第14節 先生は気づかれない
「まぁ、一段落ついたところで、探しに行くぞ」
「え、今からですか? これから授業がありますけど」
「そんなことよりオレの大切なものを見つける方が先だ! ルル、男に二言はなかろうな!」
「は、はいっ! ルル、男の子ですから、二言はないです!」
「ちょ、ちょっと、二人ともぉ!」
ジオとルルとコリーが列になって教室を出て行こうとするところに立ち塞がるのは、首があらぬ方向に曲がったノートン。
「なんだ、ゴシップ」
「いいの? ジオ君。単位取れていないんだろ? インターン選抜も半年先に迫っているのに、授業サボったりしていいのかな?」
「うるさい、そこをどけ」
「はいはい、どくよ。どきますよ。万年劣等生、最年長落第記録更新中のジオ様のお通りだ。そこのけ、そこのけ。長老がお通りなさるぞ」
「……てめえ」
にわかに場が緊張を含む。ジオとノートンが対峙し、誰もが金縛りにあったように動けない。ノートンはニヤニヤと笑って、
「だって、本当のことだろう? がけっぷちジオ。実技も、筆記もアリアンロッドやウェルへミニの方が優秀だ。君が今年本院に進学できる確率は、サルが学生になるより低いぜ」
現実を突きつける、茶化した挑発。
浮かぶ冷笑は、勝利者のよう。
瞬間、ジオの拳が軽薄な噂好きをたたき伏せた。
「あの……ノートンさん、なんだか泡吹いて痙攣しているみたいなんですけど……」
「あいつ、そういう趣味らしいぞ」
こうして、ジオたちは授業を早退した。
案外平然と受けとめているクラスメイトたちと、死にかけた蟹みたいになっているノートンと、
「……えと、授業始める前に、誰か保健の先生呼んできてくれる?」
完璧に無視されていた担当導師オラデッティオ先生を教室に残して。