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騎士達の見解

「……よくよく考えると、俺が行くのはまずくないのか?」


 別室へ向かおうとしている途中で、俺は前を歩くカインへ尋ねた。


「仮にフレッドがシュウさんと関わりがあるとして……俺が登場した時点で、逃げられる可能性もあるんじゃないか?」

「そういうことを確かめる意味合いもある」


 対するカインの言葉は明瞭だった。


「そもそも相手はどういう意図でフレッドという人物に魔族の力を授けたのかもわからない……根本的な話として、本当にシュウが関わっているのかも不明である以上、レンが接触しどういう反応をするか、という点を見る目的もある」

「それって……逃げられた場合はシュウなんかの手先ということで間違いないと?」

「詳しくは本人を捕らえてからだが……逃げたとすれば、近くにフレッドを誘導する存在もいることだろう。それらをまとめて捕らえれば、情報を多く得ることができる」


 ……一度は納得したのだが、ずいぶん場当たりな作戦のような気がする。それはフィクハも同じ見解のようで、今度は俺に代わってカインへ質問した。


「ずいぶんとせわしない作戦ね。それに、フレッドという人物を捕らえない限り推測以上のことはできず真相は闇の中……もう少し慎重にした方がいいんじゃない?」

「確かにそうだが、モタモタしていては逃げられてしまうだろう……現状、レン無しでは誘い出すのも難しく捕縛できる可能性の方が低い上、騎士や兵士を使うのも内通者のこともあり無理。さらに言えば、闘技大会において混乱が生じる危険性もあるため、できるだけ内密に行いたい」

「つまり、捕縛できる可能性が一番高い手を使っただけだと」

「そういうことだ」


 俺の言葉にカインは首肯。取れる選択の中で、俺がフレッドに接触することが捕縛できる可能性が高い、というわけだ。


「無論、レン達が動くことで敵が警戒するのは予測済みだ。それらを考慮し、信頼における少数の騎士達が動き、街の状況を監視している……とはいえ、今はあくまでフレッドが来る可能性がある場所を把握しているだけ。現れなければ事前に察知した可能性もあるため、無駄足になる……とはいえここで様子見などしていては、さらに捕縛できる可能性がなくなる」


 そう断じたカインは、俺達へ一度首を振り向けた後、続けた。


「おそらくシュウには、こちらの情報が筒抜けだろう……どういう内通者がいるのかわからない状況であるし、何より調べる暇もない。だからこそ今回、フロディアの独断専行でこの作戦を行うことにした」

「そういうことか……俺も気になっていたから協力はするけど、危なそうになったら退くよ」

「構わない。元々街で騒動を起こすようなことはこちらも望んでいない」


 言った直後、彼はふいに立ち止まる。目の前には扉。到着だ。


「入るぞ」


 カインは中へ告げると、先導して入室。相次いで俺とフィクハが入室すると……そこには、傭兵姿のジオとルーティがいた。


 声を掛ける前に俺は二人の容姿を確認。ジオは茶褐色の革鎧姿に加え、髪色が銀ではなく黒に変化している。おそらく魔法か何かで変化させているのだろうと適当に推察しつつ、今度はルーティを確認。

 彼女の場合は赤に近い色合いをした革鎧……なのだが、髪に大きく変化があった。彼女はジオと同様長髪だったはずなのだが、バッサリと切られ肩に掛かる程度となっている。


「……ルーティさん」

「願掛けみたいなものだったから切ったまでです」


 俺の言葉に彼女はそう返答。口上からすると、リミナに負けたから切った、ということなのか?


