな顔で君も存外吠えますね」
「そりゃあ多少は吠えますよ。こっちもあの距離で斬られるとは思いませんでしたから。随分と長いリーチのようで」
「ええ。慣れればどんな距離でも斬れますからね。これで今まで数千人は殺してきましたよ」
そう言って抜く素振りも見せず、剣の柄を叩く。
……本当に、さっきの攻撃はどうやったんだ?
俺が視界に元総長を収めた時、彼は剣など抜いてすらいなかった。しかも弓の距離からの斬撃。ますます意味が分からない。
「お待ち下さい! さっき聞こえた話は本当なのですか!?」
そんな風に先ほどの攻撃の正体を思案していると、黒髪イケメンが元総長と名乗った初老剣士に向かって叫んだ。
「事実ですよ。クラフトガンくん……先程の声の主が学生を拷問或いは処刑すると言うのなら、それは必要な処置なのでしょう」
「それでは話が違うではありませんか! 学生には手を出さないとそう仰ったはずです!」
「ですが貴方も、ここに入った者は殺せと命じた私の命令を聞いてはいませんよね?」
「そ、それはっ! 彼は学生で、本来なら保護される――」
「はは。はははははっ」
笑い出す元総長。
その様子に困惑する黒髪イケメンだが、俺としては理解できる。
ズレている。黒髪イケメンは明らかに。
力関係において完全に負けている相手に、約束など何の意味もない。その保護を求めるなど、笑われても仕方ない気がする。
「ここまで愚かだったとは思いませんでした。なかなか可愛らしいですが、そういう程度の低いやり取りは卒業していて貰いたかったですね……とはいえ」
元総長が俺達を見る。
「宿屋の倅を始めとしたそこの三人をここで排除するなら、先ほどの声の主には私から釘を刺しましょう」
「俺に彼らを斬れと言うのですか!?」
「当たり前です。自分よりも力の強い相手に信頼されたいなら、まずは約束を守るのが当然かと」
まぁそうですよね。
なんだか元総長の話の方が俺としては通じるものがある。だからこそ、今話した内容の胡散臭さも際立つが。
けれど彼は一人置いていかれた子供の様な顔でこちらへ振り返る。
その様子にプティンも斧を構え、眼帯さんもその手にナイフを出す。
「オイ、どうすんだよお前。本気で俺達と戦う気か? なぁ! お前は本当はこっち側の人間なんじゃないのか!?」
プティンが強く問い詰める。
黒髪イケメンは苦虫を潰した様な顔で、すぐに反論する事もせず、拳を握り締めて下を向く。
「…………仕方、ないだろう」
だがやがて選び様のない苦しい胸の内を、彼はポツリポツリと、吐露し始めた。
「……すまん、とは思う。本当は俺だって貴様等とは戦いたくはない、殺したくはない……しかしっ、俺達にもう逆転の目はないんだッ! 相手は本気の教国軍だぞ、勝てる訳がないッ。だから貴様等をここで倒さなけ――」
「すみません。ところでこの話って長いですか?」
「れば――は?」
だか長いのは困る。俺の質問に彼が虚を突かれた様に顔を上げる。
「長いんでしょうか?」
「いや、それは、何とも……」
「一分? 二分? もしかして三分以上?」
「まぁ……そのくらいは……うん」
うん、と頷いた部分に、なんか哀愁を感じる。でも放っておくと、お涙頂戴の苦しい葛藤が始まりそうだったので仕方ない。
「そっかー。じゃあ投降します」
「……待て。待って。今の会話の流れでどうしてその言葉が出た?」
「このままだと、なんかこうウジウジ悩みながら「本当は戦いたくないんだ!」「それでも俺は!」みたいな感じになりそうなので、それが嫌なんです」
「そ、そうか?」
何処かホッとした様な、まだよく分かっていない様な顔である。
「おい待てロック!? 話が違うじゃないか!?」
