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銀麗騎士の回帰譚  作者: 熾ノ
第一章
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1話,銀麗騎士の雪解け

王国の辺境。寒波厳しい廃村の一角、まだギリギリ形を保っている廃屋の中


セレナ「...どうしてこうなった...?」


セレナは隣で横たわり、次第に息が浅くなるルスティラに手を添えて、自身の身体からも熱とともに生命が失われる感覚を覚えながら呟く。


セレナ(ここまで、自分は騎士として在ろうとしてきたはず...だからこそ、主君 に、陛下に忠誠を誓ってきたのに)


セレナはもはや手先、足先の感覚も失せつつある中で、思考を巡らせる。主君の命 令に従い続けてきたのは、果たして正しかったのだろうか...と。


セレナ(もし...もしその命令が正しいというのなら...私の横で、今にも命尽きそう な幼なじみは間違っていたというのだろうか...いつも、いつも、人のことを気にしていないふりをして、それでも誰よりも優しく、人を気遣うルスティラが...)


吹雪が強くなる。廃屋の隙間から、今にも息絶えそうな2人を死へと誘うように、冷 たい風が2人を撫でる。


セレナ「...すまない...私が悪かった、間違っていたんだ、ルスティラ...騎士の在 り方を、忠誠という一片を盲信するあまり、大事なものが何も見えなくなってい た...」


セレナは答えることはできないだろう、と考えながら隣で息が浅くなっていく幼な じみに謝罪する。

すると、ルスティラは今にも力を失いそうな身体を、ゆっくりと、最後の力を振り絞るように起こして、セレナを見る。そして、笑う。


ルスティラ「らしくない...なぁ...あんまり気にするなよ...お前はいつも、真面目 なんだ...真面目で堅物なのが、私の知るお前だ...」


ルスティラは力なく笑い、確とセレナの瞳を見て、途切れ途切れの言葉を出す。


ルスティラ「たし...かに...お前の話を聞かない...とこが...裏目に出た...命令だ から...と...沢山...悪くない奴らを殺したこと...なかったことにも...許してや る...ことも...アタシにはできない...」


ルスティラの口から出るのは冷たい言葉、罪と向き合わせるような言葉、それなの に、全く冷たさも、残酷さも、非情さも感じさせない声色にセレナの瞳から一筋、 涙が零れる。


ルスティラ「でも...なぁ...その罪も...全部...アタシも一緒に背負ってやる...だ から..さ...ガンバろうな...あと...少しで...全部...」


セレナを見つめていたルスティラの瞳から、光が失われ始める。頭を上げている力もないと言わんばかりに、ルスティラの頭かまゆっくりと下がり、同時に視線も下 を向く。


セレナ「どうした...?ルスティラ...そんな...ダメだ...頼むから、それだけは... なんでも、なんでもする。頼む...あと、あと少し耐えてくれ...お願いだ。もう少 しすればなにか...っ...」


手詰まり、脳裏に過ぎる先の未来にセレナは言葉が詰まる。感覚も失いつつある身 体を必死に、ルスティラの正面に移動させて、肩を優しく掴んで、語るが、ルスティラにはもう、それに答えてセレナを見る余力は無い。


ルスティラ「...セレナ...私はもう...手遅れ...だ...だから...お前は...お前は逃 げろ...また...あいつに...あの皇帝に...連れ戻されないように...」


この堅物はそうするのを拒否するだろう、そうわかっていても、それでもルスティラは続けて告げる。


ルスティラ「お前は...まだ大丈夫...だから...生きろ...生きて...はは...」 ルスティラの口から、諦めと自嘲が混ざった笑みが漏れる


ルスティラ「ごめん...な...さっき...一緒に背負うって言ったのに...無理そう だ...ごめん...な...だから...ぁたしが...全部もって...ぃ...」


ルスティラの言葉が途切れる。呼吸で上下していた肩は動かなくなり、気を巡らせ ることで、薄く発光していた毛先も静かに光を失う。

それを見て、セレナはルスティラの死を理解する。


セレナ「...すまない...ルスティラ...お前が与えてくれる償いの機会から...逃げさせてくれ...」


完全に命の尽きたルスティラの身体をセレナはぎゅっと抱きしめる。 廃屋を通り抜ける寒波ですっかり冷たくなった床に身体を横たえながら、ルスティ ラの身体は離さない。


セレナ「このまま...お前と一緒に居させてくれ...頼むから...頼むよ...お願い... お願いだから...」


少しずつセレナの声に涙声が混じる。啜り泣く音は、幸い冷たい風が鳴らす音に包 まれ、掻き消される。だから、だからこそ、セレナはルスティラの身体に顔を埋めて、存分に泣く。


