第34話:エイジ・オブ・ミリエ 前編
「久しぶりじゃん、ハイビスカス少女隊♪」
放課後。
ハイビスカス少女隊の3人は買い食いしようと街を歩いていた時、不意に声をかけられた。
「お前は――プロフェット」
ハイビスカスアーマーを纏っていないのにこの3人がハイビスカス少女隊だと知る人物は数少ない。
ヴィラネス相手となると尚更。
しかし相手の心を読むヴィラネス、プロフェットは別だ。
「ああいいって喋らなくて。そうそう、リベンジに来たんだ。この前は負けちゃったからね」
目元はいつものマスクで隠しているため分からないが、口元は朗らかな笑みを浮かべている。
「そこのたてはちゃんだっけ? アーマーを着てよ。コッチは不意打ちで倒して満足できるようなたちじゃなくてね」
「ご指名だね」
「わーにまかちょーけー!」
たてはがハイビスカスアーマーを纏おうとしたその瞬間、プロフェットが一気に駆け出した。
「あっ、卑怯だぞ」
「構えは取らせてあげたでしょう」
なんて言いながらプロフェットが拳を固めた瞬間――プロフェットの頭部に鉄の拳がめり込んだ。
「ココロをヨむヴィラネスですか。ですが、キカイであるワタシのシコウはヨめないようですね」
「ミリエちゃん!」
「助かったぜ!」
「だからよー!」
「いえ、これがワタシのセイゾウリユウですから」
「ミリエちゃんがたくさん増えるの!?」
「セイカクにはワタシのドウガタキです」
「量産型ミリエ、いや、ジョカスタか!」
「どーゆうことだばー?」
「ミリエは対スーパーヴィラネス用のガイノイドなのは知ってるだろ?」
「だあるば?」
「だあるわけ。ミリエはジョカスタ型1番機っていうように2番機以降も造る予定があったってことさ」
「とりあえず、ミリエちゃんみたいな強力な仲間がたくさんになるってことだよね! 助かるねぇ」
それから正式な発表を経てジョカスタ型2番機以降のサポート用ガイノイドは実戦に投入される。
小さなことから大きなことまで、各地のスーパーヒロイン達の手となり足となり働いた。
通称ブレイクアウトと呼ばれた事件により脱獄した多数のスーパーヴィラネスたちも瞬く間に捕まっていきジョカスタの有用性を世間へと広く知らしめた。
それがとあるスーパーヴィラネスの策略だと知らずに。
そして、その時は訪れた。
「セイギョフノウ……これは……ナゼ」
ミリエの表情は変わらない。
その筈だが明確に焦りの様相を呈していた。
「ミリエちゃん、なんとかできないの!?」
「フカノウです……テイシプログラムもききません」
せせりはバーベナストレートを閃かせジョカスタ型を1体切り伏せる。
「まさかミリエ以外のジョカスタ型が全員敵になるなんてな!!」
しじみのスプリームトリスメギストスを撃ち放ち、集まってくるジョカスタ型のフォーメーションを乱す。
「倒す以外に方法はないばー?」
「イマのところは……」
たてはは両腕で殴り飛ばし、ミリエもビームで次々とジョカスタ型を破壊していった。
とはいえ、数が多すぎる。
他の場所、他の市町村でも各地に所属するスーパーヒロイン達が応戦しているがそれでも足りないくらいだった。
「とゆーかなんで急に暴走を!?」
「わかりません……けれど、ココロあたりはあります」
「心当たり?」
「ミナさんはブレインディザスターをおぼえていますか?」
「長い名前は覚えられんわけさ」
「アタマがデカいヴィラネスがいましたよね」
「ああ! 思い出したさー!」
「ボクのことを覚えていてくれてうれしいよ」
噂をすればなんとやら。
歓喜に満ちた声が響き渡った。
無数のジョカスタ型を引き連れブレインディザスターが姿を見せる。
「デましたね」
「さすがだねミリエ。やっぱりオリジナルはボクの作ったコピーとは出来が違うや」
「アナタがツクった……そういうコトですか」
「どういうことなの?」
「イマになってキュウにジョカスタのリョウサンタイセイがトトノったのにギモンがありました。アナタがキョウリョクしていたんですね」
