語る視す
剣と魔法のファンタジー世界、そこに現代日本人の二人組が転移してきたが、何の能力もなく門番をさせられることになった。
退屈である。日がな一日、門の前に二人きり。
名前は秋月と入野絵。
今日も今日とて門の前で無駄口をたたく日々。
あ「いーちゃん、メガネっ娘はメガネをかけていればメガネっ娘かなぁ」
い「そりゃーそうだろう」
あ「否、メガネをかけている娘がメガネっ娘に非ず!」
い「なんでだよ。メガネかけてればメガネっ娘だろ」
あ「じゃぁなにか! 伊達メガネでもメガネっ娘っていうのかよ!?」
い「……言うだろ?」
あ「いいや、言わないね! 伊達メガネはその場でつけているだけでメガネのなんたるかをさっぱりわかっていない女の子だ。そんな娘をメガネっ娘とは呼ばない。ただの伊達メガネだ!」
い「伊達メガネでもいいんじゃないのか?」
あ「そんなのは素人だ!」
い(素人とか玄人とかあるんだ……)
あ「だいたいメガネっ娘はメガネをかけていると思っている時点で間違っている!」
い「! いや、間違ってねーよ! メガネかけてなかったらメガネっ娘じゃねーよ! 明らかにお前が間違ってるよ!」
あ「じゃぁ聞くが、メガネっ娘がメガネを落して探しています。その状態はメガネっ娘じゃないんですかぁ~?」
い「え? いや、メガネっ娘……かな? なにそのしたり顔、ムカつくんですけど?」
あ「そう、メガネを探しているだけでメガネっ娘である。そしてコンタクトに一時変えていたとしてもメガネっ娘である。メガネのことを忘れていなければ……。すなわち、メガネっ娘とはメガネのことを熟知していなくてはならない」
い「じゃぁメガネ屋の店員のお姉さんがメガネをかけていなければ?」
あ「まずはメガネをかけてない店員という時点で間違っている」
い「間違っている……って言われてもなぁー」
あ「メガネ屋の店員である以上、メガネをかけていなければならない!(キリッ」
い「そんな凛々しい顔でいわれても別に説得力が増すわけでもないよ。メガネ屋の店員だってメガネかけてない人もいるだろう?」
あ「じゃぁなにか? トヨタの営業マンがフェラーリに乗って自社の車の販売をするのか? 違うだろ。トヨタの車に乗って営業回りをするだろ。当然、自社の車が一番いいと売り込みをするのだから……。あっ先に言っておくがトヨタもフェラーリも好きだよ? ハリアーが好みで色は黒がいいかなぁ」
い「メガネっ娘の話はどうした?」
あ「あっ、そうだ、メガネっ娘だ。だからメガネ屋の店員がメガネをかけていないのにメガネの良し悪しがわかるわけがない。だからメガネをかけていない店員など店員として意味をなさない。ゆえにメガネをかけていないメガネ屋の店員はメガネっ娘ではない。なぜならメガネを熟知していないからだ!」
い「語るなぁ。そんなにメガネっ娘が良いのか?」
あ「アホか! 良いも悪いも良いに決まってる!」
い「何を言ってるかよくわからんぞ?」
あ「兎に角良い! 最高だ。メガネの良さは……見た目もさることながら、知性が200%増しに見える!」
い「全部、見た目じゃん」
あ「さらに誰が着けても容姿が+120%になる。さらに外したときに良かったり悪かったりする」
い「悪い時もあるんだ」
あ「当たり前だ。全部が全部肯定的ではない! ダメなモノはダメと認められる大人にならなきゃ」
い「少なくとも、お前は頭が駄目だな」
あ「メガネは容姿をある程度カバーできる。そのことに異論は認めない。そこで重要になることは何だと思う、いーちゃん?」
い「え? 要するに容姿以外でってことだろ? メガネの熟知度?」
あ「いや、それは重要だが、メガネっ娘は須らく熟知しているモノとする」
い「じゃぁ、頭の良さ? あぁ、メガネかけてれば知性がありそうとかそんなのだ!」
あ「惜しい! 頭は頭でも髪形だ!」
い「……なにいってんの、アンタ?」
あ「か・み・が・た……! 髪形だよ! メガネっ娘に似合う髪形! 真っ先に思いつくのは三つ編み。逆に三つ編みであったならメガネをかけるべきだと言ってもいいだろ。むしろ三つ編みなのにメガネをしてないなんて考えられるか!?」
い「考えられるだろ?」
