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月光のシンデレラと花魔女のキス

作者:

 ――なんてことのない一日の始まりに過ぎなかった、その朝のことを覚えている。


 登校時間に賑わう早朝。煉瓦造りの学舎の中を、リアはほかの生徒と逆行して駆けていた。教師陣に見とがめられれば即刻注意だが気にしていられない。

 今日は、温室管理の当番なのだ。


「ううー。今日こそは早起きするつもりだったのに……あぁっ」


 かぁん、と、鐘が鳴った。所属教室への入室を促す鐘だ。朝練習に勤しんでいた生徒たちも部活動を切り上げて、各々の教室に向かってぞろぞろ移動を始めている。リアはブックバンドで留めた教科書をぎゅっと抱きしめた。朝礼を飛ばしても、最悪、授業にさえ遅れなければ。そんな目算を立てながら、ブーツの踵が滑らないように注意深く、かつ、急いで床を蹴る。

 目指す温室は校内でもやや奥まった場所にある。学舎に四方を囲まれた中庭に建つ、鳥かごの形をした外観。淡く着色された色硝子の壁面。鉄柵に絡まる瑞々しい蔓薔薇。鍵を差し込んで回し、リアは硝子製の扉を遠慮なく開けた.


「ごめんね皆っ! 遅くなりましたっ!」


 返事はない。開いた扉から吹き込んだ風を受けて、温室内にひしめく花々のつぼみが震えるように揺れた。

 リアは花の魔女である。花に関する魔法に精通し、花を美しく咲かせること。咲かせた花を維持すること。そういった初歩を初めとし、花に関することなら何でも扱う。正確にはリアはその見習いで、修行の一環として温室の管理を受け持っていた。

 肩口に落ちる栗色の髪を紐で結わえ、制服のブレザーごとシャツを袖まくり。支度が整えば花々の確認。葉や花弁の色、その艶。虫や病気の兆候。花壇の脇にしゃがみこんで、百は植わる花を一本一本を検める。


「うんうん。今日も元気そうだね。君はもうすぐ花ひらくかな。君たちは窮屈そう……昼に剪定してあげよう! それから、君は」


 少し、元気になろうね。

 リアは花弁のしおれかけた一輪に、軽く唇を触れさせた。

 花弁から虹色の粒がはらはら零れる。しわが寄り、茶色にくすみかけていた花弁が透明感と瑞々しさを取り戻し、花が最盛期を取り戻す。

 花魔女が花に魔力を与える方法は千差万別だが、リアは口づけを気に入っていた。花弁のやわらかな感触が好きだし、いい香りもする。何より、魔力を集中させやすい。

 元々の大きさよりほんのわずかに小ぶりとなりつつも、生命力を取り戻して咲き誇る花にくふくふ笑い、リアは次を見るべく腰を上げる。

 そしてそのまま、ぎくりと動きを止めた。

 花壇の傍に置かれた真鍮製のガーデンチェアに、男の子がひとり座って、リアをじっと見つめていたからだった。

 彼のことをリアは知っていた。同級生の中でも、とりわけひと目を惹くひとりだった。

 真夜中色の髪。金の筋が入った緑灰色の光彩。象牙色の肌と端正な顔立ち。長い脚を持て余し気味に組み、その上に頬杖を突いている。朝露に濡れる花々に満ちた温室を背景にする姿はたいそう絵になった。

 ラス・ステカ。眉目秀麗、成績優秀。物静かで物腰穏やかな、気品あふれるこの同級生はどこにいても注目の的で。その彼がなぜこの温室にいるのか。そもそも鍵が掛かっていたはずなのに、とか。というか、花に話しかける姿を見られた。はずかしいはずかしい。人がいないからこそのおしゃべりなのに。

 混乱と羞恥に青くなり赤くなりしていたリアを、ラスは上目遣いに見つめている。肌を焦がすような熱視線だ。天から降り注ぐ朝日がその光彩の混じる金を浮かび上がらせて、なんてきれいなんだろうと思わず息を呑む。

 リアはプリーツスカートの裾を握りしめ、躊躇いがちに問いかけた。


「あ、あの……?」


 かぁん、と、鐘が鳴る。

 朝礼開始の予鈴だ。

 ラスが膝の上に開いていた教科書を閉じて、ゆっくりと立ち上がる。


「お邪魔しました、ロセッティさん」


 彼はリアと向き合って、穏やかに一礼して去っていく。

 その背中を見送ってしばらく、再び鐘が鳴る。

 ひっ、と、リアは悲鳴を上げた。


「本鈴!」






「え、なに。そこから何もないの?」

「何もありません」

「普通はそこからロマンスが始まるとかじゃないの。こっそり秘密の彼だったりしないの?」

「ないよ!」


 リアは食い気味に主張した。リアの学生時代の思い出話を聞いていた同僚の花魔女であるエメが、なんだぁ、とつまらなさそうに息を吐く。せっかく打ち明けたのに、なんという反応だ。リアは憤慨しながら選んだ海鮮パスタを突っついた。

