【第1章】第8話 不穏
「これは驚きじゃな……。」
眼前にあるボードをまじまじと見て、アルマは険しい顔をする。
ボードには『0』という数字が大きく表示されていて、
その他にもグラフの様な図式が出てはいるが、その数値もすべて0を示していた。
「……これって魔法が使えないということなの?」
うむ、と返事をするアルマに対して、落胆の表情を見せた。
「魔法の仕組みはギルバートに教えてもらったか?」
ティアが少しだけと言うと、まったく、とため息をしながら吐き出す。
「この世界の魔法はゲートを通った瞬間にスキルと威力が決まるのじゃ。
スキルは基本1人1つ。威力は地球での犯罪歴で決まる。」
「犯罪歴?」
「うむ。どんな犯罪をしたか、何人殺したのか殺してないのか、犯罪の種類は何か。
そう言ったもので決まると言われておる。
実際にその犯罪の内容に似たスキルが付与されているというのは研究結果で判明しておるしな。」
そう言って棚に置かれた資料を1つ取り出す。
『犯罪歴とスキルの関係性について』
読んでよいぞ、と言われてティアはそれを取り目を通す。
殺人犯が一番威力が高く、殺害人数の数が多いほど、威力の高い攻撃系スキルが付与される、と書いてある。
「つまり強い人ほど危ないってことですね。」
「その通り。逆を言えば、軽犯罪ほど補助スキルや回復スキルが付与されているからのう。」
資料をティアから受け取ると棚にまた戻した。
「おぬしが復活魔法ということは、
かなり犯罪歴が低い、まぁ犯罪をしようとしたがその前に見つかって捕まった、
とかそういう感じかのう?」
アルマに言うか迷ったが、隠した方がいいと思い、ティアは苦笑いで返事をした。
「そのせいか分からぬが、おぬしは制御能力もない。
魔法は使えぬもの、と思った方がよいな。」
「そんなぁ……。」
がっくりと肩を落とすティアに対して、アルマは軽快に笑い出した。
「安心せい!ここはそのための制御施設じゃ!
スキルが暴発する者も多いからここで制御について学ぶのじゃ。
次の戦争まで時間もあるし、制御値を上げられるように手伝うぞ!」
お願いします、とティアが頭を下げる。
そんな声を聴きながら、ギルは二人がいる部屋から離れて外に出た。
コートのポケットから通信機のようなものを取り出してスイッチを押す。
聞こえてきた声に対してギルは長いため息をついた。
「……次の戦争で決着だ。作戦を遂行する。」
吹くはずのない風が強く吹き、辺りの草木が騒ぎだす。
まるでこの後起こる何かにおびえているかのように……。
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