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偉すぎステイリィの降格奮闘記  作者: ふっしー
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『ステイリィスリー』登場


「さて、一体どうすれば簡単に降格できるのだろうか」

「何度聞いてもアホな悩みですね」


 次の日。

 早速朝から仕事に一切手をつけることなく、能天気にそんなことをほざく上官は、まさに治安局員の誇り、いや埃でしょう。


「仕事しなくていいんですか? 続々と書類は溜まって、もう山が12個も出来ていますよ?」

「ふむ。実にバカな指摘だな。そうは思わんかね、ビャクヤ君」

「思いませんよ。私天才なので。現実的にどうするおつもりで?」

「君は実にバカだな。ちょっと考えてみたら判るだろう」

「つまり?」

「私は今から降格するんだぞ? つまり仕事なんてしなくてもいいし、何より降格したらこれは私の仕事じゃなくなるだろう。次の奴にやらせればよいのだよ!」

「おお、実におバカな発想ですね! 私には思いつきませんでしたよ!!」

「だろう? 頭の良いビャクヤには到底出来ない発想だろう?」

「ええ、上官、実におバカです!!」

「おいおい、そんなに褒めるんじゃない!」


 何を自慢げに言うかと思えば、やはりというべきかアホな発想。

 こんな低脳な人の下で働けて、私達はなんという幸せ者でしょう。


「ということで、しばらく仕事は放置することにする。それよりも、昨日の夜、家で逆立ちしながらバナナを食べていると素晴らしいアイデアを思いついたのだ。聞け」

「どうして逆立ちしながらバナナを食べているんでしょう?」

「いや、そっちを聞けって言った訳じゃなくてだな。ちなみに理由を言うと、逆立ちバナナ豊胸法を試していたのだ」

「デマだと判っていても実践するとは。実に涙ぐましい」

「デマなのか!?」

「貧乳以外、誰も騙されませんよ、そんなデマ」

「黙れ! 貴様みたいな巨乳に貧乳の気持ちなど判ってたまるか!! なぁ、お前!!」


 ステイリィ上官が肩を叩いたのは男職員。

 「え、ええ、そうですね」という彼の適当な相槌に「そうだろう、そうだろう」と満足そうな上官でした。

 しかし、面倒くさいことになったのは、この後のことでした。


「「「ちょっと待ったああああああああ!!」」」


 バタンと勢いよく扉が開かれ、そこにいたのは、なんと――


 ――普通の治安局員が三人。


 彼らはズズイと身を乗り出して、部屋に入ってくるなり、叫び始めました。


「ワガママ!!」

「ヒンニュウ!!」

「そしてエイユウ!!」

「それら全てを兼ね備えた奇跡の存在!!」

「いや、バカにしてんのか? してるだろ絶対」←ステイリィ

「「「我らがゴッド!! ステイリィ上官!!」」」

「そしてそんなゴッドを守るべく!」

「この支部へと転勤願いを出した我らエリート三人組!」

「ステイリィファンクラブ、その名も『ステイリィスリー』、ただいま登場!!」


 そんなことを叫んでポーズを決める彼らは、どこかやりつくした感と自慢げな表情を浮かべて、凍りついた空気のど真ん中に立っていたのでした。


「おい、ビャクヤ。このバカ共は何だ?」

「昨日説明したと思いますけど」

「こんなバカ三人組の説明なんて聞いたことあるわけないだろう?」

「いや、確かに伝えましたよ。本日この治安局ソクソマハーツ支部に新しい局員が転勤してくると」

「……あ、確かに聞いたかも」

「上官、その時クロスワードパズルに夢中だったですからね。聞いていなくても仕方ないです」

「で、その新しい局員がこいつらだと」

「そう言うことみたいですね。とても残念なことですが」

「粗大ゴミとして外に捨てておいてくれ」

「了解です」


「「「ちょっと待ったああああああ!!」」」


「いちいち大声出すなよ。うるさいな、もう」


「「「捨てる前に聞いていただきたい!!」」」 


「なんだ?」


「「「是非踏んでいただきたい!!」」」


「えい」


「「「うひょおおおおおおおお!!」」」


「ビャクヤ、捨ててこい」

「了解でーす」


 変態どもをゴミ箱にぶち込んで、とりあえず仕切りなおしをしましょう。


「ちなみにあの三人、変態ですが超エリートですよ。元々はあの『ネクスト』出身ですから」


 『ネクスト』というのは治安局の今後を背負う超エリート局員だけを集めたチームのことで、各々はヴェクトルビア魔法律大学の主席レベルのはずなのです。


「以前上官が『ネクスト』と絡んだ事件があったでしょう? その時にファンになったそうですよ」

「ちっ、相変わらず面倒な集団だよ」


 ぶつくさ文句を垂れていると。


「あのゴッド、ちょっとよろしいですか?」


 ゴミ箱の中から三バカの一人が顔を覗かせた。


「なんだ? バカ」

「上官はその、今の地位から降格をしたいと?」

「ああ、そうだ。無駄に偉くなってしまったこの地位は不自由でかなわん。もっと楽な立場でいい」

「それってつまり……」


 いつの間にかゴミ箱の淵にはバカ三人が顔を覗かせて、目をキラキラと輝かせていました。


「「「な、な、なんて慎み深いんだ!!」」」


「……は?」


「我々『ネクスト』は常に上だけを目指し、周囲も出世のことしか考えておりませんでした。実に自分勝手な連中ばかりで辟易していたところなのです!!」

「そんな荒んだ我々の心を癒すかのように颯爽と現れたのは我らが神ステイリィ殿!!」

「貴方はネクストの連中が自分のことしか考えていない間に、周りのことを一番に考え行動していました!!」

「その素晴らしき精神に感動を覚えていたところに、この謙虚さ!! 我々、もう感動を通り越して、もう信仰に近い感情を覚えております」


「うわ、気持ち悪い……」」


 真実を言えば彼らが思っているような慎ましさからくる上官の言葉ではないのですが、彼らにはいくら真実を説明しても一切聞く気はないでしょう。盲信しているようにも見えますから。


「「「是非我々にもその降格、手伝わせてください!!」」」


「いや、普通に断るけど」

「そういうことでしばらく黙っていてくださいね!」


 もうこれ以上彼らの喋らせるのは面倒なので、ゴミ箱に蓋をしてこの場を締めたのでした。


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