第２８話 害獣？
僕は村に現れた飛龍を確認する為、村人に先導を頼んで現場へ向かった。
実際この村はそんなに大きな規模の村ではないので、村長の家を出た時点で 飛龍の姿は確認出来たのだが、慣れない土地での行動の為、とりあえず現地の人間に案内を頼むことにした。
「あいつがこの村を襲う飛龍です。
俺のところのグタンもあいつに奪われました」
案内役の村人は空中で村人達を威嚇している 飛龍を指して僕へ告げた。
「ですが、こうして見ている限りではあの飛龍から敵意は感じられないのですが・・・」
僕は遠目に見える飛龍の行動を確認して感じたままを村人へ話した。
「敵意がない訳ないでしょう！
敵意がなければなんで村を襲ってグタンを奪って行くと言うのですか！」
「単純に餌を求めて来ているんじゃないですか？
この前の日照りで食料になる動物が減少したから村の家畜を求めてやって来たとは考えられませんか？」
「そんな事俺達にとっては迷惑以外ないじゃないですか！
村に損害を出している以上あいつは害獣です。
あなたは依頼を受けて来たのですから依頼通りあいつを駆除して下さい」
僕の言葉を聞いて、村人はかなり感情的になって抗議してきた。
実際家畜を奪われているのだから当然の反応でもある。
その時、僕のいる場所から数メートル先にある積み上げている木材を固定してあるロープが 飛龍の起こす強風によって千切れ、高く積み上げられていた木材の山が飛龍から逃げて近くを走っていた少女の頭上に崩れ落ちて来た。
【危ない！】
僕が慌てて走りだそうとすると、飛龍がいる方角から聞き慣れない言葉が聞こえてきた。
その声に反応して振り向くと、飛龍の翼が一瞬不自然な動きを見せて、その際に起こった突風が少女の身体を数メートル先へ突き飛ばして少女の命を救った。
少女は多少の傷を負った様だが、あのまま飛龍が何もしなければ少女は多量の木材の下敷きになって確実に死んでいただろう。
「やっぱり！」
僕は村長から話を聞いていて疑問に思っていたことが、今自分の目の前で起きた事実から確信に変わった。
つまり、あの飛龍に敵意や悪意はないということだ。
僕が考えをまとめていると、飛龍は近くにいたグタンを奪って大森林のある方角へ飛び去って行った。
