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懐かしい人物と、場所

 翌日、フロディアにメンバーを報告すると、遺跡調査の面々はすぐに出立して欲しいとのことだった。

 なので、俺とリミナとロサナ……そしてセシルとノディは準備を済ませフロディアと共にベルファトラスの城へと向かった。


「そういえば、こっちに行くのは初めてだな」

「今更、という感じだよね」


 セシルが言う。その声はどこか呆れたもの。


「ほら、王様には既に会っているだろ? だから行く必要あんまりないような気もするんだよね。なおかつ覇者にあまり干渉しようとしないし」

「そうだな……セシルも会ったのか?」

「僕も統一と頭にはつかないけど、覇者になったからね」

「勇者様、王様と会ったことが?」


 リミナが質問。疑問に及ぶのは当然だよなと思いつつ……答えは、フロディアが提示した。


「君達になら説明してもいいか。えっと、闘技大会で実況していた人がいただろ? あの人実は王様なんだよ」

「……は!?」


 ノディが反応。リミナも声には出さなかったがびっくりした表情を見せる。


 当然だろう……俺だって直接会って始め信じられなかったし。


「まあ、実況をやるのは王様が単にモノ好きってだけだからさして気にしなくていい……で、彼は大会の決勝戦進出者に正体をバラすのさ……ただ今日城に行くのは王様に会いに行くわけじゃない。そこにある転移装置を使ってアーガスト王国へ行く」

「ああ、そういうことですか」

「で、その場所には出迎える人物がいる」

「出迎え?」


 聞き返した俺に対し……フロディアは小さく笑みを浮かべる。


「ああ……なんでも、レン君やリミナさんと知り合いだそうだよ」






 そして出会った人物は、俺にとってひどく懐かしいと思える人物だった。


「フェディウス王子……!」

「お久しぶりです」


 騎士のルファーツを後方に伴い――俺はベルファトラス城門付近でフェディウス王子と再会した。格好は装飾もあまりない貴族服。


「色々とお話を聞き、いてもたってもいられなくなり馳せ参じた次第です……試合、見ておりました」

「ああ、どうも……」


 そう言われるとなんだか照れくさい。それにフェディウスは笑みを浮かべ、


「あなたのご高名はしかと聞き及んでいた次第ですが……あの時からさらに、見違えるように強くなられたようで」

「……まだまだだと思いますけどね」

「謙遜ですね。統一闘技大会に優勝した程なのに」

「技量については、改善の余地はまだありますから」


 俺の言葉にフェディウスは感心した様子を示しつつ……言及はせず、本題に入る。


「それで、私は案内役を仰せつかっております……転移魔法を使用する場合、国の関係者の同行が必須となっておりますので」

「そうなんですか……ありがとうございます」


 俺が言うとフェディウスは再度笑みを浮かべ……今度はリミナに視線を移す。


「そちらも、強くなられたようで……もうアーガスト王国の騎士では相手にならないでしょうね」


 リミナは何も答えず首を垂れる。少しだけ沈黙が生じ――少ししてまたもフェディウス王子が口を開く。


「さて、早速ですが行きましょう……ご案内します」


 ルファーツが車椅子を動かし始める。俺達は追随し、城の中でも地下へと向かっていく。

 階段とかどうするつもりなのかと思ったのだが、フェディウス王子は詠唱魔法により車椅子を浮かせた。中々面白い光景だと思いつつ地下へ到達し、広間に出た。


 中央に大きい円形の台座。そこに、複雑な紋様の陣が描かれている。


「忘れ物はないかい? 当分戻ってこれないと思うけど」


 フロディアが念のために訊く。俺達は何も答えないでいると、彼は大きく頷いた。


「よし、ではフェディウス王子」

「はい……こちらに」


 陣の中央へ。俺達もそれに従い陣の中へ入ると、足元の紋様が発光する。

 俺はフェディウスの横に立ち、事の推移を見守ることにする。やがて光が室内を照らし始め――


「――起動」


 フェディウスが呟いた瞬間、転移魔法が発動。リミナが行うよりも非常にスムーズで、かつ瞬きをした次の瞬間そこは別の場所になっていた。

 内装はほとんど変わらない部屋だったが、正面に通路がない。背後に振り返ると、そこに出口が。


「到着しました。それでは行きましょう」


 フェディウスが先導。俺はそれに追随し、上へ。


 やがて到達したのは、城の廊下。見慣れない場所だったが……少し歩くと大きな通路に出た。左右を見回すと、右側に玉座へと通じる大扉があった。

 それには見覚えがあった。最初の依頼を終え訪れた城の玉座へ通じる扉。


「こちらに」


 フェディウスは左へと動く。俺達は無言で移動を重ね――やがて、外に出た。

 そこは、以前謁見を終え見た光景そのもの――以前と異なるのは、街の中にある木々が要所要所で紅葉していることだ。


「転移魔法が使えるのはここまでです。馬などは用意していますから、今後はそれらで移動を重ね、目的地へ向かってください。現地では騎士なども動いていますので、彼らと連携も行っていただければ」

「ありがとう」


 フロディアが礼を告げると、フェディウスは小さく頷き、最後に俺を見た。


「……勇者レン様。これからの戦い、お気をつけて」

「はい」


 返事をした俺にフェディウスはこちらを信頼する眼差しを一時見せた後……ルファーツが車椅子を返し、城内へと入った。


「懐かしいですね」


 二人が去った後、リミナが言う。俺は小さく頷き、言葉を漏らす。


「最初ここに来た時は、非現実的な世界だと思ったよ」

「ここに来たのは、この世界を訪れて二日目でしたからね」

「そういうこと……フロディアさん、今後はどうすれば?」

「私も現地までは随伴するが、魔法使いと連携し君達の援護をすることになると思う。遺跡の調査は、レン君達に頼んだ」

「任せなさい」


 ロサナが言う。それにフロディアは「頼む」と告げ、


「さて、遺跡への入口だが……場所は、あの場所を守護していたドラゴンの暮らす場所だったそうだ。それ以上の情報はないため、まずはそこへ赴き調べないと」


 ということは、あれか……以前辿った道を俺はまた進むことになるのか。なんだか奇妙だと思い、リミナも同じなのか複雑な表情をしていた。


「その場所に赴き、もし封印が解けかけているなら、進入して調べて欲しい」

「結界が弱まっているのは、火山のせいだと考えてもいいのよね?」


 ロサナが問う。フロディアは首肯し、


「土地の魔力を利用している以上、その土地に変化が起きた結果、魔法が弱まったと考えるのが自然だろう」

「もし噴火したらどうする?」

「活動が始まってそれほど経っていないし、識者も当面大丈夫だとは言っていたけど……そうなっても対応できるよう、私が処置をしておく」


 だから残るというわけか……まあフロディアの援護ありとわかれば、俺達も安心して活動できるのは間違いない。


「状況は理解できたようだから早速移動を開始しよう……馬を使うわけだが、できれば明日中には山に到達しておきたいところだな」


 彼は言葉と共に歩き出す。ロサナやセシルが後に続き、ノディやリミナもその後ろに……そして俺はふと、再度街を見回した。


 ここから、色々と始まったと思っても過言ではない……感慨にふけるのは全てが解決してからだとは思うけど、見覚えのある景色に遭遇し、なんだか変な気持ちとなる。


「……勇者様?」


 リミナが立ち止まっている俺に気付く。こちらは「ごめん」と返答し、歩き出した。




 そして俺達は馬による移動を開始する……道中は何一つ障害もなく、モンスターと出会うこともなく山へと到達することになった。


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