 王城の敷地内に複数設けられた食堂は、昼食をとるリアのような勤め人で賑わっていた。リアの大声も喧噪にまぎれて、気を払う人はだれもいない。唯一、話に耳を傾けていたエメだけが、ハンバーグを口に運びながら、呆れにゆっくり目を細めている。


「たった一回きりの、しかもまともに会話してない状況で、ストーカーしてるんだ?」

「ストーカーじゃないもん。仕事場からね、見えるだけ。見えるだけなの」

「たまたま見えるだけの人の話を毎日聞かされるわたしの身にもなって。今日は忙しそうに調べものをしていた。今日はだれだれと立ち話していた。今日は空を見て眠たそうだったとか。よく資料館の窓際に座っているだけの人のことをこれでもかっていうぐらい事細かく……ふぐっ」

「い、いいからもう黙って……」


 エメの口を手で押さえて、リアはテーブルの上に突っ伏した。

 わかっているのだ。最近のリアは気持ち悪いほど、ラスのことばかりを話している。

 かの学生時代の同級生とは、王立学校に就学中、いましがたエメに話した温室での邂逅、たった一度を除いて、まともに会話したことがない。同じ学級に所属していても、図抜けて優秀で確かな存在感を放っていたラス・ステカと、成績は下から数えた方が早く、ぱっとしたところのないリア・ロセッティの接点は薄かった。魔力のないラスと魔女見習いのリアとでは選択授業の科目も大きく異なっていて、むしろラスがリアを把握していた点に驚いたほどだったのだ。

 王立学校を卒業後、ラスは王城の官僚コースに引き抜かれ、リアは花の魔女の実地修練として僻地の農場に勤めていた。少々、朝に弱いきらいはあれども、花魔女としての働きを認められたリアが推薦を受けて、王城の花魔女として雇われたのが昨年の秋。割り当てられた庭園の世話を必死にこなしていたリアはひと月前、管轄の庭に接する資料館で、ラスと再会――というか、彼の姿を一方的に見つけたのである。

 リア管轄の庭は王城の中でも外縁にある。その庭に隣接する小ぶりの資料館は、中枢と名高い執務棟近郊にある図書館の別館で、利用者もごくわずかだった。

 その窓際の席――自習室らしい――に、リアは懐かしい同級生の姿を見つけたのだ。


 数年ぶりに見たラスは凛々しさを増して貫禄すら感じた。噂によるとラス・ステカと言えばあの若さで政務補佐官という、たいへんたいへん優秀な文官である。王太子シリルとも年が近いこともあって親しいとか。

 窓越しの横顔は変わらず整っていて、真剣な顔で調べものをしたり、彼を訪ねただれかと会話したりする姿は目の保養だった。リアは日々のうるおいとして彼を観察した。あぁ、きれいだな。彼の姿を見ると美しい夕焼けや夜空を目にしたときのように胸がときめいた。そしてちょっと興奮が抑えきれなくなって、最近はその語りにエメを付き合わせていたわけである。


「まぁ、執務棟の侍女にも熱烈なファンがいるって聞くし、そう思うとあんたのストーカーもそこまでじゃないのかもね……年季が入っているだけで?」

「いまも昔も別に追いかけ回しているわけじゃないんだよ……?」


 はぁ、と、リアはため息を吐いて、空になった皿を重ね合わせる。


「ちょっと目で追っちゃうの」

「恋じゃないの?」

「ちがぁうよぉ」


 恐れ多すぎて想像できない。


「恋人になりたいわけじゃないもん」


 とても幸福な気持ちになれるから。花を見守るみたいに、ただ遠くから見つめていたいだけ。

 そう思っていた。


「ガーデナー・リア・ロセッティ」


 食べ終わった食器を返却し、食後の飲み物をドリンクバーで選んでいたリアは、見慣れない制服の青年に呼び止められた。

 執務棟の制服だ。胸元には階級を示す房が揺れている。それが明らかに上級職のもので、リアは背筋を伸ばして彼に向き合った。

 彼は穏やかな声音でリアに告げた。


「このような場所で呼び止めて申し訳ありません。急遽お願いしたい仕事があるのです――共に来ていただいても?」





「……月下美人、ですか?」

「そうです」


 第一執務室室長トアキンと名乗った壮年の男が、リアの問いに神妙に頷いた。


「こちらの指定の日付に咲かせてほしいのです。ガーデナー・ロセッティ。あなたは花魔女の中でもそういったことが得意だと聞きました。こちらが予定表です」


 リアは執務机越しに差し出された紙を受け取って目を通した。異国からの訪客の予定が記されている。月下美人はその客人になじみ深い花であるらしい。

 月下美人はこの国の南方に位置する国が原産の多肉植物で、夕方から夜にかけてとても美しい花を咲かせるのだが、その開花時間はたった一夜。日が昇るころには萎れてしまう。それは花魔女の魔力を注いでも変わることがない。しかもつぼみがいつのタイミングで綻ぶのかを測ることもなかなか難しい。予定の決まった観賞花にまったく向かない花が月下美人だ。

