第十五話 魔術 〜sorcery〜
前回の魔軍創成は?
新たな決意
汚物を見る目
モニターに映し出されたのは幻想郷、
魔力の光が煌めき舞い飛ぶ魔法都市。
魔術を扱う者達の聖地、
真理を求める者達の学び舎、
魔法技術の最先端都市、
そんな魔導都市【ケールニイス】に、悪夢は突然やって来る。
最初の異変に気が付いたのは、妖魔の森と呼ばれる禁足地がある方角に勤める見張りだった。
「何かが来る」
漠然とした報告に部隊の長は、上への報告を怠たった。
それが致命傷となり、【時獄門の門番】の接近を許す事になった。
目視で確認出来るまで近ずかれた時には手の施し用が無かった。
「化物だ!怪物がやって来る⁉︎」
最初は黒い点だった怪物が見る間に大きくなり、異変に気付いた時には、10mの壁の櫓と同じ高さの怪物と視線が会う形になる、そんな状態に驚愕を隠せず、そして、絶望した。
魔王が倒され600年、
魔物を一部の地域に追いやり200年、
人間こそ至高の存在だと驕り100年、
ある意味平和を謳歌していた所に突然の災厄の襲来
人々が恐慌状態に陥るのは仕方が無かった。
そんな中、態勢を整え、怪物を迎撃しようと行動する者達がいた。
上位魔導師と魔術師達そして魔法騎士団、魔導都市の守護者達と、悪夢の怪物との戦いが始まる。
モニターに映る様子を固唾を飲んで見守る。
初めこそ【時獄門の門番】が簡単に都市へと侵入し蹂躙を始める、都市の中心部へ届くという所で、異変は起こった。
光が集約し閃光に包まれ大爆発、巨体が仰け反り後ろに大きく下がる。
次に連続で爆発が起き更に押し込める、
都市の外周部へ後退した所に宙を舞う騎士達が現れる。その後は一進一退の攻防を繰り返していた。
「いや〜、うちの子がやんちゃですいません。」
やんちゃの範囲を超えている事に誰もツッコミをいれない中、俺はモニターを見ながら苦笑いしていた。
「いいぞ、そこじゃ、わしを否定した者共をなぎ払うのじゃぁぁ!」
いや、お前を否定した者共は、もう死んでるだろ?
俺の虚しいツッコミは、このじじぃには届かなかった。
「流石、異世界、魔法が使えるんだ、俺も使えるのかなぁ?」
誰に聞くでも無く、つぶやくと、
(『使う為には、大量の魔力が必要です。』)
ナビィが答えてくれた。
(大量ってどのくらい?)
(『わかりやすく説明しますと、
初級魔術:指から玉子ぐらいの火の玉を出す=タンスの角に足の小指を思い切り叩きつけ、爪が剥がれた所に、ジョロキアの汁が掛かる永続痛がおこります。』)
(はい?)
(『続いて、
中級魔術:手の平から大玉スイカ並みの火の玉を出す=全身の骨が砕け散る痛みが襲い、皮膚が溶け神経がむき出しになりそこへジョロキアの汁が掛かる永続痛が続きます。』)
(え〜と?)
(『最後に、
上級魔術:巨大な火の玉が敵の頭上に出現し着弾後に火柱となって焼き尽くす=死ぬ方が生温いと感じるぐらいの激痛が起こり、全身の穴全てにジョロキアの汁が入り込み内と外から痛覚を永遠に刺激し続け』)(どんだけ!ジョロキア推してくんだよ!)
なんなんだ?まったく・・・
(それより、なんでそんな苦痛を伴うんだ!)
(『ゆかりは、この世界の影響を受けにくいです。故にこの世界に影響を与える場合、かなりの魔力を使用します。』)
(あれ?【クラフト】は?)
(『この城が狭間にあり、魔王の加護の力が強い為、使用に制限はありません』)
異世界に来たのに、ド派手な魔法アクションが使えないって、主人公的にどうなんだろうと、俺は遠くを見る事しか出来なかった。
魔術、それは叡智の結晶、
理への道、
魔力を操る偉大な技術、
次回、
枯渇 〜become exhausted〜