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- 花の下にて -  作者: 薬剤師のやくちゃん
2/27

青いペンダント

挿絵(By みてみん)



***

 

晴れた日の朝。

“――カランカラン”

店の扉を開け、桃色のぶちの柄がある白猫を抱えたイブは、開店の準備をしていた。

桃色の癖のついた髪ーーイブ。性別不詳。

「さあ。みんなにおはようしておいで。モノ」

イブの腕から下ろされた1匹の猫ーーモノは、元気よく走って噴水広場へ向かった。イブは、晴れた空を見上げたあと「OPEN」と書かれた板を扉のドアノブに掛け、店を開店させた。


ひめるは、いつもの朝の買い出しで家を出た。その時に、不思議な格好をした人とすれ違った。

その人は片手に紙袋を持ち、ガスマスクにフードを深く被っていて顔が見えなかった。

”ーー?”

ひめるは、ふと立ち止まって振り返り、その姿を見つめた。

いろんな人がいる。それぞれがいろんな考えや思いで、また別の人と関わる。この街の人も、もちろんそうである。

「ひめるー!」

イブの店の前で植木鉢を抱えた女の子が、ひめるに手を振る。白色のピアスが揺れ、長い白髪を丁寧にまとめている女の子ーーアニータは、ひめるに手を振っていた。

立ち止まっていたひめるは、アニータに呼ばれて駆け寄ろうとしたが、たまたま目に入った出店の売り物の中に、ひめるのペンダントと似ているものを見つけた。

青いペンダント。似ているが、形もチェーンも少し違う気がした。しかし自分のペンダントに似たものを見つけたのは、これが初めてだった。

「ねえ。お姉さんこれって」

ひめるは気になって店主に聞いてみた。

「どうせ拾ったもんさ、持っていきな」

気前のいい店主はそう言って、ひめるに青いペンダントを渡した。

「ーーこれ、どこで拾ったの?」

さらに気になったひめるは、店主に教えてもらった場所へ向かうため走り出した。

「おはようアニータ」

ひめるは、片手にジョウロを持ったアニータの横を走り去った。

「おはよう。ーー?」


 ひめるは最近、この街に違和感を感じることがあった。


 街を抜け、森に入り、少し坂になった道を歩いた。店主に教えてもらった場所に着き、辺りを探索した。

『立ち入り禁止』

するとそこには、立ち入り禁止区域表示の看板と錆びれたチェーン。

「ダメなんだよ。そこいったら」

後ろからアニータがついてきていた。

「怒られるよ?」

その意味はひめるも知っていた。この街では常識だ。

この先には、研究所がある。限られた人間しか立ち入りができない。しかも、そこでは極秘に勤務する必要があって、従事していることを他人に伝えてはならず、体のどこかに埋められた紋章を隠しているという噂もあった。

研究所には、関わってはいけないと昔から友達や街の人から言われていた。


“ザーーー” 

森の木々が風で鳴いていた。

“ーーー”

そして、再び静寂が訪れた。

「私、先に行ってるね」

アニータは、立ち止まったままのひめるを不思議に思う目で見つめた後、先に街へ降りた。

「――戻ろう」

ひめるは、立ち入り禁止のチェーンの奥の道を見つめ、街へ引き返すことにした。


”ザザッーー”

木から何かが落ちた音に、ひめるは足を止めた。

大きな古い木の下に、下駄が片方だけ落ちている。近寄ってその木を見上げると、太い木の枝に、着物姿の女性が仰向けで眠っていた。


***


少年とすれ違った後、フードを深く被ったガスマスクの少女は立ち止まり、少年の方を振り返った。そしてじっと、走り去る少年の姿を目で追った。

パーカーのフードを脱ぎ、ガスマスクを額まで持ち上げると、ぺろぺろキャンディーを口へ運んだ。

再び歩き出すと、ポケットの端末が鳴った。

画面に表示された着信相手を確認すると、ガスマスクを被り直し、端末を耳に当てる。

「ん」

「ヤッホー。元気―?」

「ん」

「なーにしてんのー?」

「――観光」

通話相手は、画面に表示されていく文字を目で追っていた。

「いいなー。僕にも見せてよー」

ガスマスクの少女は、手に持った端末で辺りを写した後、ついでに内側カメラにして自撮りをした。

「また、君はそんな趣味の悪い被りもの被ってるのー?」

カメラモードを通話に戻した。

「でも、楽しそうだなー。ありがと。今度僕も連れてってよ」

「――わかんない」

「えー残念」

ガスマスクの少女は、手に持った紙袋の中身を見つめた。

「――お土産ある」

「ほんとー?やったー!」

その反応に、ガスマスクの少女は少し考えたあと、

「あげないけど」

「なんだよー。じゃあ言わないでよー。まあ、だと思ったけどねー」

「ん」

「じゃあ、気をつけて帰ってきてねー!」

通話を終了したガスマスクの少女は、”セイ”と表示された通話画面を閉じ、端末をポケットにしまった。




挿絵(By みてみん)




ーーーーーーーーーー

挿絵(By みてみん)

読んでくれてありがとう。

イブの店行ってみたいですね。その日におすすめのカクテルをイブに入れてほしいです。

キャラ作りって苦手で、名前も容姿も考えるのにかなり苦労しました。

よかったら皆さんの好きなキャラとか場面を教えてくださいね。参考にしますので。

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