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第二の試練

 騎士達は同じタイミングで俺へと迫り、刺突を放つ。


「っと!」


 俺はすかさず足に魔力を集中させ、右へ跳んだ。結果騎士達の剣をかわし、なおかつ壁際に到達して包囲も脱する。

 加え、剣に魔力を込める。雷と氷どちらか一瞬迷ったが――俺は氷を選択した。


 騎士達がこちらに体を向けたと同時に俺は地面に剣を叩きつける。目の前に幾本もの氷柱が出現し、手近にいた騎士へと迫る。


 騎士はそれを回避しようとした――が、氷柱の到来が早く鋭く尖った先端が直撃した。鎧は僅かに抵抗を示したが、魔法により造りだされた氷柱の威力に耐え切れず、鎧は貫通し腹部に大穴を開ける。

 直後、その騎士は黒い塵と化す。俺は一撃で倒せると理解しつつ、今度は右から迫る騎士を知覚した。


 すぐさま方向転換して騎士が放った斬撃を剣で叩き落す。同時に剣に冷気をまとわせ、反撃に転じた。

 騎士は握り締める剣によりそれをガードする。そして両者の剣が交錯した瞬間――騎士の剣が凍り始め、一気に腕から肩に到達する。


 これには騎士も後退する。これで目の前の騎士は戦闘不能に近くなった。できれば倒しておきたかったが、残りの三体が近づいてきており、その対応を優先することにした。


 俺はさらに剣に冷気を加え三体と対峙する。先手を打ってきたのは騎士の中で、扉の前に控えていた奴。横薙ぎによって仕掛け、俺は一撃を剣によって受け流す。

 敵の剣に触れたと氷を力を流し込む――が、その騎士の刀身は僅かに冷気を帯びただけで、それ以上の反応が無かった。


「こいつは――」


 呟きつつ、即座に後退。なおも追いすがる騎士に加え、後続の二体も殺到してくる。


 俺の背後は壁――このまま囲まれれば攻撃を受け続けて敗北すると断じ、再度足に力を込めた。その間も扉の前にいた騎士は追撃を行い、残りの一体はその後方、もう一体が俺の左手から迫ってくる。


 包囲されつつある中――俺は足に力を込め、跳んだ。方向は左。そこにも騎士はいたが、剣を差し向けられる前に横をすり抜けた。

 そして距離を置きつつ、騎士を見据える。包囲しようとしていた三体は俺へ視線を送り駆け始めた。さらに腕が氷漬けとなった一体も、こちらへ向け突き進む。


 対する俺は、騎士達が到達するまでの僅かな時間で、魔力を最大限に引き出す。剣に魔力が収束し、身震いするほどの冷気を生み――地面に一閃した。

 瞬間、氷が地面から騎士達へ向かって土石流のように放出された。騎士達は立ち止まることができず氷の波に飲み込まれ、身動きが取れなくなる。


 だが一体、腕を氷漬けにした騎士だけは難を逃れ、氷を避けるように俺へ走る。


 その動きに、俺は雷の力を剣に注ぎ込んだ。騎士が近づく中俺は雷の矢を生み出し放つと、相手はそれを横に移動し避けた。

 続いて二発目。避けた体勢で多少遅れたか、今度こそ腹部に直撃し消滅する。


「よし……!」


 後は氷漬けとなった騎士達をどうにかするだけ――思った直後、氷の破砕する音が耳に響いた。見ると氷漬けとなっていた一体――扉を背にしていた騎士が自力で氷を破壊している光景が目に入った。


 けれど残る二体の反応は無い。この一事から、ある結論が導き出される。


「見た目は同じだが、あいつだけ能力が高いのか」


 断じると、俺は雷の力を剣に集める。氷を破壊した騎士がこちらに到達する前に――その力を氷へ向かって開放した。

 直後、雷撃が氷の中で暴れ、威力に負けた氷はガラガラと破砕を始めた。それにより氷漬けとなった騎士は消滅。さらに氷も綺麗に破壊され、砕け残った破片もやがて消失していく。


