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シフト  作者: 鳩梨
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うあー


 しっかし、この少女趣味っていうかお嬢様趣味なベッドで、グラサンかけたら即ヒットマンな会長が寝ているって言うのは、合わないって言うかなんて言うか……ダメでしょ。似合わない云々以前に物理的にも心理的にもダメのダメダメだ。心臓の弱い人なら軽く心不全の一つや二つや三つくらいは起こしちゃうぞ。

 その会長は口元に手をやりブツブツと真剣に何やら考え込んでいた。見た感じだけなら難解な謎に挑む探偵もかくやというほどにさまになっている姿なのだが、いかんせん聞こえてくる呟きが「こうなったらいっそ校舎内に自分の部屋を作ることも検討すべきか……」などと言うモノでは台無しだった。こんなのが生徒会長で大丈夫なのかココ……と、少しばかり不安になってくる。

 モミジちゃんの顔面を殴打したカナエちゃんは、なかなか起きずにいまだ横になったままのモミジちゃんに首を傾げていた。

 そして、そのモミジちゃんは目はうっすらと開いているのだが動きがない。ぼーっとしている。

 ――――と、不意にその顔がくしゃっと崩れた。

「……カナに、カナにぶたれた……」

 ぽそり、とそんな呟きが聞こえた。

 と、思ったらモミジちゃんの瞳からポロポロとビーズのように小さくキレイな涙がこぼれだした。

 突然の事態にフリーズする。

 ブツブツといまだにつぶやく会長の声が遠い。

「カナに……カナに嫌われちゃったぁ……」

 絶句。

「……っ、カナは、もうわたしなんて、いらないんだぁ」

 唖然。

「や、だよぉ……、そん、なの……やぁ」

 愕然。

「ふええええ――」

 呆然。

 え、えっと……え?

 誰? どちら様でございますよ? 

 とりあえず、あたしは自分の目が腐ったか完全にバグってエラーを起こしているんじゃないかと、自分の異常を考えた。実際そうならどうしようもないわけだが、こういう場合のセオリー道り、一応目をこすってみる。

 ごしごし。

「――えっく、…………ひっく」

 ごしごしごしごしごしごしごしごしごしごしごしごしごしごしごしごしごしごしごしごしごしごしご――って痛!

 ぬあ、ヤバイ。こ、こすりすぎたっ。い、痛い、目がすんごい痛い。

 マッサージ程度のつもりが、あんまりな現実に耐え切れずかなりの力と速さでラッシュしてしまった。あー、まつげ数本抜けちゃったし……。うー、スースーするシャンプーが目に入ったときと同じくらい痛いわ。やたら痛くてちょっと後に続くタイプ。

 ソノちゃんしっぱいっ。

 てへっ、とかやってみる。

 止めとけばいいのに、目をこすりすぎて自爆するという恥を更なる恥で上塗りしてしてしまうあたし。言うまでも無いことだけど、やってからと言うよりも、やりながら後悔した。なんだよ、てへっ、て。語尾に星とか音符もつけるかコラ。どこの古いアイドルだあたし。いてまえこのスカタン。

 等々。

 はっ!? もしや目の前に居るこの娘はモミジちゃんじゃない!? なるほど、それならこの行動にも納得がいく。ふふーん。冴えてるじゃないかあたし。

 少し茶色っぽいボブショートで、耳の上の一房だけを伸ばしているのがちょっと特徴的。肌はカナエちゃんとかみたく白いわけじゃないけど、健康的でキレイな象牙色をしている。

 ほーら、見てみろい。どう見たって――……モミジちゃんじゃんかっ!

 外見的特長はあたしの考えを馬鹿にするかのようにピタリと一致した。

 当たり前と言えば当たり前。

「っく……、かなぁ、きらいになっちゃやぁ……。きらいにならないでぇ……」

 なおも泣き続けるモミジちゃん。

 あー、ダメ。これダメ。やっばい、なにこの威力。

 ――悶死しそう。

 それほど今のモミジちゃんは強烈なまでに犯罪的な可愛さだった。

 いつもはどこか達観したようなところがあり、中学二年生とは思えないような精神的な大人っぽさがあった。それが悪いとは言わない。外見から受ける元気そうな少女と言う印象と、その中身のギャップがモミジちゃんの魅力でもあった。

 けど、モミジちゃんがそういう子だと知っていて、それでこの歳相応どころかいっそ幼児かしたような幼さをかもし出す今のモミジちゃんを見てしまうと、なんて言うか、ヤバい。頭を鈍器でガツンと殴られたところに心臓を矢で射抜かれたような感じになる。

 ギャップ萌え、と言うのだろうか。今風に言えば。

 なんだっていいや。

 普段のモミジちゃんもイイけど、今のモミジちゃんもすっごくイイ。カナエちゃんと同等かそれ以上の守ってあげたいオーラが出てる。保護欲とか母性本能とかくすぐらまくっちゃって、思わず抱きしめたくなる。

 今は精一杯の自制心でどうにかこうにかブレーキをかけていられるけど、あと何か一撃でもくると、アクセルはベタ踏みになってしまうだろう。

 例えば、今は涙がこぼれるに任せて両手で顔を覆っているけど、その下にある涙で潤んだ瞳で見上げられたりしたら、一発で陥落しちゃう。耐えることなんて無理だ。

 とか、自らのクールダウンのために冷静を装って分析とかしていると、がばり、とカナエちゃんがモミジちゃんに抱きついた。

 どうやら、たまらなくなったらしい。

 頬を朱に染めて至福の表情でモミジちゃんぎゅーっ、と抱きしめて頬擦りとかしてる。

 モミジちゃんも最初は突然抱きつかれて、「えう?」とか泣きながら困惑していたけど、嫌われたと思い込んでいた最愛のカナエちゃんに抱きしめられていると気づくと、「かなぁ……かなぁ……」とぎゅーっと抱き返している。

 仲良きことは美しきかな。

 突然の大変にらぶりーな仲良し空間に、あたしは嫌悪感を抱くことなく和み、しばらくはこのまま静観することに決めた。

 パシャッ、パシャッという音がひどく邪魔だった。

 


 ――ん?




百合ってむずいね!(何を今更


どぅも! 鳩梨です。今回は――もとい“も”文字数は少なめですがコレはコレですっきりしてるし、作者は一話につき文庫本タイプで大体五ページ前後を目標にしてます。と、もっともらしい言い訳を言っておきます。(ホントにもう何をいまさら)

明日も更新する予定ですのでよろしく!


今回は特に言うことが無いにゃー

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