【第1章】第1話 宇宙へ
―――2083年、刑罰法規が改訂。
犯罪者を宇宙へと投げ出し死刑とさせる法律が世界に確立される。
翌年には初となる死刑が執行。
2095年には軽犯罪も宇宙へと投げ出す様になった。
『宇宙は罪人の墓場』
そう全人類に認識されるのも遠くなかった。
―――2156年、冬。
(……何でこんなことに……。)
罪人たちを乗せた宇宙船の中で一人の少女の表情が曇る。
宇宙船の中は騒々しく、彼女の小さなつぶやきなどすぐにかき消される。
(私は罪を犯してないのに……。)
数か月前、買い物に出かけた彼女、【ティア】は街の路地裏で殺人を目撃する。
ティアはすぐに通報したものの、何故か警察に犯人だと決めつけられて拘束。
そして本日、刑が執行されたのだ。
〈私はやってないです!信じてください!〉
何度そういっても聞かない警察に不信感を抱いた。
でも抱いてももう遅い。
(私はもう死ぬのだから……。)
諦めて目を伏せたとき、艦内アナウンスが流れた。
≪執行場所に到着。各刑務官は罪人放流の準備をせよ。繰り返す―――≫
罪人たちがざわめきだす。
死にたくない、ふざけんじゃねぇ、嫌だ、
など口々に発する言葉は、次の瞬間 無になった。
ガチャ、と音がして、犯罪者を縛っていた枷が外されると、底が開かれる。
まるで落とし穴のように開いたその金属の床は、罪人たちを飲み込んでいった。
ティアも同じくして暗い世界に放り出されていく。
突然訪れた死を受け入れられないまま―――
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