 月下美人に似た開花時間の短い花を、何かしがの祭典に合わせて咲かせる仕事はままある。だから依頼自体に驚きはしない。

 ただ、と、リアは室長に告げた。


「できなくはないです……。あの、わたしの庭に運んでもいいでしょうか」


 リアはまだ見ない月下美人の鉢植えを思いながらトアキンに尋ねた。


「予定通りに咲かせるには、完璧な管理が必要ですので」


 月下美人は花を咲かせること自体が難しい花だ。生育に適した気候はこの国のそれとずれているし、栄養状態が悪いとつぼみが付かない。ついても開花前に落下することもしばしばだ。

 ところがこういった仕事を引き受けるときの花は、元の保管場所から花魔女の管轄下の庭へ移動できないことが多かった。要人からの贈り物。それに類似する品だと言って。


「あぁ、それは問題ない。ガーデナー室のキャロルにも話を付けてある」


 キャロルはリアの上長だ。呼び出す限りは彼女の許可もあるのだろうと踏んでいたけれど、そこまで話が進んでいるなら温室のスペース確保もスムーズに行われるだろう。


「ただこちらもすべてをあなたにお任せするわけにはいかないので、連絡役を付ける」

「連絡役」

「そう。花の状態の確認役をするためだ。あなたに今後、花を咲かせてほしい日取りを伝える役でもある」

「失礼いたします」


 ちょうど呼び出されていたらしい男性の声が、リアの背後の入り口から室内に響く。

 その声に、聞き覚えがある。リアは驚きから背後を振り返った。


「君とは王立学校の同期だと聞いたが、改めて紹介しよう。うちの執務室の補佐官のひとり、ラス・ステカだ。彼が、君との連絡役を担う」


 リアがここひと月、窓越しに眺めては悦に入っていたあの端正な顔。それに穏やかな微笑を浮かべて、青年はリアに丁寧に一礼した。


「どうぞよろしくお願いします、ロセッティさん」


 ――その呼びかけは学生時代、たった一度だけ耳にしたときと同じく、とても穏やかな響きをしていた。






「全十鉢」

「すべてに三つずつ、花を咲かせてほしい」

「具体的な日取りはまだ決まっていないんですね?」

「決まっていない。……敬語じゃなくていいよ。僕も普通に話す」

「あ、ハイ」


 リアはラスに頷いて、自分の温室の中を見回した。

 執務棟からリアが戻ると、温室にはすでに月下美人の鉢が運び込まれていた。緑の葉がつやつやと輝いている。つぼみはまだなく、これからリアが世話をして花を咲かせなければならない。

 リアが管理する温室は、王立学校のそれと似ている。蔓薔薇の形を模した鉄柵と、そこにはめ込まれた色硝子。今回の月下美人のような、日々の管理とは別口で世話を依頼された花がそこかしこに並ぶ。リアの仕事部屋も兼ねているから、鍵付きの管理棚と、机替わりのテーブルがあって、真鍮製のガーデンチェアにはパッチワークのクッション。

 クリップボードに挟んだ書類に、何かを書き込んでいるラスにリアはそのガーデンチェアを勧めた。


「あの……こ、こっちにどうぞ」

「いいよ。立ったままでも書けるし、椅子は一脚しかないみたいだから」

「あっ、あの、わたしはこれから、皆の確認をしていくから……」

「皆?」

「……月下美人たちです」


 リアの回答に、ラスは、目を細めて、あぁ、と頷いた。それならと椅子に腰かける。品のある座り方だ。貴族をお迎えしている気分になる。


(お、お茶を出しておこう……)


 作り置きの香草茶を貯蔵箱から出してカップに汲みテーブルに置く。

 書類の処理を続けるラスに背を向けて、リアは何でこんなことになったのか、と、天を仰いだ。

 キレイだなって眺めていたお星さまが急に手元に落ちてきて、ぴかぴか光り出したみたいだよ。

 確かにラスと自分は王立学校の同期で同級生だった。けれども接点はなかったし、同じ空間にふたりきりは緊張する。


(そんなことは言っていられないけれど)


