最低で最高の転生1
ゲームにも感情は存在する。
これは紛れもない事実である。
そう感じたのは今よりもずっと後の事である。
4年制のそこそこ偏差値の高い大学を卒業し、そこそこの企業に就職してそこそこの生活を送っているはずだったが、大学受験に失敗し、その後会社員数十名程の中小企業に就職。
案の定その職場はブラックだった。毎日とんでもない量の残業で私の心身は疲弊していた。
その心を癒したのは、寝る前に数時間プレイする乙女ゲーであった。特に個性豊かな令嬢たちは私の活性剤となっていた。ただ一つのクソゲーを抜いての話である。
「アマネ、授業中だよ。もう先生の顔が悪魔のようになってるよ。」
聞き覚えのあるような、細い声が聞こえる感じがする。
目を開くと学校の授業中のような景色が広がっていた。
周りには複数の生徒が座っている。
彼らの見た目には少し違和感を覚えた。
前方には映画のスクリーンのような大きな黒板があり、その前に白いひげ、きっちり整えられた髪型をした40~50歳程の教師と思われる人が怪訝な表情で立っていた。
「アマネ・オードラン、授業中にも関わらず居眠りとは本学の自覚が足りないのではないのかね。全くこれだから平民は…。」
怒るというよりかはあきれているようであった。
一通りぼやきが終わると教科書に目を通し、また授業を再開した。
「アマネどうしたの?居眠りなんて珍しいね?」
横の席から先ほどの細々としたいかにも自信なさげな声で私に話す少女がいる。
私はその声につられるように横にいる少女に視線を落とした。
少しぼさっとしていて、長さは肩につかないぐらいの白髪で、色白でかわいらしい見た目であることからすぐに察した。
「カっ、カレン!」
思いがけず、少し大きな声を出してしまった。
教室内は静かであったのでこの声は全体に響くことになった。
「アマネ君!」
「すっすみません…」
教師からの叱責なんて何年ぶりだろう。
中世的な世界、学園、カレン、この状況から察するとあれしかなかった。
しかしそれが本当ならうれしくないことかもしれない。
転生これは転生、しかも史上最低のクソゲーへの転生。
ゲーム名は「七人の令嬢」、ざっくり言うと乙女ゲーにアクション要素を織り交ぜたようなものだ。
話しの流れとしては主人公が学園内の七人の令嬢と手を組み協力することで魔王討伐を目指すというもの。
一見面白そうではあるが、このゲームの唯一として最大のウィークポイントはセーブがないという事。
破滅してしまえば、また最初から、飛ばすことのできない長―いチュートリアルを聞かなければならない恐怖、私も何度も何度も挑戦してみたけど破滅ポイントが山の数程あって、やってられるかと何度奇声を挙げたことであろうか。
つまり、乙女ゲー好きの私がゲームプレイをあきらめた作品。
「えっ、あなたカレン、カレン・フランソワよね。」
私は隣の美少女の耳に口を近づけ小声でそうささやいた。
「何寝ぼけてるの。そうだよ。僕はカレンだよ。」
少し悲し気な表情で、目の前にあったペンをカレンはいじり始めた。
僕っ子最高すぎます。
「じゃあ、この年になってもおねしょしたり、人形がそばにいないと眠れないあのカレン?」
「だああ、ちょっとアマネやめてよー」
この反応かわいすぎる最高すぎるんですけど。
そうそうそういえばこのゲーム、内容を見ずにジャケット買いしたんだよね。
キャラ設定はしっかりしていたなあ。
もしかして、天国?もう残業しなくていい?かわいい子を合法的に愛でられる?神様ありがとうございます。
「そこの2人、さっきからこそこそこそこそと。後で、私の前に来るように。」
「もうアマネのせいだからね。後で僕からも説教だよ…」
何分いや何時間でもしてください。よろしくお願いします。
こうして現実世界と変わらないお叱りから、私の異世界生活が始まったのであった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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