 その中で氷を砕いた騎士は難を逃れ、俺と正面から向かい合っていた。


「さて……」


 剣を構え直し、魔力を収束させる。先ほどのやり取りで小手先の攻撃は通用しないとわかっている。ならば大技で一気に――


 考える間に騎士が走る。こちらが収束し終える前に間合いを詰め、剣を薙いだ。

 俺はすかさず防御し、一度後退。しかし騎士はなおも剣を繰り出し、俺に力を収束させる暇を与えない。


 厄介だ――心の中で呟きつつ、到来した横薙ぎを剣で防ぎ押し返す。それに対し騎士は後ろに下がりつつ、こちらの様子を窺うように剣を構えた。

 合わせるように俺も立ち止まり、睨み合う。ここで、どうするか思案を始める。


 魔力を剣に集中させた途端、騎士は攻勢に出るだろう。大技で逃れられない範囲に攻撃すれば万事解決なのだが、それをさせてくれる暇は与えてくれなさそうだ。


 現在、俺は訓練により一ヶ月前以上に攻撃の幅が増えている。けれど剣に力を収束させるという手順がどうしても必要であり、それにはほんの僅かな隙が生まれてしまう。一つ目の試練におけるモンスターのような攻撃であれば、そのタイムラグはあまり気にならないのだが……今回の様に魔力に応じすぐさま仕掛けてくるような相手には、どうしても後手に回ってしまう。


 勇者レンであれば隙など生まずに戦えると思うのだが――ないものねだりをしても仕方ない。さらに言えば、これなら単純な魔力強化により押し負けないようにした方がいいだろう――結論付け、魔力強化による剣の応酬により戦うことを決める。


 俺は床を蹴り走る。騎士は待ち構えるようで腰を落とした。

 どこまでも人間的な動作――思いながら俺は右からの一撃を放つ。騎士はそれを紙一重で避けつつ、反撃に出た。


 俺はなんとなく刺突が来ると予想し、身を捻る。すると考え通り胸元へ放ったと思われる突きが横を通過する。反応が遅れれば決まっていたかもしれない一撃に、内心ヒヤリとした。


 そこで体勢を戻し、騎士は剣を引き戻す――刹那、無意識の内に剣で体を防御した。なぜそうしたのか一瞬自分でもわからなかったが、次に速攻の一撃が来たことで、体が本能的に察知したのだと理解する。

 俺は多少奇妙なものを感じながら騎士へ剣を放つ。だがそれが捌かれると、ふいに直感した。


 ――次はきっと、右からの斬撃が来る。


 刺突を予想して以後、相手の動きが多少ながら読めるようになった。これが一体何を意味するのかわからなかったが、俺は直感を信じ右からの一撃に備えた。


 騎士は俺の剣を弾いた瞬間、お返しと言わんばかりに剣を振る。それは読み通り、右からの横一閃。

 読んでいた俺はそれを難なく防ぐと――今度は足元へ向けられる一撃――そう頭の中で響いた。


 咄嗟に剣を下に振った。騎士は俺と同じタイミングで仕掛け、刃を予測通り俺の右足へ放つ。

 しかしそれも見事防ぎ、俺は直感した――相手は一度後退する。


 根拠はない――いや、それは間違いなく勇者レンの体に眠る経験が語っていた。


 俺はそれに従い足を前に向けた。同じタイミングで騎士は一歩退き体勢を整えようとする。しかしこちらが間合いを詰めたことによって、目論見はあっけなく潰えた。

 こちらが剣を振ると、騎士は一撃目を防ぎ――俺は瞬間的に足に力を込めた。そして二撃目を放ち騎士が反撃に転じ――直後右に足を伸ばし斜め方向に体を沈めた。


 剣が俺の頭上を通過する。そして騎士は剣を引き戻す前――好機であると悟り、腹部目掛け剣を放った。

 次に起こったのは、鎧に刃が食い込んだ光景。振り抜くと剣は鎧を大きく削り、騎士の動きも僅かに停滞する。


 すかさず体勢を整え連撃。騎士は防御しようとしたようだが、俺の方が早く、刺突が腹部に突き刺さった。

 次の瞬間、騎士の体が崩れ始め――地面に青と金の金属プレートが二枚、落ちた。

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