 指定された日付に花を咲かせるには集中力と力がいる。リアは自らの頬をぺちぺち叩き、鉢植えの前に屈みこんだ。

 人と同様に植物も急な場所移動にはストレスを感じる。急に水が上がりにくくなったり、根腐れを起こしたり、病気にかかることもある。

 月下美人は繊細な性質で、湿度、土、日照時間、水の量を季節ごとに変えなければならない品種だった。挿し木で増える生命力を持つ一方で、世話の仕方を何かひとつ誤るだけで枯れてしまう。花は美しく、香り高く、そして一夜の夢のように儚く散る。なかなか素直には咲いてくれない気難しい子だ。

 今回リアが受け持った月下美人は、近々に花を咲かせたいというだけあって、生育数年は経ているだろう立派な株だった。けれども以前の手入れが適当でなかったのか、弱っているものもある。

 追肥の袋を手にうろうろしていると、背後のラスから声が掛かった。


「話しかけないの?」

「ふぁ?」


 ラスは頬杖を突いてリアを眺めている。

 興味深そうな目だ。緑灰色の光彩。陽光が入って、金が微かにきらめく。ラスは物静かなのに、その視線だけは夏の日差しのように強くて、リアは目を逸らせなかった。学生時代、温室の中の一度きりの邂逅を思い出した。

 そこで彼の質問の意味に気づく。


「あっ――……この子たちに!?」

「そうだね」

 ラスの肯定を受けて、リアは顔に熱を感じた。


「は、話さないから」


 普段は話す。それはもうべらべらしゃべる。エメのような親しい同僚を除けば、独り身のリアの話し相手なんて、世話をしている花ぐらいだ。

 けれどもそれをラスの前でするのは憚られた。

 ラスが不思議そうに首をかしげる。


「どうして?」

「その、恥ずかしくて……」

「恥ずかしい?」

「……魔女じゃない人から見たら、ひとりごとを言っているみたいじゃないかなって、思うから」

「独り言を言っているとは思わないよ。だって、君の花は嬉しそうだった」

「えっ」

「……昔、温室で、見せてもらったよね」


 どちらかというと勝手に見られたのだが。いや、でも、しかし。

 リアはぱちぱちと瞬いた。

 単純に、驚いた。

 学生時代、ラス・ステカは人の輪の中心だった。彼自身は静謐でも、その周囲はいつも賑やかで。だから温室での一幕は彼にとって日常に埋もれる些細な出来事だったはずだ。

 なのに。それを。彼が。


「……覚えていたの?」

「忘れないよ」


 即答だった。


「君は、僕のことを忘れてたの?」

「わっ、忘れてないよ!」


 リアは声を張り上げて主張した。

 ラスはふわっと破顔した。


「よかった。忘れられていなくて」


 その声はいつもの淡々とした声音ではなくて。

 勘違いかもしれないが、うれしそうだと、リアは感じた。





「なんと。わたしが知らない間にロマンスが始まってる」

「始まってないよ!? そもそも釣り合わないよ!」


 昼休み。リアはエメに顔を寄せて反論し、エビフライにフォークを突き立てた。同僚は笑っている。リアの現状が愉快でならないらしい。


「いいじゃない。好きな顔を窓越しじゃなくて直に見られるのよ?」

「別に顔が好きだから眺めていたんじゃなくて……」

「いやなの?」

「ちが……き、緊張する」


 あとは気まずさがある。リアは勝手にラスの生活を覗き見ていたようなものなのだ。

 そんなリアの心中をエメはいまひとつ理解しなかったのか。見当違いの質問を投げかけてくる。


「そんなに会話しづらいの? まぁ、執務棟の人たちって、頭良すぎて会話にならないってよく聞くしねぇ」

「や。そこまでじゃないもん……」


 エメのあんまりな言い方に、リアは肩を落とした。





 実際のところ、ラスは話しやすい話題を選んでリアと会話してくれる。日常のこと、仕事のこと。彼との会話は穏やかで、リアの話をつまらなさそうに切ったり、遮ったりすることもなかった。時には思い出話をすることもあった。

 たとえば、そう、学生時代について。


「温室、たまに鍵が開いていてね。人もあまりこないし、静かだから、入れたときは利用させてもらってた」


 温室で出会ったときのことをラスは何のためらいもなく話した。


「えっと……静かなところが好きなの?」

「うん。賑やかが嫌い、ではないんだ。ただ、離れたいときがある」

「そっかぁ。……そんなこともあるよね」


 日光が当たりすぎると嫌がるくせに、その傍にはいたがる子も花にいるもんね。ちょうどこの、月下美人みたいに。温室の影になっている庭先で、リアは月下美人の株を植え替えながら思った。

