【第1章】第4話 ティアのスキル
「わぁぁぁ!凄い!」
夢の国に初めて来たかのように興奮するティアに、
ギルは親のように優しく微笑んだ。
「ここが俺らの国であり、縄張りの拠点【アジュール】だ。」
砂でできた城。砂は白く、一面真っ白の世界は天国の様。
街を歩く人々は蒼を基調とした様々な服をして、
空を思わせるようなどこか異次元の神秘さに少女のように感動していた。
「下町には地球のように露店やら服屋もあるし、レストランもある。
普通に今までと同じような感覚で過ごせるから安心しな。」
「そういえばいろんな人種の方がいるけど言葉の壁とかは大丈夫なの?」
「ああ。ゲートをくぐったら言語理解のスキルが自動的につくみたいだな。
だから俺らがこうやって話せるようにほかのヤツらも話せる。
ちなみに文字も地球にいたころの自分の国の言葉に翻訳されるから楽だぜ。」
そういって指をさした先には全く見たこともないような果物と値札が置いてあった。
どうやら【りんご】と書いてあるようだ。
「……りんご。」
「おう、あれがりんごとは思わねぇよな。味は同じだからそのうち慣れる。」
しばらく街を散策した後、ギルに案内された場所は酒場のような場所だった。
アニメや漫画などで見るような、【ギルド】のような場所のカウンターには、
白髪の綺麗な女性が立っていた。
「お帰りなさい、ギル。今日の収穫はその可愛い子かしら?」
「ああ、こいつはティアっていうみたいだ。
手はアレルギーみたいだったから先に手袋をつけてる。」
ここの世界については説明済、と言ったうえでギルは女性に伝えた。
「スキルチェックを頼む。」
―――
「あの子、怖くなかった?大丈夫?」
そう言った受付にいた彼女、【セーラ】はティアに心配そうな表情で話しかける。
「全然、むしろ優しくしてもらいました。」
と伝えると、セーラは驚いた表情のまま座っているティアの前のソファに腰かけた。
「珍しい。大体ギルは無表情で脅す様にここに連れてくるのに。
よっぽど害が無いって思われているのね。」
ふふっと上品に笑うセーラに、少しだけ複雑な表情になるティアであった。
「さて、これからスキルチェックをするんだけど、方法は簡単なの。
ただこの水晶に手を触れるだけ。
頭の中で情報が浮かび上がった後、
スキルの名前や使い方が自動的に知識として取り込まれるわ。
それが何かはここ、【蒼のギルド】に必ず報告する義務があるの。」
ガラスのテーブルの上に木製の装飾台を置き、
その上にあるくぼみにはめるように手のひら大の水晶を置く。
「ちなみに虚偽の報告は私の能力でばれるから気を付けてね。
虚偽の報告は即刻死刑だから。」
ぞっとして身震いするティアに先ほどより声を大きくして笑う。
「そんなに怖がらなくても良いのに。つまり嘘をつかなければいいだけなんだから。」
そう言ってティアの右手を手に取り、水晶の上にセーラは乗せた。
「目を瞑って、深呼吸して。」
その通りにすると、乗せた右手が一瞬熱くなり、
そして頭の中で自分の国の言葉で文字が浮かんだ。
【完全復活】と。
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