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謎多き戦い

 階段のある部屋を抜け、目の前に出現したのは先ほど交戦したようなモンスター達。俺達はそれを軽く一蹴すると、部屋の全容を確認する。


 明かりがついているのは、魔族達の仕業だろう。エントランスに位置する廊下と同じような内装をしていたが、隅から隅まで明かりによって照らされていたため、雰囲気が違う。


 そして道は真っ直ぐ続いており、なおかつその左右に扉がいくつも見える。どうやらここからは大きな廊下に対し様々な部屋があるらしい。


「扉がたくさんあるけど、どこから入る?」


 セシルは問い掛けながら近くにいたモンスターを一体吹き飛ばす。


「いえ、全部無視して突き進みましょう」


 ロサナは魔法で敵を蹴散らしつつセシルに応じた。


「遺跡内に何かがあるにしても、その場所はきっと奥の方だと思うから」

「根拠は?」

「長年の勘」


 即答だった。それが当てになるのかどうかはわからないが……他に指標もなかったため、俺は決定を下す。


「このまま一気に奥へ!」


 言葉と同時に俺達はモンスターを倒しながら突き進む……足場固めとしてモンスターを倒してもよさそうなものだが、


「ねえ、倒さないの?」


 ノディが周辺の敵を打ち払いながら問い掛ける。返答は、ロサナ。


「敵が生み出しているかもしれないでしょ?」

「あ、そっか」


 言われてみれば……俺は突撃してきた悪魔を倒し、さらに進む。数は多いが今の俺達にとっては単なる雑魚。この調子なら一気にこの廊下を抜けることはできそうだと思いつつ、通路を阻んでいた魔物を倒すと――黒い外套を羽織った男性が、廊下中央に立っているのが見えた。間違いなく魔族だろう。


 さらに後続に同様の面々が……これは面倒なことになりそうだ。


 魔力の多寡を見れば、先ほど遭遇した魔族とそれほど変わらない……セシルは先ほど高位魔族だと言っていたが、風格とかその辺りがどうも違うような気がするのだが――

 考える間にも魔族が迫る。全員が笑みを浮かべ、なおかつ俺達のことなど知らない様子で襲い掛かってくる。


 果たして――俺は警戒しながら剣を振るった。先陣を切ったセシルと共に、最初に突撃をした魔族に相対する。

 相手はそれを魔力を伴った腕で防ぎにかかる……が、先ほどと同様あっさりと腕は両断し、俺とセシルの剣が相手を打ち倒す。またも同じ結末……それを見ても、後続の魔族達は怯まず仕掛けてくる。


 明らかにおかしい……思う間にも魔族が動く。今度の敵は剣を握り攻めてくる。後続は二体で貴族服姿なのだが、それで剣だけ握る様はずいぶんと違和感が残る。


「光よ!」


 そこへ、リミナの魔法が飛ぶ。放たれた魔法がはっきりと魔族一体を貫き――見事消滅。やはり目の前の魔族は相手にならない。


 続いて仕掛けてきた魔族は、セシルが正面から対応する。剣が振り下ろされ、それをセシルは右手――リデスの剣で応じる。金属音が響くと長剣は半ばから砕け、そのまま斬撃が魔族の体を奔った。


 結果、その魔族も消滅。目に見える範囲で魔族の姿は見えなくなったが――


「あっさりしすぎているわね……」


 後方でロサナが言う。彼女の言う通りあまりにあっさりしすぎて、逆に疑ってしまうくらいのもの。


 それに、俺はもう一つ疑問を感じた……以前、選抜試験の時魔族と相対した時、何かしら得意分野があると語っていたはず……けれど目の前に現れた魔族達は何か特殊な力を使ってくる様子はなく、特攻を仕掛けるのみ。