 月下美人は日照が長すぎると葉が焼けて枯れてしまう。だが陽の光の傍にはいたがるので、初夏に近い今の時期、直射日光を紗で防いで屋外に置く。

 人も明るいところ、賑やかなところといった、陽の場所を好んでばかりではないのも道理である。

 植え替えの終わった鉢の土の具合を確認しながらリアは呟いた。


「ステカさんの周り、たくさん人いるもんね。それは大変だ」

「……うん」


 肥料の袋を温室から運びだしてくれていたラスが、リアの隣に屈みこみ、控えめに頷く。


「そうなんだ。。だから、君の傍は落ち着くな」

「ふぇっ!? わたし!?」

「人の出入りが多い管理棟に比べたら、ここは空気がゆったりしている」

「あ、アァ、ハイ。ソウデスネ」


 リアは肥料の山を混ぜながら頷いた。ラスの言いたいことはわかった。王城の中でも僻地にあるリア管轄の庭は、資料館や、別館や、古美術品を保管する倉庫といったような、日常使いしない館が軒を連ねる一角だ。ラスが常駐している執務棟と人の気配の度合いを比べるべくもない。ごみごみしていない方がよいというのなら、確かにリアの傍はラスの好みに適っている。

 いけないいけない。イケメンはこれだからいけない。すぐに愛嬌を振り撒く。図書館の窓越しに長らく観賞していた顔がやさしく微笑んで、君の傍がいいな、などと言われたら、だれだってうろたえる。人に囲まれて疲れるのなら、まずはだれかれ構わずそういう甘い台詞を吐くことを止めたらどうか。

 リアはスコップの先端を、肥料の山にざくっと突き立てて深呼吸した。

 冷静になろう、リア・ロセッティ。花の世話をしているときに雑念はいけない。花が臍を曲げてしまう。いや、臍はないけど。


「ステカさん、お仕事はいいの?」

「いましてる。君の仕事を見守っている」


 んな馬鹿な。リアは目を点にして、人に聞かせるにはよろしくない突っ込みを飲み込んだ。


「補佐官さんって、実は暇なの? 資料館にも毎日来てたし……」

「え?」

「え? アッ」


 リアは己の失言に硬直した。


(ままままま、まずい)


 中庭に隣接する資料館の窓辺にいたラスとリアは顔を合わせていたわけではない。


(ば、ばれちゃう。いまの発言でばれちゃう)


 毎日毎日、日々の楽しみとして、窓辺に見える顔を消費していたことが。

 何とか誤魔化されてくれないかなぁ、と、微笑んでみたが、相手は魑魅魍魎が跋扈する執務棟の、たいへん優秀な補佐官さまである。リアの発言の意味を違えることはもちろんなかった。

 ラスが温室を振り返る。


「……毎日? ……僕がこっちに来てたこと、知ってたの?」

「え、えー……その、花の世話をするとき、この庭から……見えるから……」


 リアは土まみれの軍手に包まれた指先で資料館を指さした。

 温室近いここからだと光の反射で中まで見えない。だが近くの花壇の手入れするとき、自然と窓の向こう側が視界の隅に入るのである。


「僕のことを覚えていたの?」


 先日の執務室と同じ問いだ。リアは口先を尖らせた。


「忘れないよ。同級生だもの」


 久方ぶりにラスの姿を目にしたとき、リアは驚き、そしてうれしくなった。あぁ、頑張っているんだなぁ。花ばかりにかまけて人付き合いの上手くなかったリアは、そもそも連絡を取り合う友人の数が少ない。地方に行ってからは人間関係が寸断されたため、同級生の活躍している姿を目にする機会はなかった。机に山と積んだ資料を黙々と読み通し、真剣に何かを書き付ける横顔や、同僚らしき人と討議する姿は、リアに勇気を与えた。彼も頑張っているのだし、わたしも頑張ろう。


 ――そのころ、想像以上に高い水準の仕事を求められ続ける王城ならではの仕事に、少し、疲れていたのだ。

 だから、探した。リアのちいさな箱庭の中で。花のことだけ無条件に考えていられた時代の残滓を。


「……室長の補佐の仕事って、主に調べものなんだ」

「はぁ。それで毎日、こっちに来てたんだね……」

「ロセッティさん」

「は、はい」


 ラスのやけに改まった呼び声にリアは背筋を正した。


「名前で呼んでいい? 僕のこともラスって呼んで」

「え? えぇ、あ、ハイ……えぇ? な、なんででしょう?」

「なんだかよそよそしいから名前の方がいいなって思ったんだ。同級生だから」

「は、はぁ……」


 リアはラスに生返事で応じた。なんなんだろう。花の望みはわかるけれど、男の子の考えはさっぱり読めない。


「リア」

「あ、う、うん。何?」

「馴れ馴れしい? さん付けのほうがいい?」

「お、お好きにどうぞ……」


 リアは素焼きの鉢に軽石をぱらぱら落とし込みながら答えた。次に肥料をよく混ぜ込んだ土を敷き詰める。花の根元の土を払って、新しい鉢の中に直立させ、また土をかぶせて――リアは月下美人の葉を傷つけないように細心の注意を払った。一歩間違えれば手元が狂う。集中集中。今は仕事に集中だ!

