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最前線へ

 その後、ロノ達と合流。彼らはアリックと共に退却した戦士と交戦し、勝利していた。


「これで、森にいた人物達は撃退したな」


 ライラはまとめ、残っているメンバーを一瞥する。

 戦士が二人やられたので、残りは俺とライラにロノ。そして戦士二人。


「よし、では先に進むぞ」


 ライラが告げた所で、どこからか鬨の声が聞こえた。


「む、まずいな。戦闘が始まったかもしれない」


 ライラは言うとすぐさま進路方向へ足を踏み出す。


「急ぐぞ」


 ――彼女の指示の下、俺達は無言で移動を再開。とはいえ障害はなくなったため、容易く森の出口まで辿り着いた。

 茂みからそっと草原を覗くと、やや遠くに戦士達が向かい合って武器を構える姿があった。その中で多少戦闘があったのか、後方へ引き下がる人物もいた。


「一度衝突し、双方が退いたようだな」


 ライラは分析すると、ロノへ目を向けた。


「よし、作戦に入るぞ。ロノ」

「はい。任せて下さい」


 言うと、彼は速やかに詠唱を始めた。加えて両手を地面につけ、手の先に僅かだが魔力が溢れる。


「これは……」

「魔力を流す行為と、溜める行為の複合だ」


 俺の呟きにライラが反応した。


「ロノは今から地面に干渉して魔法を使用する……今ロノは魔力を地面に流し、溜めている。そこから地面の魔力と彼自身の魔力を強く結び付ける。それによって、大地の魔力を魔法により操ることができる」

「とすると、戦士団が立っている場所を……」

「そうだ。あの場所全体を魔法により強襲する」


 なるほど。それならインパクトがありそうだな。


「そんな技法ができるということは、彼はかなりの術者なんだろうな」

「規模の大きさを考えれば、彼の力は戦士団の中でも随一だろう。ただ、致命的な欠点があるから普段は使えない」

「欠点?」

「大地の魔力に干渉するためには、その土地の魔力を解析する必要がある。籠城するなど一定の場所で戦うには良い魔法だが、基本戦地を転々とする私達にとってはあまり使えない。今回は、事前にこの場所に赴いていたため調査が済んでいるだけのことだ」


 語りながら、ライラはロノを一瞥する。


「本来なら宮廷の魔法使いをやるのが良いのだろうが……彼は、色々と事情がありこの戦士団にいるというわけだ」


 深くは言わなかったが、なんとなく重い理由があるのだろうと察せられた。


「そうか。説明ありがとう」

「どういたしまして……ん?」


 そこで、ライラは布陣する戦士団を見て眉をひそめる。合わせて俺も観察すると、周囲を警戒する戦士の姿が幾人も見えた。


「気付かれたか」

「気付かれた……?」

「土地に干渉する以上、魔力の流れも変わる。そのため魔力探知に優れている者は気付く。まあ、これは予測の範囲内だ。心配ない」


 説明を加えた後、ライラは一度深呼吸をした。


「先ほどアリック達は、国の者が見学に来ていると言っていた。だからこそ彼らは潰走などせず、魔法により混乱しようとも戦うことになるだろう」

「……国の人の存在は、重要なのか?」

「一番の顧客だからな。カイン殿が率いる戦士団である以上、魔石はく奪なんてことは無いと思うが、あまりにふざけていると罰せられるかもしれない」

「……魔石?」


 聞き返す。するとライラは「説明する」と告げた。


「昨夜、私は宝石箱を持っていただろう? あの中に入っている……非常に純度の高い魔石だ」

「それに何の意味が?」

「戦士団にも階級があって、良い戦士団だと認められた場合称号として純度の高い魔石が送られる。無論、私達や相手である銀の獅子団は最高ランクに位置しているのだが……」


 と、ライラは嘆息一つ。


「その権威が他の団員に届いているかと言えば……疑問だな。時折、騒動になることもある」


 彼女の言葉に二人の戦士が苦笑する。自覚はあるようだ。


「……無駄話はこれくらいにしよう」


 どこか諦めた表情を伴い、ライラは話を締め――その時、敵の戦士団が大きく動き始める。


「直にこちらへ向かってくる手勢が現れるはずだ。とはいえ、こちらは――」

「終わりました」


 ロノが言う。ライラはそこで小さく笑った。


「よし、ロノ……攻撃開始だ!」

「はい!」


 言葉と共に、彼は一度両手を振り上げ――地面に叩きつけた。


「目覚めよ――古の地脈!」


 瞬間、彼の両手が淡く発光した。かと思うと光は地面に飲み込まれる――


「発動するぞ」


 ライラが言う。同時に魔力が周囲を包み、戦士団のいる方向から破砕音が聞こえ始めた。


「始まったな」

「……そういえば、どんな魔法なんだ?」

「地面を隆起させる効果のある魔法だ。威力自体はほとんどない……しかし、地形変化や突然の攻撃により相手の陣地はが混乱する。とはいえ――」


 ライラは前方を見据えながら、さらに続ける。


「相手はカイン殿が率いている戦士団だ。混乱も長くは続かないだろう」


 そこで、鬨の声が耳に届く。視線を向けると、味方側の陣営が一気に畳み掛けようとしていた。


「動き出したな……よし、二人はロノの護衛を頼む。ロノ、しばらく攻撃を続けてくれ」

「わかっています」

「ではレン殿。私達は彼らの援護に入ることにしよう」

「わかった」


 即座に承諾する俺。これで作戦は成功……しかし、任務もあるのでまだ半分といったところか。

 ライラが先んじて森から出る。それに俺が続き、並んで戦場へと駆け始める。


「ここからは乱戦になる。おそらく私も指示は出せなくなるぞ」

「わかった……上手く立ち回れることだけ祈っておいてくれ


 ライラの言葉に応じると、彼女は小さく頷く。

 同時に、好都合だと思った。一人になれるのならばカインを探すことも容易だ。これなら作戦は成功したも同然――いや、まだどう書状を受け渡すか考えないといけない。


 俺はそこで前方を注視。戦士団同士が衝突し、戦闘が始まっている。戦いは魔法のこともあるためこちら側が押している……が、相手側も逃げるような真似はせず迎え撃つ態勢に入り、反撃している。

 状況は流動的……色々考えても仕方なさそうだ。俺は覚悟を決め、ライラと共に戦場へ踏み込んだ。


 近くにいた戦士が気付き、俺達へ走る。それにライラは応じ、相手の剣を真正面から受けた。


「レン殿!」


 そこへ、彼女からの言葉。


「武運を祈っている!」


 言葉により――俺は無言で走り出した。彼女達の横をすり抜け、敵陣中央へ行こうとする。理由はカインを探すためだ。

 周囲には双方の戦士達が入り乱れて戦う光景。この状況下でカインを探すとなると、結構大変かもしれない。


 そんな風に思った時、一人の戦士が俺へと駆け寄り、剣を向けてくる。こちらはそれをひらりとかわし、右腕に魔力を集め対抗する。

 瞬間、相手の顔が僅かだが引きつった。予想以上の魔力だったらしい。


 だから、彼は後退しようとした――が、俺の剣戟が速かった。足を後方に出す前にこちらの剣が到達し、横薙ぎにより見事相手を吹き飛ばした。

 そして、正面に人影……ここからは連戦になるだろうから大変だと思った、その時、


「ライラと共に来たため気になって赴いてみれば……」


 声に、動きが止まる。同時に相手を見据えた。


「君か、レン」


 ――まさかこんなにも早く遭遇するとは思わなかった。目の前の人物は、カインその人であった。

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