一方、プティンもこちらを見て何か叫んでいるが、そこは気にしない。
むしろ静観している面倒な男が動き出さないうちに間髪入れず剣を床に置いて黒髪イケメンの方へと転がした。
「はい。これで武器も手放しました。確認して下さい」
「……どうやら本気らしいな」
彼が下を向いて俺の剣を取ろうとする。
その瞬間。
「懸命な判――」
「時間加速ッ!!」
俺は時間を加速させ距離を詰めると同時に、膝蹴りでその顎を打ち抜いた。
「だん――だはァッ!?!?」
頭をかち上げられ綺麗に反り返る黒髪イケメンの上半身。彼はそのまま仰向けに倒れ、ぐたっ、と白目を剥いて意識を失った。
「よし」
これで面倒が一つ片付いたぞ。
「……え、えぇー」
「……間違ってはないんですが、ええ。ただやり方」
プティンが凄く微妙な顔を、一方眼帯さんは多少の理解を見せてくれた。
「とりあえず、剥ぐか」
俺は自分の剣を拾うと、さっさと意識のない黒髪イケメンから剣やナイフなどを剥ぎ取り、プティンの方へと投げた。
「……随分と思い切りが良いですね君は」
するとずっと静かに俺達のやり取りを見ていた元総長がたおやかな笑みを浮かべ口を開いた。
「てっきり揉めて戦うと思ったんですけどね。戦いにすらさせなかったのは評価が高い。酷いとも思いますが」
確かに我ながら酷いとは思う。
だがなにせ時間がないのだ。闘技場の状況はどう考えても一刻を争う。
しかもだ、きっとこの元総長は黒髪イケメンとの約束を守らない。
だって仮に闘技場の処刑を止めようにもこの距離じゃそもそも「拷問はやめろ」と伝える術がない。さらに俺達の戦いが長引いても、もう間に合わず手遅れ。
つまり。
「ご冗談を。貴方こそ彼との約束なんて端っから守る気もないくせに」
俺の指摘に総長は不気味に微笑んだ。
「おや? 気付いてましたか。ええ。最初からどちらに転ぼうが学生達は向こうで、君達はここで死んで貰うつもりですよ」
教国最強の剣士が、腰の剣に手も掛けずに前に出る。
できれば避けたかった相手。ある意味で最悪のシナリオ。
『やっ、やめッ――゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああっっっ!』
「っ!?」
不意に女の子の絶叫が木霊する。
けれど現状、一番やばいのは間違いなく闘技場の方だ。遅れれば遅れるだけ被害者が増えるのは間違いない。
「君は向こうに行きたいみたいですね。もちろん、行かせはしませんし、そも、ここで死ぬんですけどね」
そして結局――この男をどうにかする以外にこの状況を打破することは出来無いのだ。
「ご安心を。最初から……そのつもりだッ時間加速ッ!」
あの初撃のカラクリは未だ分からない。けれど分からないなら――。
「全て躱せば良いだけのこと!」
時間加速。
細かい部分は未だ不明だが、行動が外部と切り離されて加速する。加速した物が周囲とぶつかれば、それはそのまま力が加わる。
つまりは想像通りの加速魔術。使い勝手はこの上なく良い。
「まっ、待てロッ――って速っ!」
「速いっ。さっきの不意打ちは偶然出はなく自在に使えるのかっ」
俺の時空間魔術を知らないプティンと眼帯さんの驚愕した声が、加速状態の俺の耳に入って抜けて行く。
だが元総長は微動だにせず。
俺は一つの方向に走る度に加速、反転し、縦横無尽に方向を変えて元総長の死角に入り込む。
けれど未だ抜剣なし。
触りさえしない。一瞬、あまりの無防備さに誘い込まれたかの様な疑念が浮かぶが、止めようもない。
「――ハッ!」
横一線。
俺の加速された剣が元総長の体を切り裂く。彼の上半身はあっさりと下半身と分離した。
しかし。
――手応えがないっ?
