第91節 大人の後片付け
地上階では、王宮騎士団ブルーゲイル第二部隊ナイトランサーの隊員が忙しく動き回っていた。
あちこちに捕縛された男たちが転がっている。
その中に、ルルは、仰向けに寝転がっているジオと、ジオに付き添うアイリーンを見つけた。
ルルがシュリーを助けに駆けつけられたのも、ジオたちがアンドロスの部下をひき受けてくれたことが大きい。
ありがとうと、感謝の言葉をかけようと思って、でも、ルルはそれを後にまわすことにした。今は邪魔しちゃいけない。
ツララもちょうど担架で運ばれていくところだ。
急いで駆け寄ろうとして、辛そうなツララと目が合う。
ブルーゲイルの隊員たちの背中の合間、立てた親指が目に入った。
(良くやったね!)
そうツララが言っている気がした。
たくさんの人の力を借りて、ルルはシュリーのところまで間に合った。
彼らの協力なしでは決して成らなかった結末。ルル一人では到底無理な使命。
ルル一人の力はあまりに無力で。
でも。
ルルがいなくては決して終わらなかったストーリー。
彼の行動は評価されていい。
ルルは後悔しないように、最大限の努力をしたのだ。
「この人数をほとんど倒してしまったというの? たった四人で?」
惨状を目の当たりにしたスカーレッツの女傑、マルガリータはさも驚いたといった口調で言った。
アローンが警備隊の詰め所に駆け込んだ時、丁度マルガリータとマリアが諸連絡を伝えるために訪れていた。
誘拐を行ったのが皆同じようにヒゲを生やした連中と聞き、もしやアンドロス率いる宰相派の残党ではないかと急行してきたのだが。
「そのようですね」
ブルーゲイル第二部隊ナイトランサー隊長ノーマンは憮然として答えた。ちなみに、あのゴシップ・ノートンと名前が似ているがただの偶然である。
「はぐれの紋章術師バテリオ、狂戦士ドゥルーガ、闇弓リクシー。危険人物がこんなに揃っていたんですがね」
「私の出番はなくなってしまったようね」
灰色の髪を掻きつつワイルドグリズリーと呼ばれる女傑はため息をついた。後は事後処理ばかりなら彼女の出番はない。王国警察ナイトランサーの管轄だ。
「お帰りに?」
「私の仕事はもうないわ」
去っていく敬愛すべき戦士を見送り、ノーマンはふと壁際でだらりと座り込んでいるランケンに目がいった。
既に、ジオもツララも治療のために運ばれていった。この男だけ、治療を拒否したのだ。
「すごい腕前だな。四人でこの連中を壊滅させるとは」
「……五人目は恥ずかしがりやなのさ」
ノーマンは、ランケンの苦い一言を理解できずにただ困惑するだけだった。
その時、もはや神の民至高平和連合会本部でなくなった建物の屋根の上で。
陽の落ちた暗闇にあらがう様な青い髪の青年は、ジオに宛てられた一通の手紙をもてあそんでいた。
「さて、クラリスさんに怒られないうちに帰るとしますか」
つぶやき、青年はその場からそっと姿を消した。




