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試練のあった村

 フィクハの屋敷を後にして、俺達は旅を続ける。次の目的地は、レキイス王国の農村ライメスだ。

 そこで俺達は英雄ザンウィスが作り出した勇者の試練に参加した……思えばあの時試練を受けたからセシルやグレンと知り合えた。振り返るとなんだか奇妙にも思えるのだが――けれど、共に戦って最後は魔王に取り込まれた人も存在する。それを考えると、少しばかり悲しくなる。


「あそこですね」


 リミナが指差す。その方向には以前と変わらない村の姿があった。


 グレンがいるという情報もあるので、できれば再会したい所だが……考える間に村人発見。ザンウィスの孫であるアンのことを尋ねると、家にいるということを聞いた。

 というわけで俺達は家へ向かう。辿り着くと同時に入口で呼び掛けると、中から以前と変わらぬ女性が姿を現した。


「どうも」

「レンさんと、リミナさん……お久しぶりです」


 ――彼女に対してもルールクと同様戦いの詳細を話すことはできない。けれど、どうしてもあの勇者の試練が俺を強くするきっかけとなったことについては伝えたかった。

 迎え入れたアンに、俺は説明を行う。彼女はそれをうんうんと頷きつつ話を聞き……やがて、声を発した。


「そうですか……どのような形であれ、祖父の行ったことが役立ったことを聞けて、嬉しく思います。きっと祖父も喜んでいることでしょう」

「……後でザンウィスさんの墓参りに行きたいと思います」

「是非とも。魔王を倒したあなた方を、祖父は間違いなく歓迎していると思います」


 それからアンといくらか会話を行い、今日一日村に滞在することを約束し家を出る。おの村でやることはそう多くないが、明日には旅を再開することになるだろう。一日だけ、ゆっくりと休ませてもらおう――


「……レン?」


 そこで、俺達に呼び掛ける人物が。視線を転じるとそこには、


「グレン!」

「久しぶりだな」


 アンと同様、前と変わらぬ姿のグレンがいた。


「どうしたんだ? こんな村に?」

「旅の途中で知り合った人たちに挨拶をしているところだよ」

「ああ、そういうことか……しかしわざわざここに来るとは」

「そういうグレンは? フィクハから仕事をしているという話は聞いていたけど」

「この周辺に出現するモンスターを倒して回っている。国の依頼だよ」

「そっか。当分はここを拠点に?」

「そういうことになるだろうな」


 彼も結構大変なようだ……今もモンスターが出現したということで倒しに行き戻ってきたところらしい。


「ナナジア王国の状況はどう?」

「他国とそれほど変わらないな。ただこの国は元々保有している勇者の数などが少ないため、多少ながら四苦八苦している様子だ」

「それでもどうにかやっていると?」

「しわ寄せが私のような人間に来るというわけだ……結構守備範囲が広くて大変だよ」


 そう言って肩をすくめたグレンだが、表情はそれほど暗くない。


「だが、村の人間他噂によって英雄扱いされている……気分としてはそう悪くない」

「信用を落とさないよう注意してくれよ」

「無論だ。そうなったらレンにも悪いからな」


 名声が重荷になるような場合だってあるとは思うが……彼自身そうは思っていない様子。なんだか安心した。

 魔王を倒し平穏となったためか、これまで出会った仲間達も表情は比較的明るかった。グレンもそのようなので、今後とも暗くならないよう頑張ってほしい。


「ところで、レン」

「ん、どうした?」

「旅が終わったらどうするんだ?」

「その質問、幾度となく訊かれたよ……今決めている最中だ」

「そうか」


 ――グレンはもしかすると、この旅が終わったら元の世界に帰るべく動き出すと思っているのかもしれない。

 いや、もしかすると他の仲間達だってそんな風に解釈しているのか……その辺りは結局質問しなかったし、相手から深く訊かれたこともなかったので真意の程はわからないけど。


「次はどこに向かうんだ?」


 グレンから質問が。俺は即座に答える。


「アーガスト王国へ」

「……そういえば、この世界に来てから旅をしたのがアーガスト王国だったか」

「ああ。思えば最初の国だから感慨深くもあるな」


 最初はドラゴンからの依頼に、遺跡調査。さらに王子の護衛……振り返れば遺跡調査の時点で俺はラキとの戦いを決定づけられた。もしあの時ラキと出会っていなければ、彼らの計画が成功していたのかもしれない。

 アーガスト王国が全ての始まりであり、なおかつ俺にとって始まりの場所……旅してきたがいよいよ終着点も近い。リミナに宣言した通りどうするかもきちんと決めておく必要がある。


 それからグレンとは夜再会を祝し宴会でもしようということになり、いったん別れる。で、俺とリミナは田園風景広がる農村を歩く。農作業をする人々を見て、のどかな光景だと癒されたりする。


「アーガスト王国に行ったら、まずどうしますか?」


 リミナから質問。それに俺はしばし考え、


「うーん、そうだな……まずはフェディウス王子に会いに行こうか」

「わかりました。その次にラウニイさんのお店ですね」

「フェディウス王子とは魔王との戦いでも出会っているし、久しぶりという感じがあんまりしないんだけど……」

「あの時は落ち着いて話もできませんでしたし、今度は色々と喋りたいですね」


 確かに……エンスのこともあるし、きちんとした席で話をしたいところだ。

 そこから俺は今後の予定を考える。王子に会いに行った後はラウニイの店なんかを回って……その次は、


「リミナ」

「はい」

「あの最初の村がゴールってことでいいか?」


 マーシャ達とはフィベウス王国で再会したし、俺が魔法によって最初に目覚めたリシュアという農村……そこをゴールとしようと思った。


「はい、いいですよ」


 リミナは了承。というわけでアーガスト王国の首都を訪れた後、そこを終着点とすることにした。


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