回想、そして未来へ
少年は一人歩いていた。
泣いてはいない。涙が出る内は良かった。ただ、あまりに恒常的になりすぎて涙すら
出なくなっていた。
少年は誰もいない家へと帰った。どうやら母は外出中らしい。
少年は淡々と塾への用意をしていた。生きている理由のために。
涼は目を覚ました。昔の夢を見ていたらしい。
それはまるで無限の砂漠にあるオアシスだった。見つける度に立ち寄り、生きるための希望を
補給した。砂漠の商人が水を求めるように。
「若宮・・渚・」涼はそう呟き、再び眠りに落ちた。
塾に着いた少年は数人の女子の中心にいる彼女の姿を認め、遠くから見つめていた。
少年は、同じ学校の生徒は誰一人いないこの安全地帯を壊すまいと、目立たないように。
彼女との唯一の接点は勉強を教える事だった。
勉強以外特にやることのない彼は塾でもかなりできる方だった。
彼女以外の生徒を適当に教え、彼女には1番長い時間をとり、勉強を教える傍らたくさんの話をした。
唯一、彼が彼であれる場所。
しかしその関係も小学校卒業とともに終わった。結局最後まで思いは伝えられなかったが、確かに彼は
彼女に恋をしていた。
今日は三神は休みらしい。仕方ないので1人で登校することにした。
いつもにもましてぼーとして歩いていると彼女の姿が見えた。
俺は思い切って声をかけてみることにした。「おはよう若宮さん。」
彼女は一瞬戸惑い、「おはようございます。水野さん。明日はよろしく」と言った。
「覚えていない・・・よなこれは。」内心がっかりしていた。
淡い期待を打ち砕かれ、涼はその日の授業は何一つ入って来なっかった。
「あれ、俺って結構、詩的な文も書けるんだな」っと自分の新たな面を発見した
思いです。