 無事に一鉢を植え替え終えて、リアはそろりと傍らを見た。

 地面の上に座ったラスが、立てた片膝の上に頬杖を突いて、リアを眺めている。

 その視線は夏の日差しよりも肌を焼く。

 王立学校の花魔女たちの箱庭。早朝の光ふりそそぐ、温室のことを、また、思い出す。


「ラス、君」

「なに?」

「イエ……」


 さすがに呼び捨ては難しいことを再確認しただけだが、それを当人に伝えることは憚られる。

 ラスは頬杖を突いたまま微笑んだ。

 温室の硝子が反射する光を背景に。

 それが、とてもきれいだ。




「ロマンス、始まってるじゃない」

「始まってない!」

「名前呼びに昇格した。これはロマンスでは?」

「なんでそうやってすぐ色恋につなげようとするの!?」

「話を聞いているわたしが楽しいから」


 何を言っているのか、と、言わんばかりの顔をして、エメがリアに断言する。リアはエンドウ豆の冷製スープをスプーンでかき混ぜた。エメと休憩が重なる日の食堂が、ラスとのやり取りの報告会になっている。


「……でも、リア、あんた、気を付けなよ」

「うぐ?」


 タンドリーチキンをほほ張っていたリアはエメの忠告に首をかしげた。エメがコンソメスープのカップに口を付けたまま話を続ける。


「花の世話で気を散らさないように……今回の、難しい仕事なんでしょ?」

「むぐ……うん。そうだね」


 今回の仕事は、ただ花がきれいに咲きますように、開花が長持ちしますように、といったものではない。

 人が願う通りに花を咲かせる。

 集中力がものをいう。片手間にできるような仕事ではない。

 下手をすれば、花に嫉妬される。

 植物の育成はコミュニケーションだ。言葉を持たない花々を相手に何を言うのかと思われるかもしれない。だが、花魔女にとってはそうなのである。

 日々の世話を怠らず、愛を囁くように語り掛け、その言霊に魔力を乗せて、花魔女という存在をなじませる。雑念が混じると魔力が上手く乗らない。花に愛想をつかされる。そうなれば、花魔女の『お願い』は聞いてもらえない。指定の日に望んだ数だけ花を咲かせるなんて夢のまた夢。

 それだけ難しい仕事をリアは引き受けている。

 だからラスは彼の上長に命令されて、リアの下に日々通っているのである。リアがきちんと仕事をこなせるかを確かめるために。





「――リアさん」


 ラスに呼びかけられて、リアは我に返った。花の観察に集中していたせいで、ラスが温室に入ってきたことに気づかなかった。


「あっ、ラス君。ごめん。待ってた?」


 ラスは首を横に振った。そのまま勝手知ったる様子で備え付けの貯蔵庫を開け、作り置きのお茶をカップに汲んでいる。ラスが執務棟での仕事に区切りをつけてこの庭に訪れるとき、リアはたいてい軍手を付けて土いじりをしていた。茶を淹れることの叶わないリアに代わって、ラスはいつからか自分の分の茶を貯蔵庫に収めるようになっていた。

 外は激しい雨が降っている。一時的に温室に入れた月下美人の鉢を、リアは一鉢ずつ矯めつ眇めつしていた。

 隣に立ったラスが腰を曲げて、ずらりと並んだ鉢を見やる。


「つぼみ、きれいに育っているね。三つずつだ」

「うん。ようやっと。よかった……」


 リアはほっとしていた。合計十鉢。すべてにきちんとつぼみが付いている。初めはばらばらだったつぼみの数も、蔓が伸びて膨らみ始めたここにきて希望通りに揃ってくれた。

 先日、ラスが決定した日付を伝えてきた。満月の夜だ。遠方の客をもてなす宴の席が、王族住まう宮廷の深部で開かれるという。リアの月下美人たちは、そこに運び込まれて客人たちの目を楽しませ、芳香に酔わせなければならない。

