2話 お母さんの帰宅
お母さんが帰宅したのは19時だった。
「おかえり」
「ただいま」
お母さんの帰宅に気付いた伊里奈が真っ先に玄関に向かう。
「慧もただいま」
続けてリビングに来たお母さんは僕に挨拶をして、お父さんにも挨拶をする。
「ねえ、お母さん」
「どうしたの」
お母さんが一息もつかずに夕飯の準備を始めながら伊里奈に尋ねる。
「私、今日ね、テストで100点取ったのだよ」
そう言って自分の部屋に駆け足で向かった。お母さんはその行動に疑問を感じたが料理を続ける。
「お皿とか出しとくね」
料理をしているお母さんに僕はそう告げてお皿や箸を僕はリビングのテーブルに出す。
「ありがとね、慧」
「大丈夫だよ、お母さん、家事に仕事と大変だからね」
その言葉にお母さんは背を僕に向けてしまった。
「お母さんみて」
そこにタイミングを計ったかのようにプリントを手にした伊里奈がやってきた。
そこでお母さんは何故伊里奈が自分の部屋に行ったのかという謎が解けた。
「すごいわねぇ」
お母さんに褒められ、純粋に嬉しそうな顔になる。
「そんな、伊里奈にはご褒美がないとね」
「ご褒美!」
ご褒美と単語がでた瞬間、伊里奈は飛び跳ねた。僕はそんな姿を微笑ましく感じた。
「だから、おとなしく夕飯できるまで待ってね」
伊里奈はお母さんのその言葉に素直に従い、リビングでテレビを見始めた。