第30話 動かない飛龍
食事を終えた僕達は、黒狼が発見した 飛龍の住処を目指して行動を開始した。
大森林は人の手が全く入っていない未開の地の為、野生で生きてきた黒狼とは違って僕の歩みが思いの外進めずにいた。
「ところで飛龍の巣まではまだ掛かるのかな?」
僕は前を進む黒狼へ目的地までの距離を尋ねた。
「そうですね。私だけなら数分で辿り着ける距離ですが、ライル様の歩みでは後1時間程掛かると思いますよ」
「了解。
ところで、僕達の進む先がやけに騒がしいんだけど、飛龍に何か動きがあったのかな?」
僕が黒狼へ尋ねると、黒狼は様子を見に先行した。
僕がいままで散々苦労して進んで来た大森林を難無く走り去って行く黒狼に僕は感心する。
(ライル様。飛龍がコボルドの群れに襲われています)
しばらくして黒狼から念話が届いた。
(飛龍の方が襲われている?
・・・・・逆なら判るけど、どうゆうことかな?)
(どうゆう訳か飛龍に動きはありません。
コボルド達は抵抗をしてこない飛龍に休み無く攻撃を続けています)
(いまいち訳が判らないんだけど、飛龍は無事なの?)
(流石に飛龍の堅い鱗に攻撃はほとんど効果が無い様ですが、所々出血して来ているので、このまま飛龍が無抵抗を続ける様ならコボルド達に倒される恐れもあります)
(判った。とにかく急いでそこまで行くから、僕が到着するまでそこで待機。いいね?)
僕は黒狼との念話を切ると、身体強化の魔法を使用して黒狼の待機している場所へ向かった。
身体強化魔法を使用したことで、相変わらず進み辛い大森林の道程だったが、今までの数倍の速度で進む事が出来た。
「お待たせ。それで飛龍の様子はどう?」
僕は黒狼が待機していた場所へ到着すると、現状報告を聞いた。
「とにかく見ての通りです。
コボルド達に幾ら攻撃されても全く反撃しません。
流血している箇所も増えているのに何故無反応なんでしょうか?」
僕は目の前でコボルドの群れに無抵抗に攻撃を受け続けている飛龍を見て、一つだけ考えられる仮定が頭に浮かんだ。
「もしかして、あの飛龍は脱皮しようとしているんじゃないのかな?」
「脱皮ですか?」
「ああ、村でグタンを奪って行ったのも、脱皮する時の力を蓄える為だったんじゃないかな?」
「なるほど。言われてみると辻褄が合いますね。
ではどうしますか?このまま最後まで様子を見ますか?」
「いや、飛龍をコボルドから助けよう。
僕の目的は飛龍を討伐する事じゃなく、テイムする事だからね」
僕は黒狼の問いに初めて今回の目的を伝えた。
「判りました。私としては同族に近いコボルドを相手にするのは若干気が引けますが、ライル様の命令は絶対です」
「悪いね。出来るだけ殺さない様にするけど、相手の出方次第では覚悟を決めて貰うよ」
僕は黒狼へ確認すると飛龍をコボルドから守る為、コボルドの群れへ攻撃を開始した。




