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列帖帳―― そは わが思ひの呪い——




私の願いは 果して成就したのか




私の呪いは 果して成就するのか




藤崎の血に宿る呪詛は

大蛇の池を埋めし罪ゆえに 

代々の女子を苛んだ


祖母は池の闇に呑まれ

狂気を叫びながら逝った


母は病に怯え 

夜ごと蛇の目を夢見た


私もまた幼き日の病と孤独に圧されて

生きる事を放棄させた


されど今

胸を焦がすこの痛みに

私は感謝を捧げる


病の痛みすら愛しく

わが心を良宵様へと押しやる力ゆえ


この呪いが私を

龍華良宵様へと導いたのだから


あの方の微笑みは

私の心に永遠の光を刻んだ


列帖帳を手に

旅の医者が言った

綺麗なものを記しなさいと


だが幼い私は

綺麗なものなど知らなかった


たつまと名乗る子が

最初の頁にタツマルと綴った

下手な字に笑い私は呟いた


これが 初めての宝物と


あの純粋な心が私の光だった


やがてワスレナソウの青い花を頁に挟んだ


秋の風にそよぐ薄絹のよう

色褪せぬ私の生きた証


良宵様と出会いし十七の秋

世界は輝きを帯びた


あの方の温もりが

私に綺麗なものを教えてくれた


されど 約束を待ち続けた日々は

暗い靄を呼び寄せた


黒髪の女が囁く


お前は裏切られたと


その声は 私の心の奥

凍てつく淵から響くようだった

彼女の凍てつく目は

まるで私の疑念を映す鏡


だが 私は信じる


わが胸に刻まれた思ひは裏切らない

わが無明の生みし幻と


知った


藤崎の呪いは 罪にあらず

大蛇の祈りであったのだと


池の闇に宿るその力は

罪を罰する呪詛ではなく


私を良宵様へと導く縁だったのだから


ゆえに 私も良宵様を呪いたい


あの方を導く縁となり

四季の光に微笑む呪いとして


わが呪いとは――


春の桜がそよぐ風

夏の川が輝く陽

秋の紅葉に舞う落ち葉

冬の雪に沈む静寂


あの方の心に

私の微笑みを刻む呪い

思ひゆえの祈りとして 永遠に


わが身この世を去るとも

良宵様の心に微笑みは消えず




そは わが思ひの呪い









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