会長認める
優雅にアップルティーから糖尿病の乗車券へとクラスチェンジした液体を飲んでいた会長さんが「? なにをしているんだ?」などとおっしゃられ、そう言われるまで微妙な空気椅子を自主的に行っていたあたしはつい反射的に「足腰を鍛えているんです」と、体育会系なノリで答えてしまった。
そこでツッコミの一つでもしてくれればよかったのだが会長さんはあろう事か、「そうか、頑張れ」と激励なんぞしてくれた。
まぁ、そんなこんなで(?)、あたしは座るタイミングを失ったまま空気椅子に精を出していた。
その横ではソワソワしながらもついさっき起きたことに今だ困惑しているらしく、頭上に?マークを乱舞させているカナエちゃん。アップルティーを飲もうとしては先ほど会長さんが口をつけたことを思い出し、真っ赤になりながらワタワタと困っている。
あたしたちの正面では会長さんが何をするでもなく優雅にドロッとしていそうなアップルティを口に運んでいる。ちなみに六杯目だ。砂糖三十本分……うげ。どんだけ甘党なのでせうか生徒会長。
えっと……、なんだこの状況。
まぁ、まて。まて待てマテ。あたしたちはここにモミジちゃんが居ると聞いてやってきたのであって、お茶をご馳走になりに来たわけでも、空気椅子なんていう罰ゲームでしかないものを自主的にやるためでもない。
「あのですね」
「ん? なんだ、やっと答えてくれる気になったのか」
待ちくたびれたぞ、と会長さんは大して気にした風もなく言う。そういえば、さっき何しに来たのかと訊かれたっけ。
「……ここにモミジちゃん、枯葉紅葉ちゃんが居るって聞いたんですけど」
「ああ、居るよ」
目を細め、空になったティーカップを指にかけてユラユラと揺らす。
居ると聞いてカナエちゃんが立ち上がり室内をキョロキョロと見渡すが、当然というか室内にはあたしたち以外は居ない。
「彼女には先ほどまで無理言って生徒会の仕事を手伝ってもらっていたんだ。実を言うと生徒会は現在笑っちゃうほど人が足りていなくてね。それなのに片付けなければならない仕事は大小問わずわんさと積もっていく。さすがの私も高層ビル街と化していく書類やらなんやらを前にして、マズイなぁ、と思ってね。暇そうで有能そうな娘を探していたんだ。けれど、知っての通り我が校は部活動への参加は強制ではないが、参加したほうが何かと得で、無所属の娘などそう落ちていない。さて困ったぞと思ったところにちょうど二年生主席の紅葉クンを発見してね。有無を言わさず北朝鮮工作員のような手際のよさで拉致ったんだよ。さすがにクロロホルムはなかったから職権とか乱用したりしてね。その甲斐あってか、おかげでなんと溜まっていた仕事を六割もやっつけることができた」
ニコニコしながら喜々としてそう語る会長は、外で駆けずり回って遊ぶ少年のようで、その容姿から得る印象とは大分ちがうのになぜか違和感がなかった。
カナエちゃんはモミジちゃんが生徒会長に認められたのがうれしいのか、少しだけ照れたように微笑んでいた。親友だもんね。そりゃほめられたり認められたりしたら、まるで我がことのように嬉しいだろう。
けどね? なんか会長のお話の中にはなんか聞き捨てちゃいけないような不穏当なモノが含まれてた気がするのだけれど……、カナエちゃんそこはスルーなの? それとも気づいてないの?
「――実はキミのことも探していたんだよ、苑クン」
めったに見れないお宝映像ならぬお宝カナエちゃんを見て和んでいると、唐突に会長がそんなことを言い出した。
「特待生だということでキミのことは目をつけていたんだ。やはり、私が楽をするためにも有能な娘はほしいからな。だというのにいざ探してみるとキミの姿は見つからず、その代わりにきな臭い噂を聞いてしまったりして……」
ハァ、とどことなく芝居くさい仕草でため息をついて、会長はあたしのほうを流し見た。
あたしとしては生徒会に興味はないし生徒会長様に買いかぶられてもいい迷惑なだけなので、無視して話を戻すことにした。
「それで、モミジちゃんは?」
「彼女なら疲れたのかいつの間にやら眠ってしまったのでな、ほら隣に部屋があるだろう? そこですやすやと眠っているさ」
そう聞いた途端、カナエちゃんは瞬間移動でもしたかのような素早さで隣室への扉へ向かった。そして、そのままの勢いでノブを回すのももどかしく、すさまじい勢いで部屋に飛び込んでいった。うーむ。やっとこさ捜していた親友を見つけた喜びからか、ここが生徒会室であることを完全に忘れているらしい。いつものビクビクオドオドなカナエちゃんのちょっとどころでなく大胆不敵な一面に軽く感動。
会長が立ち上がり、カナエちゃんの飛び込んだ部屋へと向かうのを見てあたしもそれに続く。
嗚呼、どーでもいいけど空気いすのせいで太ももとふくらはぎが地味に痺れてる。むぅ、無意味な強がりなどしなけりゃ良かった。誰かがツッコミいれてくれれば止めようと思ったけど、面子がなぁ……。
喋れない上に普段ただでさえぼんやりしてる感のあるカナエちゃんは、今日はモミジちゃん分が不足してるせいで前後不覚気味だったし、生徒会長は生徒会長でサラリとスルーしてくれちゃうし。
はぁ。やっぱりこう、適度なツッコミキャラがほしいなぁ。モミジちゃんだったら苦笑しつつもやんわりとツッコミを入れてくれただろうに……。
あたしは今更ながらにモミジちゃんという人材がいかに重要であるのかを思い知った。
やや、どうも一週間ぶり。
いきなりですが、皆様にこの『シフト』はジャンル分けすると何になるのか聞いてみたいと思います。
一応コメディにしてますが、うーん。
よろしければ、読んでくださった方々はどう感じているのか聞きたいと思います。
簡単にでいいですので「ジャンルはコレじゃね?」ってのをコメントなりなんなりで聞かせてもらえませんでしょうか。どうぞお願いします。
今回ちと少ないですがそこはご了承ください。では。
(感想とかもらえると作者が狂喜乱舞します)