ブレインディザスターはネットワークへのハッキングを自身の特殊能力として行うことができるスーパーヴィラネスだ。
その力を利用し、自らの能力や悪事の多くを隠してきた手腕を思えばジョカスタ型量産へ自身の技術を混入させることなど容易いことだろう。
「ソレにカノジョはワタシのカイハツのテツダいをしていました」
「あぁ、懐かしいなぁ。ボクがはじめて行った悪事――それがキミの設計図を盗むことだったからねぇ」
「ソレをモトにしてツクったのですね。このリョウサンガタを」
「あとはキミだけだ。ボクの支配が及ばないマザナーの最高傑作……この武力でキミを手に入れて見せる」
「そうはさせないよ! ミリエちゃんは、わたしたちが守る!!」
「そうだぜ。ミリエは大事な仲間だからな。行くぜ」
「たっぴらかす!!」
「無駄だよ。何故ジョカスタが量産されてからすぐに事を起こさなかったのか……分からないかなぁ?」
「なんか、さっきのやつより強くなってる!?」
「チッ、攻撃が当たらねぇ」
「だからよ! 心を読んでるみたいさ!」
戦えば戦うほどジョカスタ達が強くなっていくような感覚。
それは実際その通り。
ジョカスタは今までスーパーヒロインを手助けした様々な戦いや、今この時の実戦の内容をインプットし共有。
それぞれのスーパーヒロイン達に対する戦い方を学習していた。
「ハイプレッシャー!!」
不意に霊子の一撃がジョカスタを一体焼き尽くす。
「あげは先生!」
空を駆け、両腕の大型ブラスターから霊子砲を放つあげはのゴールデンアイアンビート/バスター。
「手助けするぞ、3人とも!」
そしてエネルギーのラウンドシールドが建物や地面を跳ね回りジョカスタを切り裂いた。
それはふたおのシルバースタッグノーマッドの攻撃だ。
「全く厄介なことになったわね!」
「そうカリカリしないでくださいよ。みんな、一体一体着実に倒していこう」
「一体一体かぁ。ははは、どれだけかかるだろうね。この数のジョカスタを全滅させるには」
笑うブレインディザスターの背後に次々と現れるジョカスタ、ジョカスタ、そしてジョカスタ……。
「操ってるのはブレインディザスターなんだよね。なら、あいつを倒せば……問題ないよね!」
「あはは、残念。あくまでジョカスタ達は自らの意思で行動している。それに自己修復機能に自己複製機能も持っている。わかるかい? 勝手に増えて勝手に直す無敵のガイノイド兵団さ」
「つまりテメーを倒しても意味がねーって?」
「その通り。そうだなぁ、ジョカスタ達を説得でもしてみたら? ボクはそう提案するよ」
「あい、それはいい考えであるわけさ!」
「ムチャをイわないでください。ワタシからのアクセスもカンゼンキョヒしているあのコタチをセットクするのはシナンのワザです」
「くっ、何か手はないの!?」
最初の頃は好調でも、手数を重ねるほどジョカスタに対策を打たれてしまう。
新たに到着したあげはもふたおも、すぐに苦しい戦いとなった。
「ワタシのセキュリティをカイホウし、ジョカスタのメインサーバーとイッタイカさせればあるいは……」
「それってミリエちゃんとジョカスタ達が1つになるってことだよな」
「ハイ」
それは諸刃の剣だった。
上手くいけば全てのジョカスタ型の制御をミリエが奪うことができる。
しかし、失敗すれば……。
「シッパイすればワタシジシンもジョカスタにトりコまれ、ボウソウするでしょう」
「けど、それしか手がない……んだよね」
「ブレインディザスターを倒しても無駄。敵は勝手に増えていく。ならば"説得"するしかない、か」
「成功できるばー?」
「もしシッパイしたトキはワタシをハカイしてください」
「ミリエちゃん!?」
「ワタシがジョカスタをセットクしセイジョウにもどす。ソれがプランA。フカノウだったバアイ、ワタシジシンをジョカスタのマザーコンピュータにします。ソれがプランB」
