【第1章】第6話 決意
スキルについて、説明を受けていたティアの背後の壁から物凄い振動と爆音が轟く。
驚いて背後を振り向くティアに対し、セーラは大きなため息をついた。
「ごめんなさいね、いつものことなの。」
え!?と更に驚くティアに、セーラは苦笑交じりで目を細める。
「私たちの蒼のギルドの他にも支店って形で他にもギルドが存在するんだけど、
そこの中のとあるギルドの長が殴り込みをしてきたみたいなの。」
「な、殴り込みですか。」
「先日蒼は紅に大差で負け撤退したから、
戦争に参加しなかった彼が来るのは予想がついてて。」
背後から罵声と武器が交差する音が聞こえてくる。
心配になってオロオロとティアがしていると、顔を緩めセーラが再度微笑んだ。
「大丈夫よ、あの子がいるもの。」
あの子?と首を傾げるティアに対し、セーラは続けて伝える。
「一緒に来たでしょ?」
ギルの事か、と分かったティアは、それでも考える仕草を続ける。
「ギルは、強いんですか?」
セーラは一瞬驚いた顔をしたがすぐにまた笑顔に戻った。
「ええ、この縄張りの中では上位に位置するくらい。
でも……。」
言葉を濁したが、まぁわかるかと呟いたのち再度言葉を続けた。
「ギルの能力は戦争が終わる毎に変わってしまうから、今の能力は未知ね。」
―――
「く……。聞いてねぇぞ!!」
先程まで威勢を出していた大男、【ガルズ】は目の前に佇む男に対して悪態をつく。
「お前が情報をないがしろにしたからだろ。」
冷たい、低い声。煙から覗く蒼の瞳は氷のようだった。
「くそが、敗退したくせに何でこんな力が有り余ってんだ……。」
「俺の能力は知ってるはずだぞガルズ。変化だってな。」
腰につけていた短剣をガルズの首元にピタリと付ける。
ひんやりとした感覚にガルズは肩を一瞬震わした。
(今までとは比べ物にならねぇくらいやべえ力だ……。)
ガルズの身体が感じる。こいつは危険だと。
「終わりか?死にたくなければ部下の能力でギルドのドア直してから消えろ。」
「なめやがって……。まともに能力を使いこなせねぇくせに……!」
その言葉に反応するように、短剣の刃が首に押し当てられる。
スッと切れた首から出た血は、流れ落ちる汗と同じ軌道で
上衣に染み込んでいった。
「次は無い。消えろ。」
ギルの更に重くなった低い声にガルズは
悪態をつきながら立ち去る素振りを見せる。
立ち上がり、近くでオロオロとしている部下に、
直しとけくそが、と命じ壊れたドアの辺りまで歩く。
その後ドアの前でピタリと立ち止まり、ギルの方に向き直った。
「おい、くそ野郎。1つだけ伝えとく。」
「……何。」
「アルマがお前を探してた。例の方法が見つかったぞ!とか何とか叫んでたがな。」
「!!」
じゃあな、とガルズはギルドを後にした。
残されたギルはその消えた先を睨むように見つめる。
「……、とうとう、か。」
目を瞑り、大きく息を吐いた。
何かを決意するかのように、不安をすべて出すかのように。
ギルは、ティアの元へ歩き出した。
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