酸素マスク
「――なんか。――あれ。息が。――」
息がうまくできず、視界が揺れ、目の前が真っ白になった。
ひめるが体勢を崩す寸前、白いローブを纏った者の一人が、ひめるの身体を支えた。ひめるは、意識を失いかけていた。
その二人組を見たピオは、何かに気づいた様子だった。
街頭の上から見下ろしていた黒いローブを纏った者も、二人組の存在に気がつき、引き返すように森の方へと姿を消した。他の黒いローブを纏った者も、それに続いた。
「大丈夫かー!」
声は、急いで広場に向かう車椅子に乗った男性、ーーマコトだった。ひめるを抱える白いローブを纏った者は、マコトにひめるを預けた。マコトは、手に持っていた酸素マスクを急いでひめるに取り付けた。
白いローブを纏った顔も見えない二人組は、何も言わず互いに目を合わせ、崩壊があった建物の方、街の奥の道へ消えていった。
白いローブを纏った二人がその場から去ると、街の人は、少しずつ緊張がほぐれ、壊れたところの修復や落下したものの回収を始めた。ピオは、アニータに平気か声をかけた。アニータはそれに頷いた。
「きっとなんとかしてくれる。俺たちも、できるだけ修復を手伝おう」
ピオのその提案に、表情を変えたアニータはレンのもとに駆け寄った。ピオとコウカは街の修復の手伝いに加わった。
車椅子のマコトに抱えられ、意識が朦朧としたままのひめるは、そのままマコトの店へ向かった。
それからしばらくして、みんなが集まるマコトの店で、ひめるは目を覚ました。そこへ、イブとトールがきて状況を知らせてくれた。
爆発が起きた建物は、幸い、無人の状態だったこと、その他の街や森の修復は順調で、怪我人は一人もいなかったとのことだった。
「残念ながら、花祭りは中止になってしまったけど、夜通し働ける人は修復を続けるから、あなたたちはそれぞれお家に帰って休みなさい。こわかったわね。でも、もう大丈夫よ」
イブは、レンとアニータの頭を撫でた。
イブは、トールの古い友人で、ひめるが幼い頃から世話になっている、店のマスター。見た目は美人の男性なのに、話し方や仕草、雰囲気は女性みたいで不思議な人。
「ひめるを、ありがとうございました」
「念には念をだな。これがあってよかったよ」
酸素マスクを、マコトはひめるの口から外した。
トールは、まだ少しぐったりとしたひめるを背負うと、マコトに頭を下げ店を出た。
その後すぐ、そのほかの人も解散した。
***
ピオは、自分の部屋のパソコンを見つめていた。
深いため息をつき、パソコンの電源を入れた。
窓の外、森の奥に見える研究所を部屋から眺めていた。
棚には、丁寧に整頓された日本昔ばなしや、からだと書かれた本。折り畳まれた紙と、ピオを挟んで3人が写る写真が一枚飾れれていた。
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読んでくれてありがとう。
最初イブには名前もなく、店員として登場していました。
その時に読んでくれた人が、オネエのキャラが好きとおっしゃったのでイブしかいないと思いました。
今では重要な登場人物です。