つまりプランBとはミリエを破壊することで全てのジョカスタ型が機能を停止するようにプログラムを書き換え、全てのジョカスタの司令塔となる作戦。
「ソれもフカノウだったバアイ……オソらくジンルイは……」
ミリエの言葉は同時にこう言っていた。
どう足掻いても、ミリエを犠牲にする覚悟がないと勝ち目がないと。
「わかった。わたし、ミリエちゃんを信じる」
とは言えそれは苦しい決断。
「ミナさんはブレインディザスターを。カノジョにボウガイされてはショウキがウスくなりますから」
「任せとけ。やるぜ!」
「うりぃ!!」
「雑魚は任せなさい。攻撃が当たらなくても――」
「近寄らせなければいいってことだな!」
あげはとふたおが出力を上げ、周囲のジョカスタを妨害している間にせせり、しじみ、たてはの3人はブレインディザスターに攻撃をする。
「ヤツの気をコッチに向かせるぜ!」
「畳みかけるさー!!」
「行くよ、太陽のフレアシャーベット!!」
「では――コネクト、カイシします」
ミリエは自らが持つセキュリティウォールを開放し、ジョカスタ達との一体化を始める。
それは無数のジョカスタ達の制御を奪い取る為。
そしてその間、ハイビスカス少女隊はブレインディザスターに絶え間ない攻撃を行うことでブレインディザスターによるミリエへのハッキングを妨害した。
「バカだなぁ……ボクのメモリを甘くみてもらわないでほしいよ」
だが――ハイビスカス少女隊の作戦はそう簡単にはいかない。
「ッ!!」
ミリエの表情が歪む。
「くッ……コレ、は……ッ」
「マルチタスクってヤツだね。ボクにとって無数の作業を並行するなんて容易な事。ミリエ、キミへのハッキングだってね」
「ミリエちゃん!!」
「ま、マダ、デス……マダ、マけては――いま、セン」
ミリエの瞳に光が灯る。
「プランB……カイシ、しますッ!! ミナさん、ワタシを――ハカイしてください!!」
ガイノイドにも気力というものがあるのかわからないが、まさに気力で踏ん張っているとでもいうようなミリエの表情。
「ミリエ、諦めるんだ。抵抗しても――無駄さぁ!!」
と言いつつもブレインディザスターの口元が歪む。
ミリエの抵抗はかなりのものだということがわかる。
「ミナさん、ハヤく!!!!!」
「ミリエちゃん――わたし、わたしは!!」
せせりはバーベナストレートを構える。
だが、手が震えて上手く動かせない。
「ツィーチュカ、援護する! だからミリエを――」
「わーの拳で、加速するわけさー!!」
「ミリエちゃん――ごめん! ロケット」
歯を食いしばり、せせりはたてはの拳に乗って打ち出された。
「ハート!!」
悲愴の一撃は――だが、ジョカスタに阻まれミリエには届かなかった。
「テイコウはムダです。ハイビスカスショウジョタイ――ハイジョします」
ミリエはブレインディザスターのハッキングの影響もあり、ジョカスタの一部となった。
「はは、あははははは。やった、やっと手に入れた! 至高のガイノイド、ジョカスタ・ミリエを!!」
ブレインディザスターの笑い声がこだまする中、ジョカスタの力は更に段違いに強くなったような気がする。
実際、ミリエのCPUや今まで学習したことはジョカスタ達の比ではない。
それらがジョカスタ達に共有されたことで、飛躍的に能力がアップしていたのだ。
ハイビスカス少女隊の攻撃は全てが無駄。
どんな攻撃もどんな技も通用せず、後は敗北を待つだけ。
「そんな、ミリエちゃん!!!」
悲痛なせせりの叫びにも容赦なく放たれるミリエのブラスター。
だがその輝きはせせりの目の前ではじけ飛んだ。
「ハイビスカス少女隊っ!!」
ミリエのブラスター攻撃を防いだのはよく見知った宿敵。
「イタズラ3人娘!?」
ネジェストの持つ盾がせせりを守ったのだ。
「ここは私達に任せてください。そしてあなた達はビックワンへ」
「ビックワンに!?」
「そこにあるわ。逆転のカギが」




