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英雄のいる村

 フロディア自身は魔物達の戦いのために色々な場所に駆り出されていたのだが、アクアは村に戻る事となった。で、時折フロディアは村に帰りアクアと共に過ごしていたらしいのだが――


 村に到着。近くの農夫にアクア達に会いに来た旨を告げると、快く迎えてくれた。

 俺達はフロディア達の家へ。そこには、料理の準備をしているアクアの姿があった。


「アクア」

「レンとリミナ……お久しぶり」


 その言葉と共に、俺とリミナは同時に声を出した。


『おめでとうございます』

「……あれ? もう聞いたの?」

「ルルーナから」

「そうなのか。彼女に話したのもつい最近のことなのだけど」


 と、アクアは笑みを浮かべ、


「丁度よかった。二人分の食事も用意するわね。待っていて」






 ――ルルーナから聞いたところによると、アクアは先日妊娠したことがわかったらしい。それを俺達に伝え、俺達は彼女に祝福の言葉をかけたという形。


「といってもまだ初期だからお腹とかは大きくなっていないけど」


 アクアは言う。リミナは体調など大丈夫かと問い掛けたが、アクアは「まだ平気」とのことだった。


「あの、今フロディアさんは?」


 問い掛けると、アクアは「外にいる」と返答。


「丁度帰ってきているから」

「そうなのか。よかった」


 フロディアに会うことについては多少ながら気掛かりだったのだ。少し待っていると外から音がした。帰って来たらしい。


「ただいま……って、レン君と……」

「どうも、フロディアさん」


 リミナが先んじて挨拶。遅れて俺が声を上げると、 フロディアは歓迎の意思を示した。


「よく来た。そういえば戦いの後もあんまり話せなかったな」

「戦いの後、というか戦いの間も魔王達の活動報告を聞いてばっかりだったような」


 俺が言うとフロディアは苦笑と共に「確かに」と同意。席について昼食と食べながら色々と話すことにした。


「ふむ、挨拶回りか……ルルーナ達と出会ったのなら、次はフィベウス王国かな?」

「そういうことになりますね……そういえば、王族の方々に詳細は――」

「騎士ルーティなどが話しているとは思う。私も事情説明についてはドラゴンの騎士に許可を出していたから」

「そうですか……」


 王様達も色々と考えるところがあるだろう……内心複雑だとは思うけれど、仕方がない。


「……ああ、そうだ」


 と、フロディアは突然思いついたような声を上げた。


「私もフィベウス王国まで一緒に行ってもいいかい?」

「どうしたんですか? 急に」

「いや、大きな仕事も終わったところだし、アレスの墓参りでもしようと思ってね」


 墓参り……そうか、英雄アレスはシュウに殺され今もドラゴンの『聖域』で眠っている。その場所を訪れたいということか。


「私やレン君なら許可も下りるだろう」

「そうですね……アクアは?」

「私は遠慮しておくわ。この村を守らないといけないし」

「……大丈夫なのか?」

「私自身が戦えなくとも、色々とやり方はあるの」

「なら、頼むよ。悪いな」


 フロディアは言うと、アクアは首を左右に振る。


「一度、どうしても行っておきたいと言っていたでしょ? レン君が来たのなら、タイミングとしてはいいと思うから」

「留守中は頼む……レン君、いいね?」

「もちろんです……けど」


 と、俺はリミナに視線を向けた。


「そういえば、リミナは入れないんだったな」

「確かドラゴンの血を持っている者は物理的に入れないんでしたっけ」

「そういう場所だ……こればかりはどうしようもないだろうし、俺とフロディアさんで行くしかなさそうだな」

「私は構いませんよ。大変残念ですが」


 というわけで、フィベウス王国まではフロディアも同行することになった。


 それから俺とフロディアは散歩がてら外に出る。周囲は平穏で、フロディアの威光がモンスターなどにも届いていそうな感じだった。


「……正直、私はここまでのことをする人物だとは思っていなかった」


 フロディアが口を開く……俺のことを言っているらしい。


「ここに初めて来た時もこうして話をしたと思うけれど……その時まさか魔王と戦い、全てが終わった後こんな形で会話をするとは想像できなかったよ」

「俺もですよ……というか、魔王と戦ったり大陸の趨勢を決めるような戦いをするとはあの時欠片も思わなかったわけですし」


 もっともあの時、ラキやシュウといった計画の首謀者以外は世界すら巻き込む戦いになるとは想像できなかっただろう。


「確かにそうだね……そういえば、レン君」

「はい」

「君は元の世界に戻ろうとは考えないのかい?」

「その質問は幾度となくされてきましたけど、そもそも戻る方法がない以上どうしようもないんじゃないですか?」

「ふむ、そうか」


 口元に手を当てるフロディア。それに俺は首を傾げる。


「どうしましたか?」

「いや……少し話がいっているかなと思って尋ねてみたまでだ」

「話?」


 何のことだと疑問符を頭の上に浮かべていると、さらにフロディアは告げる。


「現時点でどういう意味かわからないと思うけど……まあ、その辺りのことで少しわかったことがあったから」

「それは……?」

「詳細は調べた本人に聞いた方がいいだろうね」


 はぐらかすフロディア。気になったけれどこれ以上彼自身話すつもりがないようなので、会話を打ち切ることにした。


 それからこの日は村に滞在することになり、一日のんびりと過ごすこととなった。まだまだ色々と挨拶に回りたい人がいるわけだが、決して焦るような旅でもない。以前は少しばかり急いでいたというのもあったが、こういう旅も悪くないと思った。


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