「髪を切らずにいると負けない……というおまじないみたいなものを他の騎士から教えられ実践していただけです。今回見事リミナさんに負けたので」

「はあ……そうですか」


 どう対応していいか迷いつつも……本筋からは外れるのでそれ以上の言及は控え、カインへ話を振った。


「えっと、この四人で行動すると?」

「そうだ」

「……フィクハ殿が来るという話は聞いていないが」


 ジオの言葉。それに対して指摘された本人が手を上げる。


「シュウさんを追うということで、こちらもレン以外に参加させて欲しかったのと、こういう時のための魔法がある」

「……それは?」

「気配探知系の魔法。怪しい奴がいたらすぐに言えるということで」

「わかった。それでは行くとしようか。とはいえ、まずは打ち合わせからだ」


 ジオが宣言すると、移動を始める――降って湧いた騒動だが、俺としては気になっていた事柄名だけに、気を引き締めつつ部屋を出た。





 その後、話し合いによって捕縛手順を色々と相談してから……闘技場を出た。

 フレッドが訪れているという場所は、大通りから路地を数本曲がった先にある、小奇麗な飲食店。

 外観もそれなりかつ人通りも少ないせいか隠れた名店のような佇まいを見せている建物で、このメンバーの中でフィクハが感嘆の声を上げた。


「フレッドっていう人、結構いい趣味しているんじゃない?」

「……ちなみにジオさん。なぜフレッドがこの店にいると?」

「発見したのは偶然だ。たまたま騎士の中でここに通っている人間がいて、闘技場で戦っていた彼を思い出し報告した、ということだ」

「彼もずいぶん大胆よね。闘技場内から逃げたと思ったら、まだこんなところで呑気に食事しているのだから」


 フィクハがコメント。それに俺は「そうだな」と同意しつつ、


「本人が来たら、その辺りの事情も訊けばいいさ……昼に近い時刻だし、タイミング的にもバッチリかな」


 というわけで店へ入る。中は外観同様綺麗な内装であり、魔法に光よって室内もずいぶん明るい。


「いらっしゃいませ」


 さらにウエイトレスがこちらに近づいてくる……元の世界にあるファミレスをなんとなく想起させる雰囲気。


「四人なんですけど」

「では、こちらへ」


 彼女は俺の言葉に対しにこやかに応じると、席へと案内する。偶然にも窓際で、外の様子が見える。これはラッキーだ。

 四人掛けのテーブルにフィクハと隣り合って座ると、周囲に視線を巡らせる。闘士らしき人物が会話をしている姿も見えた。俺達の身なりは傭兵そのものだが、どうやらこの場にとって悪目立ちするような格好ではなさそうだ。


「後は待つだけだが……ここからは運だな」


 ジオが言う――そこで俺は、フィクハに問い掛ける。


「……気配とかは?」

「私の魔法には引っ掛からない」


 フィクハは既に魔法を使用済み……話によると、一定の範囲内における人々の魔力量を捕捉できるらしい。

 その中で怪しい存在がいればすぐに報告――とはいえ、力を隠している魔族なんかにどこまで通用するかは、俺としても半信半疑だが。


「……彼が来る前に、一つ訊きたいことが」


 時間がありそうだったので、俺は対面に座るジオに問い掛ける。


「今回のフレッドに関する件……城側はどう考えているんですか?」

「今の所どうとも言えない、というのが実情だ。彼が使用したのは紛れもなく魔の力に属するものだが……例えば、彼の言う師から魔族の力を引き出す道具の使い方を教えてもらっただけに過ぎないかもしれないし、事情は知らないながらシュウ達と協力しているのかもしれない」

「それを解明するために、こうして作戦を実行するというわけか……それでは、二人はどう考えていますか?」

「私は、何も知らないという線が濃厚だと思う」


 ジオが言う。その目はどこか確信に満ちたもの。


「事情を全て把握しているのなら、城の者に見つかるような行動はしないだろうからな。私の見解としては、ただ力を与えられているだけ……力を与えた存在の目的は、実験かもしれない」

「シュウさんであればその線も十分考えられるますね……ルーティさんも?」

「はい。騎士ジオと同様――」


 答えた瞬間、フィクハが突如手で制した。

 何事かと思った時――俺は気付く。


 店の入り口にフレッドがいて――今まさに店に入ろうとしている光景が目に入った。


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