第一話 オフ会0人
俺の名前は浦川裕平。
31歳だが職歴の無いニートなので親に養ってもらっている。
親からは既に見捨てられていて、二人いる妹からも馬鹿にされている。
現在はゲーム実況等の動画投稿を行い有名になり、収入を得ようと頑張っている。
そんな俺だが遂にオフ会を開催するまでに有名になった。
日取りも決めたし告知動画も投稿した。
コメント欄には参加希望のコメントが数多く投稿されており、最低でも30人は集まりそうだ。
今日はその大切なオフ会当日である。
9時頃に起床し朝食としてパンを1枚食べる。
色々と準備をしている内に開催時間である11時を過ぎてしまった。
レースゲームで鍛えた俺の華麗なドライビングテクニックで目的地へと車を走らせる。
1時間程遅れてしまったがファンなら待っていてくれるだろう。
動画投稿の際に付けているオーバーグラスを装着し併設されている映画館のロビーへと向かう。
目的地へ到着したが、そこには……
──────参加者らしき人物は誰一人として存在していなかった
「おかしいぞ…」
目の前の状況が理解できず俺は混乱した。
チャンネル登録者数は3,000人を越えているし、告知動画の再生数も十分あった。
なにより参加希望のコメントも投稿されていた。
それなのに誰一人としていない。
参加者が遅れているのかと思い、それから1時間程待っていたが
……誰も来なかった。
ずっと立ち尽くしていたせいか足が痛くなってきた為、車に戻り動画を撮影することにした。
30分程動画を撮影していたが、正直心の中では泣きたかった。
何故参加者がいなかったのかを考えてみる。
開催場所が場末のフードコートだったからか?
いや、俺のファンならそんな事は関係無く参加するはずだ。
開催日が平日だったからか?
いや、俺のチャンネルの登録者総は10代が多い。当日は夏休みなので問題無いはずだ。
動画の撮影を終え、最後のもう一度だけ開催場所へ向かおうと決めた。
誰も居なかった場合は素直に帰ろう、そう心に決めて。
もう一度そこに到着したが、──────やはり誰も居なかった。
ふとその時ある事に気が付いた。
OL風の衣装を身に纏った可愛らしい女性が一人佇んでいた。
俺はその女性を見たことがある。
「せ、聖奈さん!」
つい大声で名前を叫んでしまった。
聖奈さんとは俺の好きなゲーム《ノヴィハザ》の登場キャラクターである。
女性も気付いたらしくこちらへと歩み寄って来る。
「貴方が浦川裕平さんですね?」
「ソソソソ……」
見知らぬ女性に話しかけられてシドロモドロな対応をとってしまう。
それにしても可愛らしい人だ。
見つめていると俺の最も男性的な部分に血液が集まっていくのを感じる。
だが相手に悟られてはドン引きされてしまうと思ったため必死に鎮める。
ん?何かおかしい事に気が付いた。
何故この女性は俺の名前を知っていたのだろうか?
「何故俺の名前を…?」
「貴方をお待ちしていました。どうか私の世界を救って下さい。」
「救うって…どういうことだ?」
その瞬間女性からに眩い光が広がっていき俺を飲み込んだ。
俺はその光の中で徐々に意識を失っていった……。