 当初こそ、ラスのことがあって集中できなかったが、彼との関係性が落ち着いてきたこともあって、リアは月下美人の世話に集中する日々を送ることができていた。

 エメの忠告もあるし、リアは極端にラスを意識しないように心掛けた。ロマンスだのなんだのエメが突っ込んでくる程度には、やはりリアのテンションはおかしかったのだ。様子を見に来るラスへは他の同僚たちにするようなにこやかな態度を心掛けつつ、必要以上の会話をなるべく控えるようにした。もちろん、冷たくするわけではない。ただ、ラスより花との会話を優先させただけだ。ラスも暇ではないから、連絡事項をリアに伝え終わると、ちょっとした雑談だけで口を閉ざし、しばらくリアの仕事ぶりを観察してから、帰っていくようになっていた。


「よしよし、きれいなつぼみだね。雨にやられなくてよかった。君は少し発育がいいね。花弁が真っ白。咲く日が待ちきれないなぁ」


 くふくふ笑いながら、声をかけていった最後の鉢で、リアは手を止めた。最後の鉢だけつぼみが力なく、大きさも頼りない。んん、と首をひねって魔力を通してみるが、変わらずしんなりしている。

 ふむ、と、リアは黙考した。肥料は充分に足りている。むしろこれ以上に加えるとつぼみが腐る。土の具合も確かめたが、悪くはなさそうだ。

 すると、花魔女への愛情の問題か。

 リアは腰を屈めて、月下美人の青々とした肉厚の葉のてっぺんにキスをした。唇を通じて、ふぅ、と、魔力を通す――固かったつぼみが、態度をやわらげた気がした。

 ほっとしてリアは腰を上げようとした。

 そのときだった。

 手が、上から押さえつけられて、地面に縫い付けられた。

 顔にふっと影がかかる。


「へ?」


 気が付けば、ラスに口づけられていた。

 ざっ、と、雨が温室の天井を叩く音がひときわ大きく響いた。





「噂の彼、来なくなったの?」

「うん……忙しいみたいで、代わりの人が来てる」

「そっかー……それは残念ね」

「ううん。ちょっと別の人に代えてほしかったから」

「あらそれは何で?」

「……集中できないんだもん」


 いつもの賑やかな食堂で、日々の報告を聞くエメにリアは口先を尖らせた。

 ラスに口づけされた。

 そんな前触れありました? わからない。何せリアは独り身歴イコール年齢の花魔女なので。そもそも人付き合いも苦手なたちなので。ラスから好意は感じていたが、それが同級生という立場から来るものなのか、同じ仕事に関わった同僚としてのものなのか、さっぱりわからない。

 疑問符と羞恥と初めて感じる他人の唇の感触に大混乱のまま、リアは唐突に口づけてきたラスの身体を押し返した。ラスは傷ついた顔をして、温室から出て行って、それ以来、会っていない。

 会えない、と、思った。このままでは花に意識を注げない。月下美人を咲かせよ、という依頼を果たせなくなる。

 一晩眠れない夜を過ごしたあと、ラスの上長であるトアキンに願い出て、連絡役をラスから代えてもらおうと決意した矢先、別の補佐官が月下美人の様子を見に来るようになった。ラスは王子から急な仕事を言いつかってね。代役の補佐官はそんな風に言った。

 食後のコーヒーにミルクを入れつつ、エメが問う。


「花は? 無事に咲きそう? って、聞くまでもないか」

「うん。……無事に咲くよ」


 納品は、今日の夜だ。






 ――リアがつぼみに口づけていくと、丹精込めて世話した花はきれいに咲いた。月下美人。その美しい名の花は、満月が煌々と輝く夜に相応しく美しい真白い花弁を豪奢に開いて、甘やかな独特の芳香を辺りに漂わせた。十鉢。きっかり三つずつ。その数に何の意味があるのかリアには知らされていない。

 王宮勤めの侍従たちがテキパキと月下美人の鉢を温室から運びだす。ちょっと寂しくなるな、と思っていたリアの下に顔を見せたのはラスだった。あ、と、リアが顔をこわばらせると、ラスは哀しそうな顔をした。いや、表面的には見事なポーカーフェイスだったけれど、いうなれば犬ころが叱られて耳をぺしょりと伏せたような、そんな空気を彼は漂わせたのだ。それがわかるんだなぁ、と、リアは自分で自分に驚いた。

 依頼完遂の伝票に署名しながらラスが告げる。


「十鉢、三十の花。確かに受領しました。殿下もお喜びです」

「殿下?」

「シリル殿下です」


 ラスとも親しいという王太子。

 人の目があるからか、それともほかの理由からか。常と異なる慇懃な口調でラスは続ける。


「あなたにこの仕事を依頼したのは、殿下なので」


 夕暮れのあわい光に染まる温室は、鉢を運びだすため出入りする人で、いつもと異なりざわついている。やがてラスとリアを除いたすべての人がいなくなると、吊り下げられていたランプに妖精が明かりをぽっと点していった。