「残念。それでは私を殺せませんよ?」
意味不明な事態に困惑していると、分離した上半身がこちらに振り返る。
手には紅色の剣。
その顔に笑みが浮かんだのを見て、危機感から手をかざした。
「時間遅延ッ!」
「一ノ太刀」
それでも紅剣は止められない。発動より早く心臓に突き刺さる。
ただその心臓は――。
「じ、自殺ぅ?」
元総長の自らもの。自分で自分の胸に深々と突き立てられる紅色。
「んっ?」
直後。
今度は俺の胸にあの白い線が浮かんだ。
まさか――。
遅れてズドンッ! と胸に殴打されたかの様な衝撃が走る。
「ぐっッ!?」
痛みで体が硬直する。止まる呼吸。完全な無防備。本来ならば死んでもおかしくない隙。
――殺られるッ!?
そう一人焦燥に駆られる。……が、実はそれは相手も同じだった。
「こ――――れ――はッ!」
時間遅延。
総長はそれにより僅かに数秒動けずにいた。
一方俺も胸への衝撃により動けず、互いまともに動けない空白の時間。
それが解けるのはほぼ同時。慌ててそれぞれ距離を取る。
「ッ……なんですか今の感覚ッ!?」
「って……なんだ今の攻撃ッ!?」
お互いがお互い全く未知の攻防に叫び、躊躇う。
「しかも貴方、やはり呪いが効かないんですね?」
総長の言葉に困惑する。
呪い? 呪いって……今の攻撃、呪いなのか!?
「呪剣が効かなかなったのはこれで二人目です……ならばこれはどうでしょう。――起きなさい」
だが驚いている暇もなく、総長の紅色の剣が真っ黒なモヤを纏い、かなり距離があるにも関わらず剣が振られる。
「ニノ太刀」
何か来る……そう身構えていると突然、紅色の剣が――ギュンッ! とうねりながら伸びてきた。
「ちょっ!?」
生きているかの様な突然の急加速。まるで鞭。それがしなった瞬間、あまりの速度に避けることも出来ず、俺の首を的確に凄まじい速度で跳ね飛ばしに来る。
「ッ、空間捻転――スルー!」
けれど俺の首を斬り飛ばす直前、捻られた空間に吸い込まれ、速度そのままに伸びた刀身は上空へと軌道を曲げた。
遅れて俺の背後の天井と壁が、爆音と共に木っ端微塵に粉砕される。
「小僧、何をした?」
理解不能な軌道を描く自らの剣に困惑する総長。流石に時空間魔術は知らなかったと見える。
「な、なんだこれ? なにこれ? なんなのこの意味不明な闘い?」
「総長はともかく……どうやって剣の軌道を跳ね上げたんですか? ポーターさんの力は一体なんだと言うんです?」
遠くでプティン達の動揺した声も聞こえた。おそらく、それは総長も同じ。
――これは沁黒の時と同じ。斬り結べば実力差が出てしまう。仕掛けるなら……ここしかない。
ネタが割れる前に、致命傷を与える。
例え相手がレベル100だろうが200だろうが、人間である以上は斬れば死ぬ。
「時間加速」
「七ノ太刀」
俺は決意と共に時間加速で一気に懐に飛び込むが、まだ得体の知れない太刀がそれを迎える。
地味に二から七に飛んだことに驚愕しつつも、時間遅延を近距離から試みる。
「時間遅延ッ!」
これを当ててしまえば、例え最強の剣士だろうが無防備となる。
だが総長も速い。いつの間に元に戻っていた紅色の剣が、今度は黄金に輝きながら振り下ろされる。
――これは避けられる。いや、むしろ。
その剣はなぜか俺達の間、何も無い空間に振り下ろされる。
――え?
結果、消えた。
時間遅延の魔術がぷっつりと消えた。実際、総長の動きは遅れていない。
なぜ? 何が起きた?
