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合流する面々

 道すがら、俺達はナーゲンとルルーナにミーシャに関する事情を説明する。


「――ということなんですけど」

「ふむ、魔族か……アークシェイドと組んでいた者がいる以上、いつかは出てくると思っていたが」


 ルルーナは呟きつつも、小さく肩をすくめた。


「だが、シュウの方から出てくるとは……まあいい、ともかく彼女がそうであり擬態を使って潜入していたという事実は、記憶に留めておこう――」


 発言した時、またも闇夜を斬り裂く竜の声。ただし断末魔のようだった。


「……残っている敵はおそらく、フロディア達の所にいるのだろう。ナーゲン、そこにはどれだけ人が残っている?」

「フロディアにアクア。そして騎士団の中の精鋭……ジオもそこにいる」


 ジオ――また新しい名前が出てきた。彼が言う以上、壁を超えた騎士なのだろう。

 現在、ゼノンやノディと出会っているため、少なくとも騎士団の中に三人は壁を超える人物がいるということ……今まで多少なりとも騎士と関わってきたが、ここで一挙に現れたというのは、それだけルファイズ王国の力が強いという意味なのだろうか。


「何か訊きたそうだね?」


 ナーゲンが俺に向いて尋ねてくる。顔から思考しているのを察したらしい。


「……ルファイズ王国騎士団で、壁を超えている人物はどのくらいいるんですか?」

「ノディ、説明してやって」

「全部で、十人くらいかなぁ」


 それは多いのだろうか、少ないのだろうか。


「その内、今回ここに来たのは選りすぐられた人だけというわけ」


 と、彼女は胸を張る。


「一応補足しておくと、魔族に対する対抗手段のため、壁を超える技術を騎士に教えている」


 そこでナーゲンの解説。俺はそちらに目を移し、話を聞き続ける。


「現在、シュウが敵となったということで壁を超える技術を早急に身につける必要があるのだけど……極端な話、この技術は魔族に襲われるなどしない限り必要ないものと言える。それに、あったらあったで厄介な話になる可能性が高い」

「厄介、とは?」


 リミナが訊く。それにナーゲンは苦笑しながら返答した。


「現状がまさにそうだけど、壁を超える技術を悪用されたら、戦える人数が非常に少なくなってしまう」


 あ、そうか。持っているだけで勇者や戦士達に有意となる……そういう技術は、敵に回すと厄介なわけだ。


「だからこそ、私を始め技術を教える人達は選定を行っている……その中でルファイズ王国は、積極的に技術を教える部類かな。魔王との戦いにおいてもこの国は大いに反抗した。実際に魔王を倒したのは英雄アレス達だが、人間側の反撃の口火を切ったのは、ルファイズ王国の奮闘ぶりがあったからこそ」

