第25話 下準備 1
僕は今回受注したクエストの準備をする為、ジェイクさんから聞いていた武器屋へ向かった。
相手は飛龍だ。飛龍種の中でも低位に分類されてはいるが、モンスターとしては上位種に当たる龍族だ。
魔法付与があるとはいえ、現在僕の使用している剣では地力が低い為に今回のクエストでは不安があったので、冒険者としての初依頼である今回を契機に新しい剣を新調することにした。
とはいえ王都に来て間もない自分に良い店の情報はない為、冒険者として信頼出来るジェイクさんに事情を説明して店の情報を教えてもらった。
ジェイクさんから聞いた店はすぐに見つける事が出来た。
実際僕は武器の相場が判らない為、元手が足りるかが心配であったが、覚悟を決めて店に入った。
「いらっしゃい」
店に入ると、20代後半ぐらいに見える亜人の女性がカウンターから声を掛けて来た。
「すいません。冒険者ギルドのジェイクさんからここの店を紹介されて来たのですが、店主さんはいらっしゃいますか?」
「はい。私が店主のリザです。
ジェイクさんの紹介ということは貴方も冒険者なのかしら?」
「はい。とはいえ今回初依頼を受けた新米なんですけど」
僕は店主のリザさんに自己紹介をすると、今回店に来た事情を説明した。
「その年齢で冒険者ギルドに入れた事にも驚いたけど、ジェイクさんにこの店を紹介されたということは、貴方随分と期待されているのねぇ。
しかも初依頼で飛龍の討伐を選んだ事にも驚いたわ」
リザさんは僕の説明を聞くと、まずは今まで使っていた剣を見せて欲しいと言ってきたので、僕は父から渡されて今まで使ってきた剣をリザさんに手渡した。
「随分年季の入っている剣ね。
材質は良い物を使って作られているけど、今の貴方には少し小振りかしら」
「そうですね。五年前に父から戴いた物ですから。確かに最近では少し小さく感じていました」
リザさんに指摘された事に僕は正直に答えた。
「この剣自体は良い物よ。手放すのは勿体わね」
リザさんはそう言うと、僕の剣をカウンターに置いた。
「それで今回は貴方にあった剣を買いに来たと聞いたんだけど、生憎今店にある物で君に合う剣はないわね」
「そんな!なんとかなりませんか?
もう依頼は受けてしまっているんです。初依頼なだけにキャンセルなんてしたくありません」
「それなら大丈夫。今は店にないけど新しく剣を作れば良いのよ。
君に合うサイズの剣なら一晩あれば問題無く作れるから安心して」
僕はリザさんの言葉を聞いて心の底から安堵した。
「問題は材質よね。半端な物だと君が今まで使っていた剣のほうが優れているから、今回はミスリルを使用して作成する予定なんだけどその分値が上がるけど大丈夫かしら?」
ここにきて僕が一番不安だった代金の話になった。
当分世話になる武器なだけに多少なら予算をオーバーしても仕方が無いと考えているものの、相場が判らないだけにリザさんがどれほどの額を言い出してくるかが今回の一番の問題だ。
「そうねぇ。ジェイクさんの紹介だし、君の初依頼の御祝儀ってことで金貨2枚で良いよ。本来なら金貨2枚と銀貨5枚は請求するんだけど、今回は特別だかね」
僕はリザさんの提示して来た金額に驚かされたが、同時に聞かされた相場の額を考えて納得した。どうやら僕の今まで使っていた剣の手入れに関しては、新しく剣を作る過程でサービスでやってくれるらしいので本当に感謝した。
「明日のこの時間にまた店に来られるかい?
その頃には君の新しい剣が出来ているからね。代金はその時に払ってくれれば良いよ」
僕はリザさんに感謝の言葉を掛けると、次の目的の店へ向かった。




