第5話 スキル発動
メリダの村に到着して初めての食事時にそれは起こった。
「なんじゃこりゃあ!」
マイクが僕の作った食事(前世での牛丼の様な物)を食べた途端に大声を上げた。
あまりの声の大きさに周りの冒険者達も注目してくる。
「どうしたのマイク。確かに見た目は悪いけどそんなに不味かった?」
(マリンさん調理した本人の前です。)
「そうじゃない。
美味すぎる。こんなもの今までに食べたことがない!」
マイクは目を輝かせて絶賛してくれた。
「そうか?
昼間に狩ったグタン(牛の様な生物)の肉を煮た物を飯に掛けただけの様だが?」
ルークがマイクへ尋ねた。
「兄貴も食ってみろよ!
確かに俺もライルから飯にこの肉と汁を掛けられた物を(どうぞ)と出された時は「ふざけんな!」と思ったが口に入れた途端にさっきの大声だ」
マイクはグタンで作った牛丼を片手に熱弁した。
二人がそんなやり取りをしている間に僕は器を持ってきたマインさんへ牛丼をよそって手渡した。
「確かに美味しいわね」
手渡された牛丼を食べたマインさんが言った。
すると、他の冒険者も我も我もと牛丼を求められたが、ケイトさんによって仲間以外の冒険者達には1杯銅貨3枚で取引された。(銅貨一枚で約200円相当なので、約600円程の値段です)
「良いんでしょうか?」
僕は大量の銅貨が入った袋を片手にケイトさんへ尋ねた。
「良いの良いの!
皆喜んで支払っているんだから、臨時収入と思って貰っときなさい」
ケイトさんの言う通りに臨時収入と割り切って代金を受け取る事にした。
僕は今回の稼ぎで随行していた商隊から新たに食材を購入すると、今度は大量のシチューを作り、事件によって気力の失った村人達へ無償で提供した。
始めのうちは無気力にシチューを受け取った村人達も一口食べると目に生気を取り戻して行った。
特に子供達は事件のショックを多少和らげることが出来た様だ。
「ライルは優しいな」
マリンさんが僕の隣へ来て話し掛けてきた。
「そうですか?」
「ああ、商隊に随行しているギルド職員へ事情を説明すれば良いのに、自分の稼いだ金で村人へ食事を与えるなんてなかなか出来る事じゃないよ」
マリンさんの発言に(その手がありましたね)と、僕は正直に答えた。
「でも、皆さんが元気になってくれた様なので良かったです」
僕は、自分の作った料理を食べて気力を取り戻しつつある村人達を遠目に見てマリンさんへ答えた。