「といっても、精々十人だ……今後は、少し無理をしてでも増やさなければならないだろう」


 そこへルルーナの言葉。ナーゲンは当然とばかりに頷いた。


「さっきも言った通り、敵になってしまうと非常に厄介だし、厳選する必要があるけどね――」


 彼がそこまで述べた時、真正面から咆哮が聞こえた。視線を送ると闇の中に竜が轟く姿を捉え、同時に金属音や爆音が生まれる。


「際限なく出現しているみたいだな」


 マクロイドは呟くと同時に、好戦的な笑みを浮かべた。


「ま、土地の魔力と結びついているから、仕方ないか」

「それって、終わりがないってことでは……」

「なに弱気になってんだ、レン。心配すんなって」


 語るマクロイドは心強いが……不安は拭えない。


「少しは警戒しろ、マクロイド。シュウがあそこにいる可能性もあるんだぞ」


 懸念を抱いたか、ルルーナが口を挟む。しかし彼は小さく肩をすくめ、


「シュウがあの場所にいたら、もっと混乱しているはずだろ?」

「聖剣を奪うべく機を窺っているだけかもしれん」

「だとしたら、移動中に狙うはずだ。それが起こっていないということは、あの場にシュウはいないと言えるんじゃないのか?」

「確かにそうだが――」


 ふいに、ルルーナが言葉を止める。そして進行方向に目を移し、凝視。

 その動作にマクロイドが訝しんだ。


「どうした?」

「……今、最悪の可能性を思いついた」

「最悪だと?」

「もし……もしだ。あの中にシュウが擬態魔法を使って潜入しているとしたら――」


 直後、軽快な破裂音が響く。それによるものなのか、竜が宙に浮く光景を目に留める。


「は……?」


 浮いたというより、吹き飛ばされたと言った方が良いのだろうか――冷静に眺めていると、その巨体が俺達に近づき、


「相変わらず見境ないね、彼女は」


 ナーゲンは零し、腰にある剣の柄に手をかけ、抜くと同時に一閃した。

 刹那、刀身から剣風が生じそれが竜へ直撃。結果、再生することなく竜は消えた。


「アクアの仕業か」


 マクロイドが断定する。アクアの……?

 俺は前方に目を凝らす。近付くにつれ、まだ竜が存在しているのを確認。さらに心許ない明かりの下で交戦している面々がはっきりと見えた。


 その中で一際目立っていたのがアクア――彼女は白く簡素なローブに身を包み、一人で竜と相対していた。傍らには悪魔。竜が先行し、彼女へ向け突撃を行う。

 アクアはそれに一切動じず、ただ目の前にいる竜へ接近。そして巨体へ手のひらをかざした。おそらく、掌底ではないだろうか。


 直後、竜が吹き飛ぶ。その巨体が宙に浮き、咆哮を上げながら消滅する……引退しても、その技量は衰えず、といったところか。


「あいつ、戦いだすと周りが見えなくなるからな。俺達のこと、気付いていないんじゃないか?」


 嘆息しつつマクロイドは言う。それを聞きつつ俺はなおも観察を続行。すると、別の場所にいる竜が、悪魔と共に消滅する姿が見えた。

 そちらにいるのは騎士数人……聖剣警護のための精鋭なのだろう。竜に一切怖気づくこともなく淡々と相対し、その内の一人が悪魔へ接近し撃破した。


 けれど竜はまだ一体残っている。それは騎士達へ接近し、口を大きく開けた。対する騎士――悪魔を倒した人物は剣を構え直し、他の面々は後退する。

 大丈夫なのか――じっと見ていると炎が騎士へ向け放たれた。刹那、騎士はすくい上げるような剣戟を放つ。それが鋭い刃となって炎を押しのけ、頭部に到達した。


 消失する竜の頭部。けれどすぐさま再生しようとして――騎士が攻撃する。剣先から銀色の刃が生まれ、竜の四肢に降り注いだ。


「あれが、ジオだ」


 マクロイドが騎士を指差しながら告げる。ジオ――壁を超える騎士か。

 考える間に竜がズタズタになり、動きが止まる。けれどすぐさま再生を始め、ジオは動いた。動かない竜を無視し、後方にいる悪魔へ接近する。


 そして彼は間合いを詰め、一閃。悪魔は防御したようだったが効果なく、消滅した。


「終わったようだし、行こうか」


 ナーゲンが悠然と告げ、先んじて歩き出す。残る俺達もそれに続き、アクア達のいる場所まで近寄っていく。途中、彼らのいる周辺を改めて観察。山頂と同じく天幕を使って囲んだ陣地のようだった。


「レン殿」


 途中で、ルルーナから呼び掛けられる。


「裏切者がいないかどうか、チェックを頼む」

「はい……それで、さっき何か言い掛けていませんでしたか?」

「その辺りの説明は後でしよう。フロディア達の意見も訊きたいからな」


 語る表情は、深刻なもの。俺は気になったが、すぐに話は聞けるだろうと思い「わかりました」と答えた。

 そうして陣地へ近づいていく。その中で、二人――アクアとジオが、俺達に気付き近寄ってきた。


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