第14話 帰還
僕達がメリダの村へ到着してみると、村はもぬけの殻になっていました。
ルークが言うには、僕達を置いて逃亡して行った冒険者達の情報によって、冒険者ギルドの職員と共に残った村人もレイン領の中心街へ避難したのだろうとのことだった。
「とにかく今日はここで一晩休ませて貰うことにしよう。
一応3時間交代で見張りを立てましょう」
ルークは年長者へ提案した。
「そうだな。では始めは俺とラハールで見張りをしよう。
君達はゆっくりと休んでくれ」
「判りました。ではしばらくお願いします」
ルークは年長者へ言うと、村の中心にある村長の家を一晩の宿に選んだ。
今回救出された村娘達も念の為に一緒に行動して貰うことになった。
「次の見張りは俺とマイクに任せて女性陣はゆっくり休んでくれ。
ライルも今日は疲れただろうから見張りはいいからな」
「その代わり明日の朝食は期待してるぜ」
「了解です。ではお言葉に甘えて今日のところはゆっくりと休ませて頂きます」
僕は二人の好意に素直に感謝して、ケイトさん達と共に休ませて貰う事にした。
(前世では16歳だった僕としては、多くの女性に囲まれて就寝することに罪悪感を感じたのだが、女性陣は気にしていない様なので良しとしよう)
翌朝、僕はマイクとの約束を守る為、皆よりも少し早めに起床して朝食の準備を始めた。
「ルークさん。マイクさん。おはようございます」
僕は井戸に水汲みに家から出たところで、見張りをしていた二人へ声を掛けた。
「おはよう。良く眠れたか?」
「はい」
「で、早速朝食の準備か?」
マイクが期待を込めた視線を送って来た。
「ご期待に添える様に頑張りますが、朝食ですから少し軽めになりますからね」
僕はマイクへ言うと、急いで朝食の準備に取り掛かった。
手持ちの食材に不安があったので、村に残っていた物を少し拝借して12人分の朝食を拵えました。
内容はトマトと卵を使用したスクランブルエッグと、自前の鹿肉の燻製を使用した野菜炒めにオニオンスープの三品目を用意出来た。
「こんなものしか用意出来ませんでしたがどうぞ」
僕は皆が揃った事を確認してから言った。
「こんなものなど滅相も無い。
ライル殿は戦闘のみならず料理の腕も大した物ですな」
「うむ。このような状況でこれほどの食事を用意するとは大したものだ」
ラハールさんの台詞に年長者が続けた。
「つくづくライルを連れて来て良かったわ」
「これで 蒼い牙に入団してくれれば言う事ないんだけど」
ケイトさんとマリンさんが期待を込めた視線を僕へ送ってくる。
「それだけは遠慮させて下さい。
僕も皆さんの様に自分の仲間を探そうと思っていますんで」
「本当に勿体ないよな」
「まぁ、ライルの好きにすればいいさ。
ギルドへは俺から後で推薦状を書いておいてやるよ」
「おお!それなら俺からも推薦状を書いておこう。
上手く行けば今年中にもギルドへ加入出来るかもしれんぞ」
「それは本当ですか!ありがとうございます」
ルークに続いて、年長者の申し出に僕は歓喜に震えた。
今回の経験から、今の自分の力量ならある程度冒険者として通用する事が判ったので、出来るだけ早くギルド登録がしたいと思っていただけに、この二人の申し出は有り難かった。
その後、僕達は朝食を済ませると、レイン領の冒険者ギルド支部へ今回の依頼達成の報告にメリダの村を後にした。(村娘達も無人の村へ残して行く事も出来ないので、依頼達成の証人として同行してもらいました。)




