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ショートショート7月〜3回目

かびん係

作者: たかさば

わたしはかびん係をやっています

クラスメイトがもってきたお花を、かびんに入れる係です


わたしの仕事は、かびんのじゅんびをすることです


まいあさ、かびんの水を入れかえます

まいあさ、しおれた花をしょうきゃくろにもっていきます


たまに、花がいっぱいくるとたいへんです


となりのクラスにわけにいったりしないといけなくなります

しおれてない古い花をすてなきゃいけなくなったりします


わたしはお花が大好きです


たいへんな係だけど、ずっとやりたかったのでうれしいです

三年の時、ふるはしさんがイヤイヤやっているのを見て、わたしならよろこんでやるのになと思っていました


かびん係にりっこうほしたら、まなべさんとさいとうくんも手をあげました

じゃんけんでグーをだしたら、かびん係になれました


わたしはまいにち、かびん係をがんばっています


かびんをおとさないようにていねいに運んでいます

お花をなるべくやさしくさわるようにしています

くさい水をすてて、かびんの中をあらって、しんせんな水を入れます


夏休みのしゅくだいがくばられた日のことです


ふじたさんがきれいなお花をもってきてくれたので、かびんのじゅんびをするため手洗い場場にいきました

新聞に古い花を花をつつんで、かびんをあらいました

きれいな水を入れて、マーガレットとヒマワリをかびんにさしました


わたしはしょうきゃくろに行く前に、先生のつくえの上にきれいな花をかざろうと思いました

そして、かびんをもったまま後ろをふりむいた、そのしゅんかんにたいへんなことがおきました


どかっ!!!

ばしゃっ!!!

ガチャン!!!


ろうかを走ってきた、六年生とぶつかりました

かびんがおちて、かびんがわれて、花がちらばって、うわぐつもスカートもびしょびしょになりました


「べーんしょ、べーんしょう!!」

「あーあ、わっちゃった!!たかいぞー!」

「先生にいってやろ!!」


クラスメイトがわたしにむかっていじわるを言いました


「だいじょうぶ?」

「さわらないほうがいいよ!」


クラスメイトがわたしにむかってやさしいことを言いました


「ケガしてない?」


先生はわたしをしかりませんでした


つぎの日から、かびんはなくなってしまいました


わたしはべんしょうすると言ったけど、しなくていいと言われました

わたしが家からもってくると言っても、もってこなくていいと言われました


教室から、かびんがなくなってしまいました

わたしのせいで、教室からかびんがきえてしまいました


「いいなー、係の仕事なくなって」

「仕事がしたくないからわったんだろ?」

「べんしょうもしないでずりーやつ」


かびんがなくなったせいで、わたしは心がいたくなるようになりました

あんなにだいすきだったお花を見ても、かなしくなるようになってしまいました


わたしは、お花があまり好きではなくなってしまいました


きがついたら、教室に花をかざるクラスはなくなっていました


……今でも、教室に花瓶を飾るクラスはないようです


娘の授業参観日、華やかさのない教室を見て、子供の頃の出来事を思い出してしまいました


もう、何十年も昔のことなのに、あの日、あの時、心に負った傷がいまだに残っています


今でも私は、花を花瓶に活ける気になれません

花は野山に咲いているものでなければ、見たいとも思えないのです


教室の後ろの黒板には係の一覧が掲示してありますが、そこに花瓶係の文字はありません


私のせいで…奇麗なお花は教室に入れなくなってしまったのだと、胸が痛くなりました



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― 新着の感想 ―
[一言]  私も昔、花瓶係をやっていました。水換えを嫌々していましたが……笑  このお話に登場する主人公のように、心を込めて係の仕事をしていたら、また違った思い出になったのかなぁと考えさせられました……
[良い点] 懐かしくさと切なさと。 かびん係が無くなったのは主人公の過失が切っ掛けではあっても主人公の責ではないのでしょう。大人になって世の中の事が分かる様になっても幼い時分に刻み込まれた心の傷痕は…
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