桐生要の損得感情 プロローグ
一話完結連載のプロローグになります。
駄文ですが、
よろしくお願いいたします。
どうして…。私はこんなことになったのだろう?
私がまだ高校二年生の頃。
授業の合間にふと見た空を光が横切るのを見た。
その時は、飛行機だと思った。
でも、家に帰って親がニュースを見ていて、それが隕石だったことを知る。
落下地点の映像は今でも鮮明に思い出すことが出来る。
そこは山で、木々が燃えて真っ赤だった。その中心部では大地が融け、融けた大地は熔岩となって山を下り始めていた。
そして現地の中継で、レポーターがヘリの音にかき消されないように声を張り上げていると、カメラが中心部をクローズアップして映し出す。
その中心部には、黒い立方体が鎮座していた。
周りは融けだしているのに、その黒箱だけは変わらず鈍い光を放つっているように見えた…。
その時だった。私は急に眩暈がして、倒れそうになったのは。
床に座り込む私を心配そうに覗き込む母の顔の横に奇妙な文字列を見た。
それがおそらく私が初めて『見た』瞬間だったと思う。
私が目覚めた時、黒い箱の騒ぎは収まり、別の騒ぎが大きくなっていた。
騒ぎを大きくしたのは、一人の男だった。
「俺は神だ!」
男はそう大通りの真ん中で叫ぶと、辺りの人間を殺傷し始めたのだ。それも尋常ならざる方法で…。
この男はすぐに取り押さえられたが、それまでに死者23名、重症者47名、軽症者103名を出した大事件となる。
のちにその男の名を取って『一条秀則事件』と呼ばれる最初の超常事件であった。
その様子は、映画の悪役の末路のようだった。
警察は記者会見で、『薬物使用の可能性がある』とだけ説明しただけでそれ以外は『調査中』というだけで如何なる質問にも答えることはなかった。
それでも民放の番組やネットでは、この事件を派手に騒ぎ立てた。
犯人の暴れる様子を民間人の撮影した映像は何度も流され、それは衆目の知るところとなった。
そこで政府は超常現象対策課を設立を宣言した。それが後に『能力者狩り』と呼ばれる運動を主導する組織の母体となるが、この時はまだ、事実関係の調査とその報道機関であった。
この時はまだ誰も、何も分かっていなかったといえる。問題の外にいる人も、内にいる人も…。
次第に分かってきたことから、意識的に常識的な範囲を大きく逸脱した現象を引き起こすことが出来る人間が生まれたという、これまで誰も信じてこなかった説が社会通念として認知されるようになる。
私は沈黙を守った。見えるけど見えないふり。これは結構簡単で、それでいて難しい。
でも、ネットで用いられ公式な呼称までになった『能力者』が『箱』の墜落した日に気を失っているという話を発表したあたりから母の言動がおかしくなった。
まず、私の目を見ないし、笑顔がひきつるし、『能力者』関係番組はすべてチャンネルを変えられた。
『能力者』番組は基本的にコメンテーターを呼んでの『能力者』事件の検証であった。その内容は興味本位の視聴者の好奇心を満足させる番組だったが、いかんせん信憑性がなかった。
この時はまだ『能力者』が冗談みたいな存在だという認識でいられた時だった。
それが『佐々木正則』という能力者がこの番組出演し始めたことで、また事態は動き始める。この男がいかなる目的で出てきたのかは分からないが、その影響は大きかったのである。
毎週彼がこの番組に出演することで『能力者』の存在が身近なものになった。誰も彼もが隣の人間を『能力者』かと疑う風潮を広めてしまった。
それに、一番いけなかったのが、この『佐々木正則』という男の能力が『一条秀則』よりも強力であったこともまた、『能力者』危険論に口実を与えることとなった。
それからである、超常現象対策課が『能力者狩り』を始めたのは…。
最初は単なる口頭試問であったが、段々尋問方法がエスカレートしていくことになる。その結果は見えていた。
尋問中の『能力者』の反発である。それによって警官が怪我をした。それだけでは終わらず恐慌状態になった『能力者』が警察署に立てこもり事態は長期化した。
私はそのニュースを見ていた。母が珍しく、そのままチャンネルを変えなかったからだ。
立てこもった人の親が説得に呼ばれたが、この親がまた子供にまったく信用されていない人物だったらしく、効をなさなかった。
この事件の解決は、人質がいたこと、警察にも非があったこと、犯人が未成年であったことが障害となり難航した。
私はこの時、夢にも思っていなかったのだ。私がこの事件を解決しようとは。まして、『能力者』の頂点に立たされようとは決して…。
ご一読、ありがとうございました。
この続きの第一話がございますので、
よろしければそちらもお読みください。
ではでは。