紅蓮の斬撃
「そういわれれば自己紹介がまだだったわね。水野涼樹。私は桐生玲華。」
「はぁ」
名乗る必要性がないことを感じ、一応「よろしく。」とだけ言っておいた。
「もう一度言うわ。私はあなたと戦いに来た。あなたのEMV能力と。」
EMV能力とはEXTENSIVE MAJIC VIOLATION 広範囲術破壊、涼の能力だ。
ここに来てようやく気づいた。彼女は昨日、俺が助けたあの少女なのだと。
「って助けられた人相手に戦いたいっていうあんたどんな神経してんだよ。」
「余計なお世話ね。まぁ昨日の件はありがと。正直助かったよ。でも・・・手加減しない。」
彼女がスペルを口ずさんだ。すると、淡い炎が彼女の刀身を包んだ。
俺は聞いた事がある。人が魔術を浴びると、その内いくらかを体に取り込み、自分の魔力として吸収するらしい。当然一般人が魔術を浴びれば即死する。よってこれは非常に稀有なケースといえる。
彼女は昨日、俺の魔術を浴びている。昨日のケースもそのひとつだ。
彼女は一直線に俺に突撃してきた。
俺は覚悟を決め、スペルを口ずさんだ。体中が熱く、力が集まる感覚。昨日と同じ感覚。
俺の全身に光が包み、迫りくる斬撃を左手で受け止めようとした。
彼女が放った斬撃が涼の前で減速し、完全に失速した。
そんな斬撃をよけることなど訳なかった。金属が地面をたたく音がする。
「もういいか?」俺は彼女に問うた。彼女は悔しそうに首を縦に振った。
そのときの彼女が見せた表情は一生忘れないだろう。
屈辱、悔しさの他にどこか確信に満ちた不思議な表情だった。
その後、彼女とは一言も話さず洞窟を出た。
涼を待っていたのは彼女・・・ではなく嫉妬にまみれた男達の無言の殺人予告だった。
「ぎゃー」という彼の断末魔は高校の外にまで聞こえたとか。
これからも涼がいい目をする度お仕置きしたいと思っている嫉妬にまみれた作者
です。
正直バトルパートは苦手です。今回もバトルは少なめです。
次回はできれば、新しいヒロインが登場するかもしれません。
確証はないです。あくまで希望です。