 ラスの顔色はよくわからなかった。ただ橙色に染まった彼の顔は悲痛そうで、死刑宣告を待つ人みたいだった。ずっと日光に当ててもらえない花みたいな。


「――ラス君って」

「うん」

「欲求不満だったの?」

「……ごめん、質問の意図がわからない」

「え、えっと……わ、わたしなんか、に、キスしたから……?」

「……花に嫉妬したからした」

「しっと?」


 リアはラスの言葉を脳内で反芻して咀嚼した。

 はじき出された答えをギクシャクと彼に確認する。


「それって……あの、わ、わたしのことを、好きって、こと?」

「うん」

「……えっ、なんで?」

「何でって……何?」


 ラスが眉根を寄せる。彼には珍しい、機嫌を損ねた顔だった。リアは視線を泳がせて、しどろもどろ弁解する。


「だ、だってラス君って、ほら、執務棟の、とっても優秀な補佐官だし、王太子さまのお気に入りだって聞いたし、つまりそれって将来有望だし、あとラス君ってとってもかっこよくて、学生時代から人にすごく好かれてて……そ、そんな人がわたしを好きって……ど、どっきり?」

「冗談でキスなんてしないから。あと、僕は前に言ったはずだけど」


 ――君の傍は、居心地がいいって。

 ラスが真っ直ぐにリアを見つめる。

 陽の光よりも激しく、月の光より甘やかに。リアの肌を焼いていく――彼の視線から、リアは目が離せない。


「あ、う」


 リアは真っ赤になって、はくはくと口を動かした。

 何て言えばいいかわからない。

 ラスはリアをふっと微笑んだ。

 そしてリアが毎日毎日硝子越しに眺めていたあのきれいな顔をあざとくかしげて、彼は言ったのだった。


「君の傍にいることが普通になりたいんだけど、だめかな?」





 ――かつこつかつこつ。

 執務棟から王族の住まいへ続く渡り廊下。高く取られた円天井に、靴底の鋲がタイルを叩く靴音が反響する。

 その音に耳を傾けながら歩いていたラスは、廊下の終わりに佇む人影に足を止めた。


「や」


 影の主はラスと同年の男で、ラスと、ラスと共に働く人間すべての主だった。王太子シリル。彼は右手を軽く上げて近くの護衛を退け、ラスを手招いた。


「……おめでとう」

「何がですか?」

「愛しの花魔女ちゃんを手に入れたって聞いたけど?」

「……そういう下世話な言い方やめていただけますか?」

「照れちゃってぇ。かわいいの」


 にやにや笑って突っついてくる王子を、ラスは殴りたくなった。温厚だのなんだの言われるラスだが、殺意ぐらいは沸く。


「俺のおかげでお近づきになれて喜んでいいよ。……毎日毎日、資料館の仕事を率先して引き受けて、ラスのストーカーぶりも相当だった」


 やはり殴ろう。ラスは殺意を込めて辞書を持つ手を振り被った。シリルにはきれいに避けられた。

 リア・ロセッティは、ラスの長年の片恋の相手だった。同級生ではあったけれど、挨拶すらろくに交わしたことのない彼女との接触は一度きり。王立学校の温室で彼女に出くわしたときだった。


 学生時代、リアとラスには同級生ということ以外にまともな接点がなかった。だから、卒業してからは疎遠になった。

 それが今年の春だ。資料館の傍の庭を管理している花魔女がリアだと知った。

 理由を作って毎日通って、彼女を眺めた。

 それが王子に知られてからが運の尽き。

 いや、やはり彼に感謝しなくてはならないのか? この王子がリアに仕事を依頼したから、これからラスは彼女の傍に堂々といる権利を得て、幸せな関係を作っていける。

 だが、面白がる顔をする王子はやはりむかむかする。


「……なぜ、月下美人だったんですか?」


 南方からの客人をもてなすためという理由は嘘ではない。だがもっと生育に楽な花を選んでもよかったところを、シリルがかの花に決めた。


「あー」


 王子は空を仰いだ。


「ラス、花言葉知ってる?」

「……知りません」

「勉強しよ。花魔女の彼氏さんになるんだから。月下美人の花言葉は――秘めた意思」


 それはそれは、情熱的な。


「あと、結構気難しいところがラスに似てる。案外図太いところも。あ、三十個の花って俺がお前からあの子のことを聞いた日数ね。無意識にのろけてて面白かった」


「……殿下」


 王子はにこっと笑って言った。


「これからはちゃんと花じゃなくて俺を愛でてってオネダリするんだよ」

「僕が彼女を愛でるんですよ」


 ――それこそ、花のように。



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