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その鵲は、空の裏側を知る  作者: shiyushiyu


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1/7

プロローグ

 ――世界は、完璧であるはずだった。


 空はどこまでも青く、雲は決められた軌道をなぞって流れていく。

 山は崩れず、海は溢れず、人々は“正しく”生まれ、“正しく”死ぬ。


 少なくとも、この世界はそう”設計”されていた。


 だが――

 誰にも気づかれないほど小さな歪みが、確かに存在していた。


 それを最初に見つけてしまったのが――カケル――という名の少年だった。


 カケル――


 レベル1。


 能力値も全てレベル1。


 戦闘能力は極めて低い。


 この物語の主人公である。


「……なんだ、これ」


 思わずカケルは絶句した。

 彼の視界の端で、空間が一瞬だけ赤く点滅した。

 まるで現実が、間違いを認めたかのように。


 ――【警告:座標補正失敗】


 文字はすぐに消え、世界は何事もなかったように元へ戻る。

 周囲の誰も、異変に気づいていない。


 心臓が、遅れて大きく跳ねた。


「今の……見間違い、じゃないよな?」


 カケルは自分の手を見る。

 普通の手だ。弱く、細く、力もない。


 この日、彼は魔法学園の入学試験で“最下位”の評価を受けた。

 ステータスはすべて最低値。

 周囲から向けられるのは、同情か、無関心。


 ――ただ一つを除いて。


「その表示……あなたにも見えたの?」


 凛とした声が、背後から聞こえた。

 振り返ると、白い髪を揺らした少女が立っていた。


 シラサギ。

 学園首席と名高い完璧な存在。


 彼女は確信に満ちた目でカケルを見る。


「それは“エラー”よ。本来、この世界に存在してはいけないもの」


 その瞬間、カケルは理解した。


 自分は――

 ”この完璧な世界の欠陥を見つけてしまった”

 のだと――


 そしてこの小さなバグが、やがて世界そのものを揺るがすことになるのであった。


 空のどこかで、見えない歯車が、静かに狂い始めていた。

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