一瞬の動揺。
だが目の前にいるのは教国軍元最強を名乗る剣士。
失敗。それを悟り俺は慌てて視界から逃れようと、再びの時間加速。
「――えっ?」
だが発動しない。
先ほどの空振りから、あれだけ制御できていた魔力が集らない。
「対魔術剣士程度の対策は当然のこと――六ノ太刀」
その隙を見逃すことなく、今度は青く刀身が発光したと思うと刀身が液化。俺に水となった剣が浴びせられる。
――あ、喰らう。
液体は対応策のない俺に降り注ぎ――。
「テメェかぁ!!!!」
突然、俺と総長の間にスキンヘッドの男が叫びながら“着弾”する。
「え?」
「は?」
当然、合間に突っ込んだ男は液体化した刀身を全身に浴びる。
するの液体が炸裂し、斬撃と化す――も。
――ギィンッ。
なぜか肉が抉れる音ではなく、不自然な金属音が響く。同時に男の蹴りが総長を襲ったが、距離を取って逃れる。
呆然としていると男はこちらに振り返る。
「あ」
「よし、今度は沼の森と違ってちゃんと間に合ったな――よく生き残った。あとは任せろ」
それは同じ試験で監督した際にいた教官だった。
もう一人の教官に裏切られながら戻ってきて鬼神の様に荒ぶっていた人物。彼はおもむろら俺の頭をくしゃくしゃにしながら撫でた。
一方、突然の乱入者に総長は怪訝な顔をする。
「貴方、地下にいた男ですよね。どうやってここに?」
「やたらハイテンションの道化師の嬢ちゃんが開けてくれてな。魔力遮断のせいで脱出できなかったが、出ちまえばこっちのもんよ。テメェの部下共を片っ端からぶん投げて来てやったぞ」
――もしかしてプルートゥさんのファインプレー?
総長の疑問に答える言葉の中に出た道化師の嬢ちゃんなんて、まず一人しかいない。
「……そうですか。ですが疑問はまだあります。なんで貴方みたいな“人間じゃない”のがこんな所にいるんですか? 事前調査ではいなかったはず」
「そりゃあ俺は侯爵家の元戦闘指南役だからな。ここにいる騎士共は全員俺の教え子だが、誰にも正体は伝えていない。大方、とんでもない怪力野郎とでも思われているだけだ」
その言葉に森から帰還する時に髭の騎士が彼のことを、教官と慕っていたのを思い出す。
「なるほど。まぁ大っぴらにすることでないのは確か。いいでしょう……もののついでだ。トカゲ退治といきましょう」
「お前のことも知っているぞ。教国の七刀流だろ。剣士と俺の相性最悪だぞ?」
二人が不敵に笑い明確に敵意を見せる。
その最中に、教官が俺に小声で告げる。
「……おい。お前等は逃げろ。あれの相手は俺がする。俺もそこそこ強いからな、大丈夫だろう」
「えっ、いや、あの男、光の勇者に匹敵するとか云々って」
「大丈夫だって。勝算がある。ヤツの剣じゃ、俺の体は斬れない。持久戦でもこちらが上だ」
いや斬れないって。さっき確かに金属音がしたけど……。
「むしろお前等がいる方が邪魔だ」
その言葉に逡巡するが、同時に闘技場の方がヤバイことを思い出す。
「分かりました。ここお願いします」
「おう」
俺はこっそり彼に時間加速を掛ける。
そうして窓の方へ行くと、そこから闘技場とそこにいる豆粒みたいな人影が見えた。
俺は窓から距離を取ってプティン達に告げる。
「プティン、眼帯さん、俺ちょっと闘技場に行って来ます」
「あっ! 分かった、俺も――」
「時間がないので。じゃ、お先に」
「ああ……ってお前、そっちは窓――」
俺は助走をつけてそのまま窓から飛んだ。
「窓だろおおおおおおおっ!?!?」
「は? おいまてっ、アイツ今、ちょっ、窓から飛び降りなかったか!?」
「ポーターさん!?」
「馬鹿な……自殺? いやそんなタイプではっ??」