あ「考えられない! それに黒髪ロング。これにもメガネが似あう。大人可愛い感じがする。メガネをはずすときの仕草とか素晴らしいと思わないか? そう、ここで先程の『メガネをはずしてもメガネっ娘論』が生きてくるわけだ」
い「知らんよ、お前の偏向の話は……」
あ「いや、これはメガネっ娘が好きなら議論せざるを得ない議題。髪形無くしてメガネっ娘無し!生徒会長=メガネっ娘。社長秘書=メガネっ娘。そして必ず髪形が重要」
い「分かるような、わかんないような……」
あ「同じメガネっ娘好きとしてはここがわからないと先に進めないだろ!」
い「同じメガネっ娘好きの括りだったんだ、私は!? そっちの方が驚きだよ」
あ「そんな些細なことはどうでもいい。メガネっ娘の髪形についてだが……」
い「些細なこととして扱われた!?」
あ「メガネっ娘で一番合わないと思われがちなのがショートヘアだが、果たしてそうだろうか? 否、セミショートの方が微妙ではなかろうか? 確かにどちらもギャップがあり素晴らしいモノであるが、ギャップ差が大きいのはショートだろ、そうだろ!?」
い「そんなこと私に聞かれましても……。だいたいアンタ、さっきから9割、自己完結してんじゃん」
あ「だって事実だし? それはそうとショートヘアの娘がメガネをたまにかけるとグッとくるわけだ。だがここで矛盾が生まれる」
い「『たまにかける』んじゃメガネを熟知してないじゃん。メガネっ娘じゃないじゃん!」
あ「まさにそこ! 今週の議題はショートヘアの娘がメガネっ娘であるか無いか!」
い「知らねーよ! 初めの前提が間違ってんじゃねーの!」
あ「熟知していないのにメガネっ娘など断じて認められん。ここは大前提だろ」
い「じゃぁレーシック手術は? あれで視力が回復したらメガネいらないだろ?」
あ「それはメガネをかけてないからメガネっ娘じゃない」
い「でも、メガネは熟知してるだろ」
あ「なるほど、痛いところを突いてくる。さすが我が『メガネっ娘』ライバル!」
い「嫌なライバルだな。ライバルとして出来れば外してくれ」
あ「前例でコンタクトを上げたが、あの時は視力が戻っていないということになる。だからメガネを使用する可能性があった。だがレーシック手術の場合は視力が回復するためメガネは不要となる。メガネを熟知していたが忘れていく。だが、この『忘れるまでの期間』がメガネっ娘か否かということなわけだ」
い「あっ、うん、まぁーそうだけど。なんかすげーなお前」
あ「だがレーシック手術をするという時点でメガネっ娘ではないということに気が付いていないようだな」
い「なんか、またよくわからないことを言い出したぞ、このおっさん」
あ「視力が悪いからメガネっ娘なのだ。コンタクトでもメガネっ娘ラインはセーフだ。なぜならレーシック手術などというアクティブな行動をとっていないからだ! アクティブな行動はメガネっ娘に反する行為なのだ。だいたいメガネっ娘の9割は文系でなければならない」
い「1割いるじゃん」
あ「確かに1割のメガネっ娘はアクティブでスポーツ選手系であってもいい。否、あるべきだ。だが、ポニーテールのメガネっ娘はほぼ皆無と言っていい。その数は0.01%以下だ。何故だかわかるか!」
い「えーっと ポニーテールがスポーツ向きだから?」
あ「さすが我がライバル。よくわかってる」
い「いや、お前の言葉に誘導されただけだよ」
あ「ようするにだ、アクティブはメガネっ娘である可能性は0に近いということだ。そして視力を治すだけの手術をするような輩はメガネっ娘ではない! ゆえにレーシック手術をした時点で彼女たちはメガネのことなど覚えていない!」
い「断言するなよ。覚えているかもしれないだろ」
あ「だいたい、伊達メガネはメガネっ娘じゃないんだぞ」
い「それで今 思ったんだが、伊達メガネでメガネを熟知している女の子がいたらそいつはメガネっ娘でいいのか?」
あ「ダメ!! 絶対!」
い「なんでだよ。だってメガネ熟知してメガネかけてるじゃん」
あ「メガネっ娘は仕方なくメガネをかけるからメガネっ娘なんだよ。全然わかってない。お洒落なメガネをかけてメガネっ娘だと! 片腹痛いわ!」
い「いや、片腹痛いって……」
