トランプ
次の日も、森や街の修復とまつりの片付けが行われていた。
ひめるはすっかり元気になっていた。
広場では、アニータがひめるたちより早くから手伝いを始めていた。ひめるたちもそれを手伝った。花壇や畑の手入れや、壁や屋根のイラストの洗い流し、電球や提灯の取り外しを行った。
「あー疲れた」
コウカは背伸びをした。
「元通り、綺麗になりましたね」
「午前中で終わってよかったわね」
その後、五人は湖のほとりのテーブルに集まった。
「またそれ?」
ひめるは、端末を見ていたコウカに声をかけた。
「え?ーーああいや。あ、そうそう。ハマっててなー。このパズル」
「へー。僕も、お父さんに頼んでみようかなぁ」
コウカの端末には、パズルゲームのスタート画面が開かれていた。
「そんなことより!これしようぜ」
ピオはトランプを取り出した。
モノはテーブルの上ですやすや眠っていた。
「おっいいよ」
ひめるはすぐに、ピオの提案にのった。
「えー。お前つえーんだもん。大富豪もポーカーも、7並べも、何でもつえーじゃん」
端末をポケットにしまうコウカは、トランプをシャッフルするピオに言った。ピオはニヤっと笑った。
「それは、俺に何にも勝てませんと、ひれ伏しているってことでいいんだな?」
コウカは、アニータと花札を片付けるレンを見た。コウカと目があったレンはその視線を不思議に思った。
「ち、ちげーし、はやく配れよ!」
「そうこなくっちゃね」
ピオとコウカとレンは仲良しだった。昔からの幼馴染らしい。そこに、まだ幼かったひめるは、ピオと知り合った。
間も無くしてイブのお店でアニータと出会い、それから五人で遊ぶことが増えた。
「革命だ」
五人が集まるテーブルでは、大富豪が行われていた。
ピオは、同じ数字4枚をテーブルに出した。
「もー。まーたそれかよー。パスだよ」
コウカはトランプが弱かった。それを見て、レンとアニータは笑っていた。
「革命返しだ」
「なに?!」
ひめるは勝ち誇った顔で、同じ数字4枚をテーブルに出した。ピオは、驚きを隠せなかった。
「お!ナイスお前!」
コウカはひめるとハイタッチをかわした。
「なんちゃって。残念」
テーブルには、ピオが出したジョーカーと同じ数字が3枚あった。
「もー!」
コウカは、持っていたトランプを放り投げた。投げたトランプの一枚がモノの耳に掠れ、ピクッと動いた。
「すごいね!」
目を輝かしたひめるは、テーブルに身を乗り出してピオに言った。
「だろ?」
ピオは自慢げに言った。
「今度秘訣おしえてよ!」
「いいぜ。」
「おい!お前らばっかりまた強くなるなよ。」
コウカはトランプを集めて、ピオに渡した。
参加していなかったアニータは笑っていた。大富豪をしている間、アニータはみんなの会話に入りながら、持ってきた端末の画面を見ていた。
「アニータもはじめたの?ゲーム」
ひめるの言葉にピオは少し反応し、アニータの返事に耳を傾けた。アニータは、端末で何かサイトを開いていた。
「違うわ。ちょっと確認することがあっただけよ」
ピオはほっとした。
アニータは笑ってそう言ったが、アニータは時々、何を考えているのかわからないが、難しい表情をしている時がある。大富豪をしている間も、アニータは真剣な眼差しで、端末で何かのアップデート内容を確認していた。
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読んでくれてありがとう。
大富豪は父親に教わりました。
夜な夜な父が帰るのを待っては、眠くなるまで遊んでもらいました。