 しかも、格好が画一的でなおかつ俺達の情報を得ている様子がない……雑兵という可能性も十分あったが、明らかにモンスターと違う姿から考え、謎が多い。


「とはいえ……このまま進みましょう」


 ロサナが言う。俺は頷き、疑問を残したままひたすら走る。


 やがて俺達の前に右へ進む角が現れる……扉の類は全て無視しつつ曲がると、またも貴族服姿の魔族。


「雑魚には違いないけど、変だね……」


 ノディが不信感を伴い呟く。内心同意した時、気付いた魔族達が突き進む。


「……ん?」


 そこで、先頭にいたセシルが眉をひそめた。何やら気付いたようだが……後方からも倒しきれていないモンスターが来るため、会話をする暇がない。


 正面の魔族達が走る。さらに廊下の奥から別のモンスターがやってくる……キリがないと思いつつも、俺達は剣を握り交戦する。

 向かってきた魔族に対し、俺は一閃。長剣を握っていたがそれを破壊し、なおかつ一刀両断。見事消滅。


 手応えの無さは、俺達の修行の成果……だけではないだろう。間違いなくこの魔族自体弱いことが関係している。発する魔力はそれなりにも関わらず、能力的には周囲にいるモンスターよりも少し強いくらいなのではないだろうか。


「謎だらけですね……」


 リミナも疑問に思ったか口にする。彼女の言う通り、さらにこの遺跡の謎が深まったといっても過言ではなさそうだった。


 だが、それを考察している暇はない。体力的にはまだまだ余裕ではあるのだが、間髪入れずに敵が襲い掛かる。もしや体力消費が狙いなのかと思いつつ、俺は魔族達と切り結ぶ。さらに進むと同じような魔族がさらに登場し……ここに至り、俺も疑問を感じる。


「何でこいつらは悠長に待ち構えているんだ……?」

「それ、僕も思ったよ」


 セシルが言う。先ほどの呟きはこのことだったのだろう。


 彼の語る通り、俺達が戦っている音は広間を伝わりこの廊下にいる魔族全てに伝わっているはずだ。それにも関わらず戦力を小出しにして俺達にやられているような状況……これは、果たして何を意味するのか?


「とても、高位魔族が行う戦法とは呼べないわね」


 ロサナも評する。お粗末すぎて彼女も不審に思っているようで……それでも魔法を放ち後続から来るモンスターを吹き飛ばす。


「まあいいわ……方針は変えない。もし罠がありそうだったら言うから、突き進んで」

「了解」


 俺は頷き、ひたすら進む。さらに左方向へ曲がると、また同じような魔族。

 顔立ちはよくよく見ると大きく違っているのだが、衣装が全て同じであることに加え代わり映えしない戦法から、全てが同じに見えてしまう。


 それについても大いに違和感を抱きつつ……さらに進撃を重ねる。正直俺達の敵ではなく、全て一撃で倒し、やがて――


 廊下の一番奥、次へ繋がる部屋に到達した。


「まだ下がありそうな雰囲気だけどね」


 セシルは言いながら扉を開く。その奥は……階段。

 敵の姿は無い。俺達はすぐさま入って扉を閉める。打ち漏らしたモンスターもいたが、扉を閉めると追って来なくなった。


「あまりにも不可解な状況ね……どう思う?」


 ロサナが意見を求める。俺達は一様に沈黙し、答えを出せずにいる。


「個人的な感想だけど、私はこれが魔王側の仕業だと疑うくらい。かといってシュウ達がこんなことをする理由はないし……」

「何か理由があるんでしょうけれど、ね」


 俺は言いながら肩を軽く回す。体力的にはまだまだ余裕。正直先ほどまでの戦いが続いたとしても、大した労力にはならない。


「……どちらにせよ、進むしかありませんよね」


 リミナが言う。ロサナもそれに渋々頷き、残る俺達も無言で頷くしかなかった。

 謎を多く抱えたまま、俺達はさらに階下へ足を伸ばそうと動く。一体、この遺跡最奥には何があるのか……心の中で呟いた時、


「……あれ?」


 突如、ノディが声を上げた。


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