あ「そもそもメガネが何たるか、から話さないといけないのか? 近視と遠視の両方がある。普通は近視、ケント何とかの目が大きくなる方のメガネを使ってるのが遠視、なかには乱視などもある。どれもメガネをつけなければ見づらいという症状がある。だが伊達メガネは只のファッション。メガネの用途を何一つなさない!」
い「ファッションとしての用途をなしているような気がするが?」
あ「それは付属の効果であって用途ではない!」
い「メガネっ娘はその付属の効果で成り立ってんじゃん」
あ「それはコスチュームであって本物のメガネっ娘ではないということだ!」
い「……。また、わけのわからんことを言い出したぞ、このおっさん?」
あ「じゃぁ聞くが、ナースの服を着た一般人と私服を着た看護婦さん。どっちが看護婦さんだ?」
い「私服を着た看護婦さん」
あ「だろ?」
い「いや、さっぱりわからん」
あ「要は能力だ。ナース服を着ているから看護婦さんなわけではない。看護する能力を持っているから看護婦さんなのだ。だからメガネっ娘もメガネを必要としているからメガネっ娘であって、伊達メガネはメガネっ娘じゃないんだよ!」
い「ファッションとして必要としている」
あ「じゃぁなにか! コスプレ看護婦もファッションとして必要としているよな! それは看護婦じゃないよな!」
い「説得力ありそうだけど、なんか間違ってるだろ!」
あ「さすが、メガネっ子好きライバル、すでに底に気づいていたか……」
い「どこだよ!?」
あ「散々『メガネの能力知らずしてメガネっ娘にあらず』と唱えてきたが、実際問題として見た目が十割。『メガネかけていればメガネっ娘』説」
い「いままでの話はなんだったの!?」
あ「その通り『今までの話はなんだったの?』ということだ」
い「機能を知らなきゃメガネっ娘じゃないとか言ってたじゃん!?」
あ「確かにその通り。だが、それは本人しかわからないのだよ。コスプレの看護婦さんは看護婦さんじゃない。だが、俺たちにはそれが『コスプレの看護婦さん風の人』か『本物の看護婦さん』か区別がつかない。そして、メガネっ娘需要こそ見ている側が決めることなのだ」
い「今までの説、全部いらなかったよね!?」
あ「おっっと! それは違うぜ、相棒」
い「相棒じゃないけどな。何が違うんだ?」
あ「確かにこちら側では本物か偽物か判別はできない。できないが、想像は出来る。メガネっ娘とは想像上の人物。ゆえにその設定は我々の想像に委ねられている」
い「いや、メガネっ娘は想像上の人物じゃなくて実在するからな? それにその娘を勝手に想像しちゃダメだろ?」
あ「想像するのは我々の自由だ! 想像の自由を主張する! ただし手を出してはいけない」
い「あってるけど、間違ってるからな、お前」
あ「とにかく、見た目で判断するんだ、この娘が本物のメガネっ娘か否か。そして想像する。メガネに詳しく伊達メガネではないと……そうすることにより、メガネっ娘として完成される。そのために先に説明した髪型の重要性が出てくるわけだ」
い「それっぽい髪型が重要ってやつか?」
あ「よく覚えていな、素晴らしい」
い「嬉しくないけどな」
あ「これでメガネっ娘という存在が大体わかってきたんじゃないか?」
い「大まかにいうと、自分で勝手に想像して理想像に近づける?」
あ「エクセレンッ! 7割方当たりだ!」
い「何で英語?」
あ「ほとんどの場合、能動的にメガネについてこちらが推測することこそメガネっ娘の第一条件である。そこに相手の設定によってより確実なものになる。この際、伊達メガネやメガネに詳しくない場合、メガネっ娘としての質を落とす……ということになる。だから自らメガネっ娘と名乗ることはなく、見ている方がメガネっ娘だと判断するわけだ」
い「なんとなく納得できそうな、出来なそうな話だなぁ」
何人かの通行人がやってきて無駄話をやめて、門番としての仕事をこなす。
また、明日、退屈な日々を過ごすため、くだらないことを視たまま語るのであった。
あ「ぶっちゃけ、メガネっ娘の話でもいいんだけど、明日は髪型について話そうか? あ、まって車のはなしもいいなぁ。それとも銃にする? 武器とかもたまらないよねぇ。素手、格闘技ってーのもあるぞ! 食べ物もいいなぁ、肉汁溢れる小龍包限定で話すか?」
い「お前、よく話すことがいろいろあるな。そんなに駄弁ってると門番すら首になるぞ」