飛び出した背後でプティン、教官、眼帯さん、挙句は敵の総長までも困惑した声が聞こえる。
「間に合ってくれよ」
完全な空中浮遊。
飛び出す瞬間に加速した事もあり、かなりの飛距離が出た。
けれどまだ全然足りない。
当然、体は重力に従い物凄い勢いでどんどん落下していく。
もちろん何もしなければこのまま死ぬ。かと言って足場を作って飛んで行くには、距離があり過ぎるし時間が掛かる。
なので脳裏に過ぎるのは収穫祭の舞台の上に大男が、下から工作員をぶん投げてきた時のこと。
――あれは綺麗なカーブだった。
「空間捻転ッ、スルー!」
俺は落下してその勢いで上に飛び出す様な、下から上に曲がる空間を捻って作る。
イメージは釣り鐘型の発射台。
するとその空間に入った直後、体感的に同じ方向に落下しているのに、視界だけが急カーブする不可思議な状況に陥る。
「うっ……やべこれけっこう気持ちわるい」
けれど、俺は空間を抜けると勢いそのままに再上昇している。
落下速度を使ってさらに前に飛び出していく。
そして再び落下する度に、同じ様にカーブを作り落下の速度を使って前に進んでいく。
「ハハハハッ! 他の人間がいた状態で勝てなかった奴がよぉ、単身で勝てる訳がねぇだろうが!」
どんどん高度が下がって来たが、同時に闘技場の状況も分かる様になってきた。男の声も聞こえる。
――あれ? メイドさん?
ただよく見ると、予想外の人間が戦っている。
メイドさんこ学長さんである。
声からしてペッタンさんがやられているのかと思ったが、何故かメイドさんがゾンビ共を斬り飛ばしていた。
しかし劣勢であるのは明らか。
「バーカ! バーカ! バアァァカ!」
そして一人高めのお立ち台に立ち、だいぶ子供っぽい煽りをしている帽子男がいた。
間違いなく、あれが例の死霊魔術師だろう。
そうして彼が馬鹿でかい杖で何らかの魔術を行使しようとし始めた。
――なるほど、あんたか。
しかし俺の三半規管と落下を利用した動きもそろそろ限界に近づいていた。
けれどあれを阻止しないと面倒なことになるのは間違いない。俺は最後に一度上昇し、自らを球にして胃の内容物を抑えながら帽子男に突っ込む。
「ザマァねぇな! メイドか何だか知らねぇがテメェはこれで終わりに――」
「終わりはお前だァッ!!」
足を突き出す様に勢いのまま帽子男を蹴り飛ばす。
「え? ――ドゥへぇッ!」
ブッ飛んで行く帽子。
魔術は阻止できたらしい。ただ俺も勢いのまま帽子男より遠くへ吹っ飛んでいく。
ただその際、傷だらけで膝をついて見上げるメイドさんと、一瞬目があい、彼女が笑ったのが見えた。
「――遅いんですよ、学園最強」
各人の状況
『学園時計塔』
・ロック(宿屋の倅、ペッタンさん救出の為に時計塔からスカイダイビング中)
・プティン(元パーティーメンバー、デブ、輪に入れない)
・眼帯さん(元パーティーメンバー、認識阻害ギフト、胃痛発動中)
・鬼神教官(ロック達の引率、地上から塔に乱入、非人間にして元侯爵家剣客)
・黒髪イケメン(元パーティーメンバー、総長は命の恩人、ロックの蹴りで気絶)
・総長(教国軍工作メンバートップ、元総長、七刀流)
『学園闘技場』
・ペッタンさん(元パーティーメンバー、エルフ、外套を獲得)
・メイド組長(学園最強、ペッタンさんを救出するも物量に敗北寸前)
・クラフトガン(教国軍、帽子男、死霊魔術師)
『学園敷地内?』
・神官ちゃん(元パーティーメンバー、性女、所在不明)
・プルートゥ?(道化師、所在不明)
『日本』
・沁黒(暗殺者、マク○ナルド 御徒町店で助けたギャルにバーガーを奢られる)
鬼滅のブームのせいで総長の技がパクりみたいに……。