セレナ「やだ...やだよぉ...なんで...なんで...」


氷の女騎士、騎士として、誰よりも強く、騎士らしく在ろうとし続けてきたセレナ の心が音を立てて崩れ落ちる。

心が音を立てて崩れるのに釣られて、セレナの魔気の操作もおぼつかなくなっていく。全身を巡り、少しでも生命を維持しようとしていたその力は、身体から外に ゆっくりと流れ出るだけになり、体温は風によって急激に奪われ、下がり始める。

体温が奪われ、身体が死へ近づいていく最中、セレナははっきりと心の中に誓う。 堅く、絶対忘れないように。

ルスティラに聞こえることはないと理解しながら


セレナ(ルスティラ...次こそは...次...こそは...私...ちゃんと向き合う...よ... 全部...全部...)


心の中でルスティラに向けて語りかけ、誓った言葉を最後に、セレナも身体を手放し、失う。

それまで響いていた呼吸も消え、廃屋の中にはただ、風音だけが響く。それから数日後、王都軍によって反逆の大罪人2人の亡骸が発見される。

抱き合うようにして息絶えていた大罪人の亡骸は無惨に引き離され、晒されるよう に焼かれ、打ち捨てられる。


そして...




そして......




セレナは微かな光を見る。


セレナ(なんだろうか...死後の世界とやらへの導きか...だとしたら、私は地獄だろ うな...ルスティラ...いつか地獄から出れたなら、君とまた、再会したい...)


そう思いつつ、セレナが瞼を開けると

そこには、見慣れた家の天井が広がっていた。


セレナ(ここは...家か...?確か私は廃屋でルスティラと...)


セレナはゆっくりと身体を起こす。手をぐーぱーと開いて、少なくとも身体が動くことを確認する。

窓から外を見て


セレナ(今は夕刻か...?)


ベッドから静かに降りて、部屋の扉を開ける。


すると


クリス「セレナ!」


大慌てでクリスが駆け寄ってくる。どうやら今まで、部屋の前でセレナを待っていたらしい


セレナ(クリス...?何故ここに...と言うか、何をそんなに慌てて...)


クリス「びっくりしたよ、セレナが職務を無断欠勤なんて」


セレナ「...は?」


クリスの言葉に、思わず疑問が漏れ出る。疑問の一文字を聞いて、クリスは首を傾げる。


クリス「?...休暇届とか、出してないだろ...?今日は普通に任務が...」 セレナ「何を言って...ここは死後の世界じゃ...?私はたしかに死んだはずで...」


セレナは状況が飲み込めず、思っていることをそのまま口に出してしまう。 それを聞くと、クリスはまたしてもよく分からないと言った顔をして


クリス「何を言ってるんだ?セレナ、大丈夫か?悪夢にうなされるとか...変な病気 とか、魔法とか...」


クリスの言葉を遮るように、セレナはクリスを見つめて問いかける。


セレナ「クリス、今は何年だ?」


クリス「おいおい、ほんとに寝ぼけてるのか?今は龍星歴1562年、俺たちは騎士に なって、今年で3年目のだろ?」


クリスの言葉を聞いて、セレナは走り出す。


クリス「ちょ、セレナ!?どこ行くんだよ!」


クリスは慌てたように、セレナに声をかける。


セレナ「すまない、クリス!話は後でちゃんとする!」


それだけ言い残して、セレナは走る。ひたすらに走り続ける。

大通りの真ん中を突っ切り、人の波をかき分けて...しばらく走り、目的の人物を見つける。

惹き込まれるような深紅の髪、毛先だけ色の薄まった独特な髪をした女性


セレナ「ルスティラ!」


その女性...ルスティラの名前を呼びながら、セレナはルスティラに飛び込むように抱きつく。


ルスティラ「ちょわっ!?セレナ...どうした!?」


振り向きざまに飛びつかれ、思わずセレナに押し倒されたように尻もちを着くルス ティラはセレナのただならぬ様子に、何が何だか分からないといった顔で首を傾げる。


セレナ「ルスティラ...ごめん...悪かった...本当に...本当に...!」


街で見かけ、噂に名高い氷の女騎士、氷銀の騎士なんて呼ばれることもある女性の 変貌ぶりに街の人もギョッと固まる。


だが、ルスティラはセレナの声の中にある、自分には伺い知れない何か、それでも自分に関係があるらしいそれを感じて、セレナを優しく抱きしめる。 そして、耳元でしっかりと


ルスティラ「おかえり、セレナ」


セレナを迎え入れるように言葉を囁く。

すいませんっ、変なとこにスペース入ってるのは投稿時のコピペが上手くいってなくて修正しきれてないからです!


それはそれとして始めます、百合物が少ないので書いてしまおうと思い至って書き始めた私利私欲ファンタジーです。良ければ見てやってください。

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