【第1章】 第9話 襲撃
「……そんな所に居たのか、ギルバート。」
そう言って近付くアルマは、
研究所に戻ってきたギルに対してニンマリと笑う。
「どこにいたっていいだろ。」
「部屋に来いと言わなかったか?」
ムッと顔をしかめるギルに、アルマは再度笑った。
「おぬしが来た理由は我の大発見について。
どうせ何処ぞの巨体がおぬしに言いふらしたんじゃろ?」
それに対して反応を示さず、ただジッと見つめるギル。
分かっておる。とアルマがくるりと背を向けた。
「なぜ我らは歳をとらないのか。
なぜスキルがつくのか。
どうして我らが紅と長年争うのか。」
ひと息付いてから再度ギルの方へ向き直り、
アルマは真剣な眼差しを向ける。
「我らは、何故スキルがいくつもつくのか。
理由がわかったのじゃ。」
「……。どれについて?」
「全てじゃ!我はわかった。
この黒幕、そして陰謀、そしてギル___」
言葉の途中でアルマの頭が吹き飛んだ。
血が噴水のように小さな身体から湧き出て当たりを赤く染め上げていく。
ギルは身体を強ばらせた。
突然の攻撃。ギルの死角から放たれた光線。
ギルの真横の壁は粉々に砕け散り、僅かに右肩が抉られた。
あと数センチズレてたら、自分も命を落としていた。
ハッとなり警戒態勢を取る。
身体だった塊が倒れた瞬間、第二砲が放たれた。
最初に撃たれたと思われる地点がチカッと光ったため
即座に反応し滑り込んで反対の棚へ移動する。
だが、威力から考えてこの場所はかなり危険だった。
詠唱破棄からの魔法でギルの周りを薄い膜で覆った。
結界、一撃は防げると踏んでのことだ。
案の定もう1発が放たれてギルの結界に直撃する。
振動と衝撃で決壊ごと部屋からドアの向こうへ吹っ飛ばされた。
結界は光線により解除され、床に背中から落ちる。
「くっそ……。」
痛む右肩を抑えながら、何とか体制を再度整えようとした。
「ギル!!」
「お前は来るな!!死ぬぞ!!」
ティアが近付こうとしたのを牽制し止める。
次の光線が来たら終わる。
ギルは痛みに耐えながらどうするべきかを思考し続けた。
「ここで、死ぬ訳にはいかねぇんだよ……!」
スキルを発動させようと詠唱を始めた時、
再度壊された壁の向こうでチカッと光った。
そして爆音と共に、眩しい光が二人を包み込んでいく。
小さな呟きと、大きな叫び声は、耳に何も残さなかった。
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